「脂漏性皮膚炎はどんな症状?」
「脂漏性皮膚炎になったらどうすればいい?」このように皮膚疾患に悩んでいる方もおられるのではないでしょうか。
脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)は皮脂が多い部分に起きやすい慢性の炎症です。
本記事では、脂漏性皮膚炎の原因や症状をはじめ脂漏性皮膚炎の治し方を紹介します。
この記事を読めば、脂漏性皮膚炎の症状や予防方法がわかります。
また、記事の後半では脂漏性皮膚炎に効きやすい薬も解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。
脂漏性皮膚炎とはどんな病気?
脂漏性皮膚炎は頭部や顔だけでなく、胸部や股部、わきの下など皮脂の多い部位に発症しやすいです。
脂漏性皮膚炎は、主に以下のような原因によって発症するとされています。
- 皮膚の常在菌である「マラセチア」に対するアレルギー反応
- 皮脂の分泌異常
- ビタミンB群不足
- ストレス
- 皮膚表面のpH※
※pHとは、酸性とアルカリ性を表す尺度です。
脂漏性皮膚炎は皮膚の常在菌である「マラセチア」へのアレルギー反応で起こり、皮脂の多い部分で発症しやすいです。
そのため、ビタミンB群の不足やストレスなどが原因で皮脂が多く分泌されると発症しやすくなります。
脂漏性皮膚炎はどんな症状?

脂漏性皮膚炎を発症すると、主に以下のような症状が現れます。
- 赤み
- かゆみ
- 皮が剥がれてふけのようなものが出る
特に、頭皮に炎症が起こるとふけが多く現れる場合が多いです。
かゆみはある場合とない場合があります。
脂漏性皮膚炎の治し方とは?
脂漏性皮膚炎は、発症する年齢によって以下の2種類に分けられます。
- 乳児期に発症する「乳児脂漏性皮膚炎」
- 成人になってから発症する「成人期脂漏性皮膚炎」
それぞれ治療法が異なるので、以下で詳しく解説します。
脂漏性皮膚炎の治し方(1)乳児脂漏性皮膚炎の場合
乳児の時期に発症する「乳児脂漏性皮膚炎」の場合、ステロイド外用薬や抗真菌薬外用薬(ケトコナゾール外用薬)などを使用します。
ただし、基本的には数ヶ月で自然に治まるため短期間の治療になります。
脂漏性皮膚炎の治し方(2)成人脂漏性皮膚炎の場合
思春期以降に発症する場合は「成人期脂漏性皮膚炎」とされ、ステロイド外用薬と抗真菌薬外用薬(ケトコナゾール外用薬)をあわせて使用します。
治療によって炎症がなくなった後は、予防のために抗真菌薬外用薬(ケトコナゾール外用薬)を継続します。
脂漏性皮膚炎が悪化してしまう5つの要因
脂漏性皮膚炎が悪化してしまう原因は主に以下の5つです。
- ストレス、疲労、寝不足
- 洗浄不足による皮脂の貯留
- ビタミン不足、喫煙(タバコ)
- ホルモンバランスの乱れ
- 便秘
脂漏性皮膚炎は皮脂が多い部分に発生しやすい病気です。
そのため、単純な洗浄不足による皮脂の貯留をはじめ、ストレスや疲労によってホルモンバランスが崩れ皮脂が過剰分泌されることでも悪化しやすくなります。
脂漏性皮膚炎の予防方法とは?

