「帯状疱疹とはどんな病気?」
「帯状疱疹の症状や原因は?」
このように水ぼうそうのような皮膚疾患に悩んでいる方もおられるのではないでしょうか。
帯状疱疹(たいじょうほうしん)は水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルスの再活性化により発症します。
本記事では、帯状疱疹の特徴をはじめ予防方法や症状についても解説します。
また、記事の後半では帯状疱疹の原因も解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。
帯状疱疹とは?
帯状疱疹は、加齢や疲労などによって体に残っている水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性化し発症する「感染症」です。
体の左右どちらかの神経に沿ったかゆみや痛み、水ぶくれなどが主な症状として挙げられます。
基本的には抗ウイルス薬を投与すれば1~2週間程度で治癒する病気ですが、下記の条件では神経が破壊されたり後遺症が長く残ったりする場合が多いです。
- 高齢
- 糖尿病を患っている
- 顔面での発症
帯状疱疹の治療において重要なことは、可能な限り早期から治療を開始することです。
神経に沿って痛みや腫れなどの症状がある場合、まずは医師の診療を受けましょう。
帯状疱疹はワクチン・予防接種で予防できる?
帯状疱疹はワクチンで予防できる感染症です。
帯状疱疹のワクチンは50歳以上が対象で、摂取すると予防だけでなく症状の緩和が期待できます。
水ぼうそうにかかったことのある方は、既にウイルスへの免疫を獲得しています。
しかし、免疫は年齢と共に弱まってしまうため、改めて免疫を強化することが重要です。
帯状疱疹は、3人に1人が80歳までに発症すると言われています。
症状の予防と早期の治療が大切な感染症なので、ワクチンの接種をご検討ください。
帯状疱疹は人にうつる?
帯状疱疹は人に感染する可能性があります。
しかし、多くの人が免疫を持っているため感染する可能性は極めて低いです。
また、帯状疱疹の症状が出ている部位をガーゼや衣服で覆っている場合、免疫を持っていない方と接しても感染することはほとんどありません。
ただし、帯状疱疹が進行して全身に水ぶくれが広がってしまうと空気感染する可能性があるため注意が必要です。
帯状疱疹の症状は?初期症状も合わせて紹介
帯状疱疹を発症すると、主に以下のような症状が現れます。
- 小さな水ぶくれの発生
- 熱
- リンパ腺の腫れ
- かゆみ
- 痛み
特に、体の左右どちらかの神経に沿って生じるかゆみや痛み、違和感などが初期症状として挙げられます。
また、水ぶくれは部位によって様々な弊害を誘発します。
たとえば、首や胸に発生すると腕の力が弱くなったり、腰の場合は足の力が弱くなったりすることも少なくありません。
症状の中で生活に大きな支障を与えるのは痛みです。
発病から2週間ほどは痛みが強く、夜も眠れないほどの痛みが出る場合があります。
帯状疱疹の原因を紹介|ストレスは関係ある?
帯状疱疹の原因は、水痘・帯疱疹ウイルスの再活性化です。
幼少期に水痘・帯状疱疹ウイルスに感染すると水ぼうそうを発症します。
水ぼうそうが治った後も不活性化したウイルスは神経の根本に残り続けるものの、普段は免疫によって活動が抑えられていることがほとんどです。
しかし、加齢やストレスなどによって免疫力が低下するとウイルスは再び活性化し、帯状疱疹を発症します。
帯状疱疹の治療方法は?効く薬も紹介
帯状疱疹の治療方法は、抗ウイルス薬の内服もしくは点滴の投与です。
具体的には、下記のような薬が処方されます。
薬の種類 | 薬の名称 |
---|---|
抗ウイルス薬 | ・バルトレックス ・ファムビル |
点滴 | ・ゾビラックス |
また、帯状疱疹後神経痛には以下のような薬を内服して痛みのコントロールを図ります。
- リリカカプセル
- トラムセット
- カロナールなどの痛み止め
痛みが強い場合には、和らげるために神経の働きを抑える施術をする場合もあります。
帯状疱疹に関するよくある質問
帯状疱疹に関するよくある質問についてまとめました。
帯状疱疹は何科に行けばいいですか?
帯状疱疹は皮膚科で治療してもらえます。
帯状疱疹は早期に治療を開始することで合併症や後遺症である「帯状疱疹後神経痛」を防いだり症状を軽くしたりできます。
帯状疱疹の初期症状は主に以下のようなものが挙げられます。
- 体の左右の神経に沿ったかゆみ・痛み
- 皮膚の違和感
少しでも帯状疱疹の発症を疑った時は、すぐに医師の診療を受けましょう。
帯状疱疹が顔にできることはありますか?