脂漏性皮膚炎を予防する具体的な方法は以下の通りです。
- 体質に合ったシャンプーや石鹼を使う
- ストレスを抱えないような生活習慣にする
それぞれの予防方法について詳しく解説します。
脂漏性皮膚炎の予防方法(1)体質に合ったシャンプーや石鹼を使う
脂漏性皮膚炎を予防する方法として、体質に合ったシャンプーや石鹸を使うことが挙げられます。
脂漏性皮膚炎は、シャンプーや石鹸が体質と合っていないことに起因する皮脂の過剰分泌が原因で発症してしまっているものも少なくありません。
特に頭皮の状態は個人によって様々なため、シャンプーによっては体質に合わない場合があります。
皮脂が多い場合やふけが目立つ場合はシャンプーや石鹸の交換も検討しましょう。
脂漏性皮膚炎の予防方法(2)ストレスを抱えないような生活習慣にする
脂漏性皮膚炎を予防する方法として、ストレスを抱えないような生活習慣にすることも重要です。
脂漏性皮膚炎の原因となり得る皮脂は、ストレスや疲労により過剰分泌される可能性があります。
ストレスや疲労を溜め込まないために、適度な運動と十分な睡眠を取ることで皮脂の過剰分泌を抑えられ、脂漏性皮膚炎の予防につながります。
油分の多い食事も皮脂の過剰分泌につながるため、油分の少ない食習慣を心がけることが大切です。
脂漏性皮膚炎は市販薬で治る?脂漏性皮膚炎の薬とは
脂漏性皮膚炎は市販薬で治ることが多いです。
特に、かゆみや赤みにはローションタイプのステロイド外用剤(塗り薬)が有効とされています。
ただし、自分の症状に合った薬がわからない方や市販薬では治らない方は病院での処方薬が必要です。
脂漏性皮膚炎で使われる一般的な薬は、主に以下のようなものがあります。
薬の特徴 | 特徴 |
---|---|
抗真菌薬(ケトコナゾール外用薬) | ・クリームやローションタイプがある ・脂漏性皮膚炎の原因である「マラセチア」を殺菌するために使用される ・長期間使用しても副作用はほとんどない場合が多い |
ステロイド外用薬 | ・赤みや炎症を抑える目的で使用される ・炎症の度合いや部位によって使用するステロイド外用薬は異なるので病院での処方が推奨されている |
プロトピック(タクロリムス)・コレクチム | ・すぐ再発してしまうという方向けに処方されることがある ・塗り始めの数日程度はほてるような感覚が出ることがある |
漢方薬 | ・難治性の脂漏性皮膚炎に対しては様々な漢方薬が使用される場合がある ・炎症や化膿を抑える効果がある |
ビタミン剤 | ・脂漏性皮膚炎の原因としてビタミン類の不足が挙げられるため処方される場合がある |
ステロイド外用薬は市販でも売られているものの、症状に適したものを使用しないとむしろ悪化してしまう可能性もあるため、まずは医師の診療を受けることが大切です。
脂漏性皮膚炎に関するよくある質問
脂漏性皮膚炎に関するよくある質問についてまとめました。
脂漏性皮膚炎は、3ヶ月未満の乳児と30歳以上の成人に多いとされています。
また、女性より男性の方が脂漏性皮膚炎を発症する可能性は高いです。
乳児期に発症する脂漏性皮膚炎を「乳児脂漏性皮膚炎」、成人以上で発症する脂漏性皮膚炎を「成人期脂漏性皮膚炎」と呼びます。
脂漏性皮膚炎は病院で適切な処置をすれば、治りやすい病気です。
ステロイド剤を使用すれば短い期間で治りやすいですが、それでもなかなか治らない場合には以下のような別の皮膚疾患の可能性があります。
アトピー性皮膚炎
尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)
カンジダ性間擦疹
そのため、症状が軽くてもまずは病院で診察を受けてみるのが良いでしょう。
東京で脂漏性皮膚炎の治療ならアイシークリニックへご相談ください
脂漏性皮膚炎は乳児から成人まで誰でもかかりうる病気です。
生活習慣の乱れやストレスなどによって発症することが多いものの、適切な治療を受ければ治りは早いとされているため、まずは医療機関を受診することが大切です。
アイシークリニックは、老若男女どなたでも相談しやすいクリニックを目指しています。
どんな症状であっても、患者様と相談しながら安心の治療方法を提案させていただきますので、かゆみや皮膚の炎症に少しでもお悩みの方は、アイシークリニックにご相談くださいませ。
脂漏性皮膚炎をより深く理解するために
脂漏性皮膚炎と他の皮膚疾患の見分け方
脂漏性皮膚炎は症状が似ている他の皮膚疾患と間違えやすいため、正確な診断が重要です。ここでは、混同しやすい皮膚疾患との見分け方を詳しく解説します。
アトピー性皮膚炎との違い
アトピー性皮膚炎と脂漏性皮膚炎は、どちらも赤みとかゆみを伴うため区別が難しい場合があります。しかし、以下の点で異なります:
発症部位の特徴
- 脂漏性皮膚炎:皮脂腺の多い部分(頭皮、顔面のTゾーン、胸部、背部など)
- アトピー性皮膚炎:関節の内側(ひじの内側、膝の裏など)やかゆみで掻きやすい部分
皮膚の状態
- 脂漏性皮膚炎:油っぽく、黄色みがかった鱗屑(皮が剥がれたもの)
- アトピー性皮膚炎:乾燥しやすく、白い鱗屑
年齢による発症パターン
- 脂漏性皮膚炎:乳児期と成人期(特に30歳以降)に多い
- アトピー性皮膚炎:乳幼児期から継続することが多く、思春期に改善傾向
乾癬との違い
乾癬も脂漏性皮膚炎と似た症状を示すことがありますが、以下の違いがあります:
鱗屑の特徴
- 脂漏性皮膚炎:薄くて油っぽい鱗屑
- 乾癬:厚くて銀白色の鱗屑、爪でこすると粉のように落ちる
境界の明瞭さ
- 脂漏性皮膚炎:境界が比較的不明瞭
- 乾癬:境界が明瞭で、盛り上がった病変
接触性皮膚炎との違い
化粧品やヘアケア製品による接触性皮膚炎との区別も重要です:
発症のタイミング
- 脂漏性皮膚炎:慢性的に継続する
- 接触性皮膚炎:特定の製品使用後に急激に悪化
症状の分布
- 脂漏性皮膚炎:対称性に現れることが多い
- 接触性皮膚炎:製品が接触した部分にのみ現れる
重症度別の症状と対処法
脂漏性皮膚炎の症状は軽度から重度まで様々です。症状の重症度を正しく把握し、適切な対処法を選択することが治療成功の鍵となります。
軽度の脂漏性皮膚炎
症状の特徴
- 軽い赤み
- 少量の鱗屑
- 軽微なかゆみまたは無症状
- 日常生活への影響は最小限
対処法 軽度の場合、適切なスキンケアと生活習慣の改善で症状をコントロールできることが多いです:
- マイルドな洗浄: 刺激の少ない洗浄剤を使用
- 保湿ケア: 過度な乾燥を避けるため、軽い保湿剤を使用
- 生活リズムの整理: 十分な睡眠とストレス管理
- 食事の見直し: 油っぽい食事や糖分の摂取を控える
中等度の脂漏性皮膚炎
症状の特徴
- 明確な赤み
- 目立つ鱗屑やふけ
- 中程度のかゆみ
- 見た目を気にするレベルの症状
対処法 中等度では医療機関での治療が推奨されます:
- 外用薬の使用: ケトコナゾールクリームやステロイド外用薬
- 専用シャンプーの使用: 抗真菌成分入りシャンプー
- 継続的なケア: 症状改善後も予防的な使用を継続
- 定期的な経過観察: 悪化兆候の早期発見
重度の脂漏性皮膚炎
症状の特徴
- 強い炎症と赤み
- 大量の鱗屑
- 強いかゆみ
- 二次感染の可能性
- 日常生活や社会活動への影響
対処法 重度の場合は積極的な治療が必要です:
- 強力な外用薬: 中等度以上のステロイド外用薬
- 内服薬の併用: 抗真菌薬や抗ヒスタミン薬の内服
- 二次感染の予防・治療: 必要に応じて抗生剤の使用
- 集中的な医師の管理: 週単位での経過観察
年代別の脂漏性皮膚炎の特徴と対策
脂漏性皮膚炎は年代によって症状や原因が異なるため、それぞれに適した対策が必要です。
乳児期(0-3ヶ月)
特徴 乳児期の脂漏性皮膚炎は「乳児脂漏性皮膚炎」や「脂漏性湿疹」と呼ばれ、生後数週間から3ヶ月頃に多く見られます。
主な症状
- 頭皮に厚いかさぶた状の鱗屑(乳痂)
- 眉毛部分の黄色っぽい鱗屑
- 顔面の赤み
- 一般的にかゆみは少ない
治療とケア
- 優しい清拭: ベビーオイルで鱗屑を柔らかくしてから除去
- 適切な保湿: 低刺激性の保湿剤使用
- 医師の指導下での外用薬: 必要に応じて弱いステロイド外用薬
- 自然治癒の経過観察: 多くの場合、数ヶ月で自然に改善
学童期・思春期(6-18歳)
特徴 この時期の脂漏性皮膚炎は比較的まれですが、ホルモンバランスの変化により皮脂分泌が増加する思春期に発症することがあります。
主な症状
- 頭皮のふけの増加
- 顔面のTゾーンの赤み
- ニキビとの併発
治療とケア
- 適切な洗髪: 毎日または隔日の洗髪
- 抗真菌シャンプーの使用: 週2-3回の使用
- ホルモンバランスの管理: 規則正しい生活習慣
- 心理的サポート: 見た目への影響による心理的ストレスのケア
成人期(30-50歳)