帯状疱疹は顔にできる可能性があります。
もし帯状疱疹が顔にできると、他の部位よりも合併症を起こしやすいため注意が必要です。
以下は、帯状疱疹ができた部位ごとに起こる可能性のある合併症です。
顔の部位 | 起こる可能性のある合併症 |
---|---|
耳の周辺 | ・顔面神経麻痺 ・難聴 ・めまいなど |
目の周辺 | ・結膜炎 ・角膜炎など |
特に目の周りに帯状疱疹ができると「眼部帯状疱疹」と呼ばれ、初期の段階から合併症を引き起こす可能性があります。
鼻背から鼻尖にかけて水ぶくれが認められる場合は、高頻度に眼合併症が生じるとされているため、注意が必要です。
帯状疱疹が自然治癒することはありますか?
軽症な帯状疱疹に限り、2~3週間で自然治癒する場合があります。
ただし、高齢の方や免疫力が落ちている方が帯状疱疹を発症すると重症化することが多く、自然治癒が期待できません。
特に、重症化すると治ったと思っても痛みがずっと続いたり皮膚の欠損などの後遺症が残ったりする場合があるため、可能な限り早期の治療が望ましいです。
皮膚にかゆみや違和感を覚えたら、自然治癒を待たずに医師の診療を受けましょう。
帯状疱疹に前兆はありますか?
帯状疱疹の初期症状は、体の左右どちらかの神経に沿ったかゆみや痛み、違和感などが挙げられます。
皮膚の違和感は水ぶくれの1週間ほど前に現れることが多いものの、水ぶくれと同時または少し遅れて現れるケースもあります。
帯状疱疹は予防と早期の治療が大切です。
後遺症を残さないためにも、皮膚に違和感を覚えたら医師の診療を受けましょう。
東京で帯状疱疹の治療ならアイシークリニックへご相談ください
帯状疱疹は、幼いころの水ぼうそうが原因で発症します。
水ぼうそうにかかったことのある人は誰でも発症する可能性のある感染症で、高齢になるほど重症化しやすいです。
重症化すると強い痛みや後遺症が残る可能性があるため、少しでも皮膚に違和感を覚えたら医師の診療を受けましょう。
アイシークリニックは、老若男女どなたでも相談しやすいクリニックを目指しています。
どんな症状であっても、患者様と相談しながら安心の治療方法を提案させていただきますので、皮膚の痛みやかゆみに少しでもお悩みの方は、アイシークリニックにご相談くださいませ。
帯状疱疹の段階別症状と経過について
前駆期(発症前1-4日)
帯状疱疹の最初の段階では、皮膚症状が現れる前に以下のような全身症状が見られることがあります:
- 軽度の発熱や倦怠感:風邪の初期症状に似た体調不良を感じる
- 患部周辺の違和感:チクチクとした感覚や軽い痛み
- 知覚過敏:衣服が触れただけでも痛みを感じる
- 頭痛や筋肉痛:全身のだるさを伴う場合がある
この段階では帯状疱疹と診断するのが困難なため、見逃されやすい時期でもあります。
急性期(発症から1-2週間)
急性期は帯状疱疹の典型的な症状が現れる時期です:
皮膚症状の進行
- 紅斑期:患部が赤く腫れ始める
- 水疱期:小さな水ぶくれが多数出現する
- 膿疱期:水疱が濁り、膿のような状態になる
- 痂皮期:水疱が破れ、かさぶたが形成される
痛みの特徴
- 灼熱痛:焼けるような激しい痛み
- 電撃痛:電気が走るような鋭い痛み
- 持続痛:常に続く重い痛み
- アロディニア:軽い刺激でも激痛を感じる
回復期(発症から2-4週間)
適切な治療が行われれば、徐々に症状が改善していきます:
- かさぶたが自然に剥がれ落ちる
- 新しい皮膚が再生される
- 痛みが徐々に軽減される
- 色素沈着が残る場合がある
帯状疱疹後神経痛(PHN)の詳細解説
帯状疱疹後神経痛とは
帯状疱疹後神経痛(Post-Herpetic Neuralgia:PHN)は、帯状疱疹の皮膚症状が治癒した後も3ヶ月以上続く痛みを指します。これは帯状疱疹の最も重要な合併症の一つです。
PHNの発症率
- 全体:帯状疱疹患者の約10-20%
- 50歳未満:約5%
- 60歳以上:約20%
- 70歳以上:約30%以上
年齢が高いほど発症リスクが高まることが明らかになっています。
PHNの症状
痛みの種類
- 持続的な焼けつくような痛み:最も一般的な症状
- 電撃的な痛み:突然襲う鋭い痛み
- アロディニア:通常では痛くない軽い刺激でも激痛を感じる
- 知覚異常:しびれや感覚の鈍麻
PHNの治療法
薬物療法
- 神経障害性疼痛治療薬
- プレガバリン(リリカ)
- ガバペンチン
- ミロガバリン(タリージェ)
- 三環系抗うつ薬
- アミトリプチリン
- ノルトリプチリン
- オピオイド系鎮痛薬(重症例)
- トラマドール
- オキシコドン
非薬物療法
- 神経ブロック注射:特定の神経に直接薬剤を注入
- 理学療法:マッサージや温熱療法
- 心理療法:慢性疼痛への対処法を学ぶ
- 鍼灸治療:補完療法として
年代別リスクと対策
50代の方への対策
特徴
- 免疫力の低下が始まる年代
- 仕事や家庭のストレスが多い時期
- 初回ワクチン接種の推奨年齢
対策
- 定期的な健康診断:基礎疾患の早期発見
- ストレス管理:適度な運動や趣味でリフレッシュ
- ワクチン接種の検討:50歳になったらかかりつけ医に相談
- バランスの取れた食事:免疫力維持のための栄養摂取
60代の方への対策
特徴
- 発症リスクが明らかに上昇
- 重症化しやすい年代
- 基礎疾患を持つ方が増加
対策
- 積極的なワクチン接種:2回接種タイプのワクチンを検討
- 基礎疾患の管理:糖尿病や高血圧の適切なコントロール
- 免疫力低下の要因を避ける:過度な疲労や急激な環境変化を避ける
- 早期受診の心がけ:少しの症状でも躊躇せず医療機関を受診
70代以上の方への対策
特徴
- 最も高いリスクグループ
- 重症化率が高い
- PHNのリスクも大幅に上昇
対策
- 必須のワクチン接種:医師と相談の上、必ず接種を検討
- 日常的な健康管理:規則正しい生活リズムの維持
- 家族の協力:症状の早期発見のための見守り体制
- 迅速な医療機関受診:症状が現れたら即座に受診
日常生活での注意点とケア方法
急性期の過ごし方
患部のケア
- 清潔な環境を保つ:患部を清潔なガーゼで覆う
- 水疱を潰さない:感染リスクを避けるため触らない
- 入浴時の注意:患部を強くこすらず、やさしく洗う
- 衣服の選択:患部に摩擦を与えない柔らかい素材を選ぶ
痛みの管理
- 冷却療法:氷嚢や冷却パッドで患部を冷やす(15-20分間)
- 安静を心がける:無理をせず十分な休息を取る
- 痛み止めの服用:医師の指示に従って適切に服用
- 睡眠環境の整備:痛みで眠れない場合は医師に相談
日常生活での制限事項
避けるべき活動
- 激しい運動:体力を消耗し免疫力を低下させる
- 長時間の入浴:患部の悪化を招く可能性
- アルコールの過度な摂取:免疫力低下の原因となる
- 喫煙:血行不良により治癒を遅らせる
仕事への影響
- 休暇の取得:急性期は可能な限り休暇を取る
- 在宅勤務の検討:通勤による疲労を避ける
- 業務量の調整:ストレスを最小限に抑える
- 職場への相談:感染リスクについて正しい情報を共有
食事と栄養による免疫力サポート
免疫力を高める栄養素
ビタミン類
- ビタミンC:イチゴ、キウイ、ブロッコリー、赤ピーマンなど
- ビタミンD:サケ、マグロ、卵黄、きのこ類など
- ビタミンE:ナッツ類、植物油、アボカドなど
- ビタミンA:にんじん、かぼちゃ、ほうれん草、レバーなど
ミネラル類
- 亜鉛:牡蠣、牛肉、パンプキンシード、ナッツ類
- セレン:ブラジルナッツ、魚介類、鶏肉
- 鉄分:赤身肉、豆類、緑黄色野菜
その他重要な栄養素
- アルギニン:大豆製品、魚類、肉類(ただし帯状疱疹急性期は控える)
- 乳酸菌:ヨーグルト、発酵食品で腸内環境を整える
- オメガ3脂肪酸:青魚、亜麻仁油で炎症を抑制
避けるべき食品
急性期に控える食品
- アルギニン豊富な食品:ナッツ類、チョコレート(ウイルス増殖を促進する可能性)