特徴 最も発症頻度が高く、慢性的な経過をたどることが多い時期です。
主な症状
- 顔面の赤み(特に鼻翼、眉間、頬)
- 頭皮の強いふけとかゆみ
- 胸部や背部への拡大
治療とケア
- 包括的な治療アプローチ: 外用薬と生活習慣改善の組み合わせ
- ストレス管理: 仕事や家庭のストレス軽減
- 食生活の改善: アルコールや刺激物の制限
- 継続的な予防ケア: 症状改善後の再発防止策
高齢期(50歳以上)
特徴 皮膚の老化や免疫力の低下により、症状が複雑化しやすい時期です。
主な症状
- より広範囲な病変
- 乾燥と皮脂過多の混在
- 治癒に時間を要する
治療とケア
- 個別化された治療: 加齢に伴う皮膚変化を考慮
- 優しいスキンケア: 皮膚バリア機能の保護
- 他疾患との関連: 糖尿病など基礎疾患の管理
- 薬剤相互作用の注意: 他の薬剤との併用時の注意
食事療法と栄養管理
脂漏性皮膚炎の管理において、食事療法は重要な役割を果たします。適切な栄養摂取により皮脂分泌をコントロールし、炎症を抑制することができます。
積極的に摂取したい栄養素
ビタミンB群 ビタミンB群は皮脂分泌の調整と皮膚の健康維持に欠かせません:
- ビタミンB2(リボフラビン): 脂質代謝を促進し、皮脂分泌を正常化
- 豊富な食材: レバー、牛乳、卵、緑黄色野菜
- 推奨量: 成人男性1.6mg/日、成人女性1.2mg/日
- ビタミンB6(ピリドキシン): 皮膚の新陳代謝を促進
- 豊富な食材: 魚類、鶏肉、バナナ、じゃがいも
- 推奨量: 成人男性1.4mg/日、成人女性1.1mg/日
- ビオチン(ビタミンB7): 皮膚の健康維持に重要
- 豊富な食材: 卵黄、レバー、ナッツ類
- 推奨量: 成人50μg/日
亜鉛 亜鉛は皮膚の修復と免疫機能の維持に重要です:
- 豊富な食材: 牡蠣、肉類、種実類
- 推奨量: 成人男性11mg/日、成人女性8mg/日
- 注意点: 過剰摂取は避ける(上限40mg/日)
オメガ3脂肪酸 抗炎症作用により症状の改善が期待できます:
- 豊富な食材: 青魚(サバ、イワシ、サンマ)、亜麻仁油、チアシード
- 推奨量: EPA+DHA として1g/日以上
制限すべき食品
高糖質食品 血糖値の急激な上昇は皮脂分泌を促進するため控えめに:
- 精製された炭水化物(白米、白パン、お菓子)
- 清涼飲料水
- アルコール(特に糖質の多いビールや甘いカクテル)
飽和脂肪酸の多い食品 炎症を悪化させる可能性があるため適量に:
- 揚げ物
- ファストフード
- 加工肉製品
刺激物 血管拡張により炎症を悪化させる可能性:
- 香辛料の多い食事
- 熱すぎる飲食物
- カフェインの過剰摂取
実践的な食事プラン
1日の食事例
朝食
- 玄米おにぎり
- 味噌汁(わかめ、豆腐入り)
- 焼き魚(サバまたはサンマ)
- 緑黄色野菜のサラダ
昼食
- 雑穀米
- 鶏胸肉のグリル
- 蒸し野菜
- レバーの炒め物(少量)
夕食
- 玄米
- 豆腐ハンバーグ
- 海藻サラダ
- ビタミンB群豊富な野菜炒め
間食
- ナッツ類(適量)
- フルーツ(ビタミンC豊富なもの)
季節別の脂漏性皮膚炎対策
脂漏性皮膚炎の症状は季節によって変動することが多く、それぞれの季節に適した対策が必要です。
春の対策(3-5月)
季節の特徴
- 花粉による皮膚への刺激
- 環境の変化によるストレス
- 皮脂分泌の増加傾向
対策ポイント
- 花粉対策: 外出後の洗顔・洗髪の徹底
- ストレス管理: 新生活によるストレス軽減策
- 洗浄頻度の調整: 皮脂分泌増加に合わせた洗髪頻度の見直し
- 紫外線対策の開始: 日焼け止めの使用開始
夏の対策(6-8月)
季節の特徴
- 高温多湿による皮脂分泌の増加
- 汗による皮膚刺激
- エアコンによる乾燥
対策ポイント
- 頻回な洗浄: 1日2回の洗顔、毎日の洗髪
- 汗の管理: こまめな汗拭き、吸湿性の良い衣類着用
- 適度な保湿: エアコン環境での乾燥対策
- 紫外線対策の徹底: 炎症悪化防止のためのUVケア
秋の対策(9-11月)
季節の特徴
- 湿度の低下による乾燥
- 夏の紫外線ダメージの影響
- 季節の変わり目によるホルモンバランスの変化
対策ポイント
- 保湿の強化: 乾燥対策の保湿ケア
- バリア機能の修復: 夏のダメージケア
- 生活リズムの調整: 季節変化への体調管理
- 免疫力の向上: 体調管理と栄養バランス
冬の対策(12-2月)