- 刺激の強い食品:辛いもの、極度に熱いもの
- アルコール:免疫力低下と薬との相互作用
- カフェイン過多:睡眠の質を低下させる
推奨する食事パターン
1日3食規則正しく
- 朝食:果物とヨーグルト、全粒粉パン
- 昼食:魚類中心の定食、野菜サラダ
- 夕食:鶏肉や豆腐などの良質なタンパク質、温野菜
水分摂取
- 1日1.5-2リットルの水分補給
- カフェインレスのハーブティーも効果的
- 電解質バランスを考慮した飲み物
他の皮膚疾患との鑑別診断
単純疱疹(ヘルペス)との違い
帯状疱疹の特徴
- 体の片側だけに発症
- 神経に沿って帯状に分布
- 水痘・帯状疱疹ウイルスが原因
- 一度発症すると再発は稀
単純疱疹の特徴
- 口唇や性器周辺に多発
- 比較的小さな範囲に集中
- 単純ヘルペスウイルスが原因
- 再発を繰り返すことが多い
接触皮膚炎(かぶれ)との違い
帯状疱疹
- 原因物質との接触なしに発症
- 特定の神経支配領域に限局
- 水疱形成が特徴的
- 強い痛みを伴う
接触皮膚炎
- 特定の原因物質との接触後に発症
- 接触部位に一致した分布
- 主にかゆみが症状の中心
- 原因除去で改善
虫刺症との区別
帯状疱疹
- 季節や環境に関係なく発症
- 明確な帯状分布
- 段階的な症状進行
- 1-2週間の経過で変化
虫刺症
- 季節性がある(夏季に多い)
- 露出部位に限定
- 即座にかゆみが出現
- 比較的短期間で改善
重症化のサインと緊急対応
即座に医療機関を受診すべき症状
眼部周辺の症状
- 目の周りに水疱が出現
- 目の痛みや視力の変化
- 鼻の先端に水疱(Hutchinson兆候)
- 瞼の腫れや充血
神経症状
- 顔面神経麻痺(顔の片側が動かない)
- 聴力低下やめまい
- 手足の脱力やしびれ
- 排尿・排便障害
全身症状
- 高熱(38.5度以上)
- 意識レベルの低下
- 全身への水疱の拡散
- 呼吸困難
合併症の種類と対策
眼科的合併症
- 角膜炎:視力障害のリスク
- 緑内障:眼圧上昇による視神経障害
- 網膜炎:重篤な視力障害の可能性
耳鼻科的合併症
- ラムゼイ・ハント症候群:顔面神経麻痺と聴力障害
- 前庭神経炎:激しいめまいと平衡感覚の障害
神経学的合併症
- 脳炎:稀だが生命に関わる重篤な合併症
- 脊髄炎:運動・感覚障害の原因となる
- 末梢神経麻痺:特定の筋肉群の機能障害
職場復帰と社会生活への影響
復帰時期の目安
一般的な事務職
- 新しい水疱の出現が停止してから
- 発熱などの全身症状が改善してから
- 通常、発症から1-2週間後
医療従事者や教育関係者
- 全ての水疱がかさぶたになってから
- 医師の許可が出てから
- より慎重な判断が必要
職場での配慮事項
感染予防対策
- 患部を適切に覆う
- 手洗いの徹底
- 免疫不全の同僚との接触を避ける
- 妊婦との接触には特に注意
業務調整
- 重いものを持つ作業の制限
- 長時間の集中を要する作業の調整
- 痛み止めの服用タイミングの考慮
- 必要に応じて通院時間の確保
家族・周囲の方への配慮と対応
家族が気をつけるべき点
感染予防
- 水痘の既往がない方:特に注意が必要
- 妊婦:胎児への影響を考慮し接触を避ける
- 新生児・乳幼児:重症化リスクが高いため注意
- 免疫不全状態の方:がん治療中の方など特に注意
日常生活でのサポート
- 患者の洗濯物は分けて洗う
- タオルや食器の共用を避ける
- 患部に触れた場合はすぐに手洗い
- 患者の心理的サポートも重要
患者さん自身ができること
家族への配慮
- 症状の説明と理解を求める
- 感染リスクについて正しい情報を共有
- 必要以上に家族を不安にさせない
- 治療計画を共有し協力を求める
帯状疱疹の再発について
再発の可能性
帯状疱疹は基本的に一度発症すると再発は稀とされていますが、以下の場合は再発のリスクが高まります:
再発リスクが高い条件
- 免疫不全状態:HIV感染症、がん治療中など
- 高度な高齢者:85歳以上
- 初回発症時に軽症だった場合:十分な免疫が獲得されない
- 重篤な基礎疾患:糖尿病、腎疾患、肝疾患など
再発の特徴
- 初回と同じ部位に発症することが多い
- 症状が軽い場合が多い
- 診断が困難な場合がある
- 治療反応は良好なことが多い
季節・環境要因と帯状疱疹
季節性の影響
春季(3-5月)
- 環境の変化によるストレス
- 花粉症による免疫システムの負担
- 新年度の疲労蓄積
夏季(6-8月)
- 紫外線による免疫力低下
- 冷房による体調不良
- 夏バテによる栄養不足
秋季(9-11月)
- 気温の急激な変化
- 乾燥による皮膚バリア機能低下
- 夏の疲れの蓄積
冬季(12-2月)
- インフルエンザなど他の感染症による免疫力低下
- 日照時間短縮によるビタミンD不足
- 年末年始の不規則な生活
環境要因への対策
住環境の整備
- 適切な湿度管理(50-60%)
- 室温の調整(夏季26-28度、冬季20-22度)
- 十分な換気の確保
- 清潔な環境の維持
ワクチンの詳細情報
帯状疱疹ワクチンの種類
生ワクチン(ビケン)
- 接種回数:1回
- 予防効果:約51%
- 効果持続期間:約5年
- 副反応:注射部位の痛み、発赤
不活化ワクチン(シングリックス)
- 接種回数:2回(2ヶ月間隔)
- 予防効果:約97%(50歳以上)
- 効果持続期間:9年以上
- 副反応:発熱、筋肉痛、注射部位の痛み
ワクチン接種の注意点
接種前の確認事項
- 現在服用中の薬について
- アレルギーの有無
- 過去の予防接種歴
- 妊娠の可能性(女性の場合)
接種後の注意
- 接種部位を強くこすらない
- 激しい運動は24時間避ける
- 副反応の症状を記録
- 異常な症状があれば医師に連絡
帯状疱疹と他の疾患との関連
糖尿病との関係
リスク要因
- 血糖コントロール不良による免疫力低下
- 神経障害による症状の見逃し
- 創傷治癒の遅延
- 感染症の重症化リスク
対策
- 血糖値の厳格な管理
- 定期的な皮膚の観察
- フットケアの重要性
- 医師との密な連携
がんとの関係
がん患者のリスク
- 化学療法による免疫抑制
- 放射線治療の影響
- ステロイド使用による免疫低下
- 栄養状態の悪化
対策
- 主治医との相談
- 予防的治療の検討
- 早期発見のための注意深い観察
- 支持療法の充実
心理的サポートとメンタルケア
帯状疱疹が与える心理的影響
急性期の心理状態
- 不安:痛みの持続期間への心配
- 焦燥感:日常生活への支障
- 睡眠障害:痛みによる睡眠不足
- 社会的孤立感:外出制限による気分の落ち込み
心理的サポートの方法
患者さん自身ができること
- 正しい情報の収集:病気について理解を深める
- 医師との積極的なコミュニケーション:疑問や不安を相談
- リラクゼーション:深呼吸や瞑想
- 趣味の継続:可能な範囲で楽しみを見つける
家族のサポート
- 共感的な態度:患者の辛さを理解する
- 情報収集の手伝い:治療法や予防法について一緒に学ぶ
- 日常生活のサポート:家事や買い物の手伝い
- 医療機関への同行:診察時の付き添い
特殊なケースと対応
免疫不全患者の帯状疱疹
特徴
- 症状が重篤化しやすい
- 非典型的な分布を示すことがある
- 治癒期間が長期化
- 播種性帯状疱疹のリスク
対応
- 早期の抗ウイルス薬投与
- 入院治療の検討
- 他科との連携治療
- 長期間のフォローアップ
妊娠中の帯状疱疹
妊婦への影響
- 胎児への直接的な影響は少ない
- 分娩時の感染リスク
- 母体の重症化リスク
- 薬物治療の制限
対応策
- 産科医との連携
- 安全な抗ウイルス薬の選択
- 分娩時期の調整
- 新生児の感染予防
小児の帯状疱疹
特徴
- 稀だが発症する可能性
- 免疫不全が原因の場合が多い
- 症状が軽いことが多い
- 診断が困難な場合がある