季節の特徴
- 極端な乾燥
- 室内外の温度差
- 皮脂分泌の減少
対策ポイント
- 保湿の最重要視: 集中的な保湿ケア
- 室内湿度の管理: 加湿器の使用(湿度50-60%)
- 温度差対策: 急激な温度変化の回避
- 血行促進: 適度な運動と入浴
詳細なスキンケア方法
適切なスキンケアは脂漏性皮膚炎の治療と予防において最も重要な要素の一つです。
洗顔の正しい方法
洗顔料の選び方
- pH値: 弱酸性(pH5.5-6.5)の製品を選択
- 洗浄成分: 石けん系よりもアミノ酸系界面活性剤を推奨
- 添加物: 香料、着色料、防腐剤の少ない製品
- 抗真菌成分: ケトコナゾールやピロクトンオラミン配合製品
洗顔の手順
- 予洗い: ぬるま湯(32-35度)で軽く予洗い
- 泡立て: 十分に泡立てて、泡で洗うイメージ
- 洗浄時間: 30秒-1分程度、こすりすぎない
- すすぎ: 泡が完全になくなるまで丁寧にすすぐ
- 乾燥: 清潔なタオルで押し当てるように水分除去
洗顔後のケア
- タイミング: 洗顔後3分以内の保湿
- 製品選択: ノンコメドジェニック製品の使用
- 塗布方法: 優しくパッティングするように塗布
- 量の調整: 症状に応じた適量使用
頭皮ケアの詳細
シャンプーの選択基準
- 抗真菌成分: ケトコナゾール、セレン化合物、ピロクトンオラミン
- 洗浄力: 適度な洗浄力(強すぎず弱すぎず)
- pH調整: 弱酸性に調整された製品
- 無添加: 硫酸系界面活性剤不使用
シャンプーの正しい方法
- ブラッシング: シャンプー前の丁寧なブラッシング
- 予洗い: 2-3分間のお湯洗い
- シャンプー: 頭皮をマッサージするように洗浄
- 放置時間: 抗真菌シャンプーは2-3分放置
- すすぎ: シャンプー剤が残らないよう徹底的にすすぐ
頭皮マッサージの方法
- 指の使い方: 爪を立てず、指の腹で円を描くように
- 圧力: 適度な圧力で血行促進
- 時間: 3-5分程度
- 頻度: 毎日のシャンプー時に実施
ストレス管理と脂漏性皮膚炎
ストレスは脂漏性皮膚炎の主要な悪化因子の一つです。効果的なストレス管理法を実践することで、症状の改善と予防が期待できます。
ストレスと皮膚の関係
生理学的メカニズム
- ホルモン分泌: ストレスにより皮脂分泌を促進するホルモンが増加
- 免疫機能: ストレスによる免疫機能低下で常在菌のバランス悪化
- 血行: ストレスによる血行不良で皮膚の新陳代謝低下
- 睡眠: ストレスによる睡眠不足で皮膚修復機能低下
効果的なストレス管理法
即効性のあるリラクゼーション法
深呼吸法
- 4カウントで鼻から息を吸う
- 7カウント息を止める
- 8カウントで口から息を吐く
- これを4-5回繰り返す
プログレッシブ筋弛緩法
- 足先から頭部まで順番に筋肉を緊張させる
- 5秒間緊張を保つ
- 一気に力を抜いてリラックス
- 20-30秒間リラックス状態を味わう
長期的なストレス対策
運動療法
- 有酸素運動: 週3回、30分程度のウォーキングやジョギング
- ヨガ・ストレッチ: 柔軟性向上とリラクゼーション効果
- 筋力トレーニング: 週2回程度、ストレス耐性向上
睡眠の質の向上
- 就寝時間の一定化: 毎日同じ時間に就寝
- 睡眠環境の整備: 適温(18-22度)、遮光、静音
- 就寝前ルーティン: リラックスできる習慣の確立
- 電子機器の制限: 就寝1時間前からの使用制限
マインドフルネス・瞑想
- 基本的な瞑想: 毎日10-15分の座禅や瞑想
- マインドフルネス: 日常活動への意識的な集中
- ジャーナリング: 感情や思考の整理
脂漏性皮膚炎に併発しやすい疾患
脂漏性皮膚炎は単独で発症することもありますが、他の疾患と併発することがあります。
アトピー性皮膚炎との併発
症状の特徴
- 皮脂の多い部分と乾燥しやすい部分の両方に症状
- かゆみが強く、掻破による悪化
- アレルギー反応の複合
管理のポイント
- 個別部位の治療: 部位ごとに適した治療法の選択
- アレルゲンの特定: アレルギー検査による原因特定
- スキンケアの調整: 部位に応じた製品選択
- 全身管理: 免疫バランスの調整
尋常性乾癬との併発
症状の特徴
- 境界明瞭な赤い斑点
- 厚い銀白色の鱗屑
- 爪や関節への影響
管理のポイント
- 専門医との連携: 皮膚科専門医による総合的な治療
- 免疫調整: 免疫抑制剤の適応検討
- 生活習慣の重要性: ストレス管理と禁煙の徹底
ニキビとの併発
症状の特徴
- 顔面の皮脂過多
- 炎症性皮疹の混在
- 毛穴の詰まりと炎症
管理のポイント
- 適切な洗浄: 過度でない適切な洗顔
- 外用薬の選択: ニキビと脂漏性皮膚炎両方に効果的な製品
- ホルモンバランス: 必要に応じてホルモン治療の検討
重篤な合併症と対処法
脂漏性皮膚炎が適切に管理されないと、以下のような合併症を引き起こす可能性があります。
二次細菌感染
症状
- 黄色い浸出液
- 痛みや熱感
- リンパ節の腫脹
対処法
- 即座の医療機関受診: 抗生剤治療が必要
- 清潔保持: 感染部位の適切な清拭
- 掻破の防止: かゆみ対策の強化
毛嚢炎の併発
症状
- 毛穴周辺の赤い小さな膿疱
- 軽い痛みやかゆみ
- 毛が抜けやすくなる
対処法
- 抗菌薬の使用: 外用または内服抗生剤
- 毛嚢への刺激回避: 強い摩擦や刺激の防止
- 清潔維持: 患部の適切な洗浄
治療効果を高めるライフスタイル
睡眠の質の改善
理想的な睡眠パターン
- 就寝時間: 22:00-24:00
- 起床時間: 6:00-8:00
- 睡眠時間: 7-8時間
- 昼寝: 30分以内(15:00前)
睡眠環境の最適化
- 寝具の選択: 通気性の良い天然素材
- 枕カバーの交換: 毎日または隔日交換
- 室温管理: 18-22度を維持
- 湿度管理: 50-60%を維持
運動療法の実践
推奨される運動
有酸素運動
- ウォーキング: 1日30分、週5日
- 水泳: 皮膚への刺激が少なく、全身運動効果
- サイクリング: 適度な有酸素運動
筋力トレーニング
- 軽負荷: 過度な発汗を避ける
- 頻度: 週2-3回
- 部位: 全身をバランスよく鍛える
ヨガ・ストレッチ
- リラクゼーション効果: ストレス軽減
- 血行促進: 皮膚の新陳代謝向上
- 柔軟性向上: 身体の調子を整える
環境因子の管理
居住環境の改善
- 湿度管理: 加湿器・除湿器の適切な使用
- 換気: 1日数回の換気で空気清浄
- ダニ・カビ対策: アレルゲンの除去
- 化学物質: 香料や洗剤の見直し
職場環境の配慮
- ストレス源の特定: 仕事上のストレス要因の把握
- 休憩の確保: 適度な休憩とリフレッシュ
- 人間関係: 良好な職場関係の構築
薬物治療の詳細と使い分け
外用薬の詳細
ステロイド外用薬のランク別使用法
ウィーク(弱い)
- 使用部位: 顔面、首、陰部
- 使用期間: 2週間程度
- 代表薬: プレドニゾロン軟膏
ミディアム(中程度)
- 使用部位: 体幹、四肢
- 使用期間: 1-2週間
- 代表薬: ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル軟膏
ストロング(強い)
- 使用部位: 厚い皮膚、重症例
- 使用期間: 短期間のみ
- 代表薬: フルオシノロンアセトニド軟膏
使用上の注意
- 段階的減量: 症状改善後は徐々に弱いランクに変更
- 休薬期間: 長期使用時は適切な休薬期間を設ける
- 副作用監視: 皮膚萎縮や感染症に注意
抗真菌薬外用薬の特徴
ケトコナゾール
- 濃度: 通常2%クリーム・ローション
- 使用頻度: 1日1-2回
- 効果発現: 2-4週間で効果判定
- 長期使用: 安全性が高く長期使用可能
その他の抗真菌薬
- テルビナフィン: ケトコナゾール抵抗性の場合
- シクロピロクス: より広域抗菌作用
- 硝酸ミコナゾール: カンジダ併発時に有効
内服薬の適応と効果
抗真菌薬内服 重症例や外用薬で効果不十分な場合に使用:
- イトラコナゾール: 週末療法(連続3日間服用、4日間休薬)
- フルコナゾール: 週1回服用
- 注意点: 肝機能検査が必要、薬物相互作用に注意
抗ヒスタミン薬 かゆみ対策として使用:
- 第二世代: 眠気が少ない(ロラタジン、フェキソフェナジンなど)
- 第一世代: 眠気あり(ジフェンヒドラミンなど)
予防的スキンケア製品の選び方
シャンプー選択のポイント
成分による分類
抗真菌シャンプー
- ケトコナゾール系: 最も効果的、処方薬として使用
- セレン硫化物系: 市販品でも入手可能
- ピロクトンオラミン系: マイルドな抗真菌作用
- ジンクピリチオン系: ふけ・かゆみに効果的
使用頻度と方法
- 初期治療: 週3-4回使用
- 維持期: 週1-2回使用