最新の治療法と研究動向
新しい治療薬
アメナメビル(アメナリーフ)
- 2017年に承認された新しい抗ウイルス薬
- 1日1回の服用で済む
- 従来薬と比較して高い効果
- 副作用が少ない傾向
外用薬の進歩
- アシクロビル軟膏の改良
- 新しい外用製剤の開発
- 痛み緩和の局所治療法
- 副作用軽減の取り組み
予防医学の観点から
個人レベルでの予防
- ストレス管理:定期的な運動、十分な睡眠
- 栄養管理:バランスの取れた食事
- 健康診断:基礎疾患の早期発見・治療
- ワクチン接種:予防の第一選択
社会レベルでの取り組み
- 高齢者への啓発活動
- ワクチン接種率の向上
- 医療従事者への教育
- 早期診断システムの構築
よくある患者様の体験と対処法
ケーススタディ1:60代男性、胸部帯状疱疹
症状の経過 初期は左胸部のピリピリとした痛みから始まり、3日後に水疱が出現。夜間の痛みで睡眠が困難となり来院。
治療と結果 アメナメビルとプレガバリンを処方。1週間で新しい水疱の出現は停止し、2週間で痛みは大幅に軽減。PHNの発症なく完治。
学んだポイント 早期受診により重症化を防げた事例。初期の神経痛を見逃さないことが重要。
ケーススタディ2:70代女性、顔面帯状疱疹
症状の経過 右額部の違和感から始まり、翌日に水疱出現。眼科的合併症を懸念し緊急受診。
治療と結果 即座に抗ウイルス薬の点滴治療開始。眼科との連携により角膜炎は軽症で済む。約3週間で治癒したが、軽度のPHNが残存。
学んだポイント 顔面帯状疱疹は緊急性が高い。他科との連携が重要な症例。
最新の研究知見
免疫学的メカニズムの解明
最新の研究により、帯状疱疹発症には以下の免疫学的要因が関与していることが明らかになっています:
T細胞免疫の低下
- 水痘・帯状疱疹ウイルス特異的T細胞の減少
- 加齢による胸腺機能の低下
- ストレスホルモンによる免疫抑制
サイトカインネットワークの異常
- インターフェロンγの産生低下
- インターロイキン-2の機能異常
- TNF-αの過剰産生
将来の治療展望
新しいワクチンの開発
- より長期間効果が持続するワクチン
- 副反応を軽減した新製剤
- 治療用ワクチンの開発
治療薬の進歩
- より効果的な抗ウイルス薬
- PHN予防に特化した薬剤
- 副作用の少ない疼痛管理薬
予防のための生活習慣
免疫力維持のポイント
運動習慣
- 適度な有酸素運動:週3-4回、30分程度のウォーキング
- 筋力トレーニング:週2回程度の軽い筋トレ
- ストレッチ:毎日10-15分の柔軟体操
- ヨガや太極拳:心身のリラクゼーション効果
睡眠の質向上
- 規則正しい睡眠時間:毎日同じ時間に就寝・起床
- 睡眠環境の整備:静かで暗い環境作り
- 就寝前のルーティン:リラックスできる時間を作る
- 睡眠時間の確保:7-8時間の十分な睡眠
ストレス管理
- 趣味の時間:楽しめることに時間を使う
- 社会的つながり:家族や友人との良好な関係維持
- マインドフルネス:瞑想や深呼吸の実践
- 時間管理:無理のないスケジュール調整
基礎疾患の管理
糖尿病の方
- HbA1c 7.0%未満を目標とした血糖管理
- 定期的な合併症チェック
- 足のケアと皮膚の観察
- 栄養指導の継続
高血圧の方
- 血圧130/80mmHg未満を目標
- 減塩食事の実践
- 定期的な血圧測定
- 薬物療法の継続
まとめ
帯状疱疹は多くの方に影響する可能性がある感染症です。特に50歳以上の方は発症リスクが高まるため、以下の点を心に留めておくことが大切です:
重要なポイント
- 早期受診:皮膚の違和感を感じたらすぐに医療機関を受診
- ワクチン接種:50歳になったら積極的に検討
- 免疫力維持:規則正しい生活とストレス管理
- 正しい知識:症状や治療法について正確な情報を得る
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務