- 通常シャンプーとの併用: 症状に応じて使い分け
保湿剤の選択
脂漏性皮膚炎に適した保湿成分
- セラミド: バリア機能修復
- ヒアルロン酸: 軽やかな保湿感
- グリセリン: 適度な保湿力
- 尿素: 角質軟化作用
避けるべき成分
- 重いオイル: 毛穴詰まりのリスク
- 強い香料: 刺激となる可能性
- アルコール系: 乾燥を悪化させる可能性
医療機関受診のタイミング
緊急受診が必要な症状
以下の症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください:
- 発熱を伴う皮膚症状: 38度以上の発熱と皮膚症状の併発
- 急速な悪化: 数日で症状が急激に悪化
- 浸出液の増加: 黄色い浸出液が大量に出る
- 強い痛み: かゆみを超えた痛みがある
- 全身症状: だるさ、食欲不振などの全身症状
定期受診のメリット
症状安定期でも定期受診が重要な理由
- 薬剤調整: 症状に応じた薬剤の微調整
- 副作用監視: ステロイド外用薬の副作用チェック
- 生活指導: 個人の状況に応じたアドバイス
- 新治療法の情報: 最新治療法の情報提供
妊娠・授乳期の脂漏性皮膚炎
妊娠中の症状変化
ホルモンの影響
- プロゲステロン増加: 皮脂分泌の変化
- エストロゲンの変動: 皮膚バリア機能への影響
- 症状の個人差: 改善する場合と悪化する場合
妊娠中・授乳中の治療の注意点
使用可能な薬剤
- ケトコナゾール外用薬: 基本的に安全
- 弱いステロイド外用薬: 短期間であれば使用可能
- 保湿剤: ほぼ全て使用可能
避けるべき薬剤
- 内服抗真菌薬: 胎児への影響の可能性
- 強いステロイド外用薬: 長期使用は避ける
- レチノイド: 催奇形性のリスク
代替治療法
- 生活習慣改善: 食事療法、ストレス管理の重要性増大
- 物理的除去: 優しい方法での鱗屑除去
- 天然素材の活用: ティーツリーオイルなど(医師相談のもと)
小児の脂漏性皮膚炎ケア
年齢別ケア方法
新生児-乳児(0-1歳)
- 乳痂のケア:
- ベビーオイルでふやかしてから除去
- 無理にはがさない
- 毎日のお風呂で少しずつ除去
- スキンケア:
- 弱酸性のベビーソープ使用
- ぬるめのお湯(37-38度)
- 短時間(5-10分)の入浴
幼児期(1-6歳)
- 洗髪方法:
- 子供用の優しいシャンプー
- 毎日または隔日の洗髪
- しっかりとしたすすぎ
- 生活習慣:
- 規則正しい生活リズム
- バランスの取れた食事
- 十分な睡眠
代替療法・補完療法
天然由来成分を用いた治療
ティーツリーオイル
- 効果: 抗菌・抗真菌作用
- 使用法: 5%濃度に希釈して使用
- 注意点: アレルギー反応の可能性、パッチテスト推奨
アロエベラ
- 効果: 抗炎症作用、保湿効果
- 使用法: 純度の高いアロエゲル使用
- 注意点: 防腐剤無添加製品を選択
オートミール
- 効果: 抗炎症作用、皮膚バリア修復
- 使用法: オートミールパックまたは入浴剤として
- 注意点: 小麦アレルギーの場合は避ける
漢方薬による治療
よく処方される漢方薬
十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)
- 適応: 化膿しやすい皮膚疾患
- 効果: 抗炎症、解毒作用
- 服用方法: 1日3回、食前または食間
清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)
- 適応: 顔面の皮膚炎
- 効果: 上半身の熱を冷ます
- 服用方法: 1日3回、食前または食間
当帰飲子(とうきいんし)
- 適応: 乾燥とかゆみを伴う皮膚疾患
- 効果: 血行改善、保湿効果
- 服用方法: 1日3回、食前または食間
日常生活での注意点とコツ
化粧品・スキンケア製品の選び方
ファンデーション選択
- ノンコメドジェニック: 毛穴詰まりを起こしにくい
- オイルフリー: 皮脂の過剰分泌を助長しない
- 低刺激性: 香料・着色料不使用
- UV効果: SPF30以上のUV対策
クレンジング方法
- 優しいクレンジング: オイルよりもミルクタイプ推奨
- ダブル洗顔: クレンジング後の洗顔
- 時間管理: 1分以内で完了
- すすぎの徹底: 残留物の完全除去
衣類・寝具の管理
素材選択
- 天然繊維: 綿、リネンなど通気性の良い素材
- 化学繊維の避け方: ポリエステル100%は避ける
- 肌触り: 滑らかで刺激の少ない素材
洗濯方法
- 洗剤選択: 無添加・低刺激性洗剤
- 柔軟剤: 使用を控えるか無添加製品
- すすぎ: 十分なすすぎで洗剤残留を防ぐ
- 乾燥: 完全に乾燥させてから使用
食生活の具体的改善策
抗炎症食事法
地中海式食事法の応用 脂漏性皮膚炎に効果的とされる地中海式食事法:
- 魚類の積極摂取: 週3-4回の魚類(特に青魚)
- オリーブオイル: 良質な脂質の摂取源
- 野菜・果物: 1日350g以上の摂取
- 全粒粉製品: 精製されていない穀類の選択
- ナッツ類: 適量(1日30g程度)の摂取
炎症を抑える食材
- ブルーベリー: アントシアニンの抗酸化作用
- 緑茶: カテキンの抗炎症作用
- ターメリック: クルクミンの抗炎症作用
- しょうが: ジンゲロールの抗炎症作用
腸内環境改善による皮膚への効果
プロバイオティクスの活用
- ヨーグルト: 生きた乳酸菌を含む製品
- 発酵食品: 味噌、醤油、漬物など
- プロバイオティクスサプリメント: 医師相談のもと使用
プレバイオティクス食材
- 食物繊維: 野菜、果物、海藻類
- オリゴ糖: 玉ねぎ、にんにく、バナナ
- レジスタントスターチ: 冷ました米、じゃがいも
心理的サポートとメンタルケア
見た目への不安に対する対処
セルフケアの重要性 脂漏性皮膚炎は顔面に症状が現れることが多く、見た目への影響から心理的ストレスを感じる方が多いです。
- 現実的な目標設定: 完全な治癒よりもコントロール可能な状態を目指す
- 段階的改善の認識: 小さな改善も評価する
- ポジティブな側面への注目: 治療により改善している部分に注目
社会的サポートの活用
- 家族の理解: 病気への正しい理解を促す
- 職場での配慮: 必要に応じて症状についての説明
- 専門家との相談: 心理カウンセラーやソーシャルワーカーとの相談
最新の治療法と研究動向
新しい治療アプローチ
バイオマイクロバイオーム治療 皮膚常在菌のバランスを整える新しいアプローチ:
- プロバイオティクススキンケア: 善玉菌を含む外用製品
- マイクロバイオーム解析: 個人の菌叢分析に基づく治療
- 選択的除菌: 有害菌のみを標的とする治療
光線療法 特定の波長の光を用いた治療:
- ナローバンドUVB: 免疫調整作用
- LED治療: 低出力赤色・青色LED
- IPL(Intense Pulsed Light): 血管拡張の改善
予防医学的アプローチ
遺伝子検査による個別化治療
- CYP遺伝子多型: 薬物代謝能の個人差
- 炎症関連遺伝子: 炎症反応の個人差
- 皮脂分泌関連遺伝子: 皮脂分泌量の個人差
より詳細なQ&A集
生活習慣に関する質問
Q: 汗をかく運動は避けた方が良いですか? A: 適度な運動は推奨されますが、以下の点に注意してください。汗をかいた後は速やかにシャワーを浴びるか、清潔なタオルで汗を拭き取ることが重要です。運動による一時的な皮脂分泌増加はありますが、長期的にはストレス軽減や血行改善により症状改善に寄与します。激しい運動よりも、ウォーキングや水泳などの適度な有酸素運動を推奨します。
Q: 髪の毛の長さは症状に影響しますか? A: 髪の長さ自体が直接的な影響を与えることは少ないですが、以下の点で症状に影響する可能性があります。長い髪は頭皮の通気性を悪くし、皮脂や菌の繁殖を促進する場合があります。また、シャンプー剤のすすぎ残しが起こりやすくなります。一方、短すぎる髪は頭皮への直接的な刺激を受けやすくなる場合があります。症状が強い時期は、中程度の長さを保ち、清潔を保ちやすいヘアスタイルを心がけることが推奨されます。
Q: 温泉や銭湯の利用は大丈夫ですか? A: 温泉や銭湯の利用は基本的に問題ありませんが、いくつかの注意点があります。硫黄泉などの強い成分を含む温泉は皮膚刺激を与える可能性があるため、単純温泉を選ぶことを推奨します。長時間の入浴は皮膚を乾燥させるため、15分以内に留めてください。入浴後は速やかに保湿ケアを行うことが重要です。また、症状が悪化している時期は、感染リスクを避けるため公共浴場の利用を控えることを検討してください。
薬物治療に関する質問
Q: ステロイド外用薬の長期使用は安全ですか? A: ステロイド外用薬の長期使用には注意が必要ですが、適切に使用すれば比較的安全です。顔面など皮膚の薄い部分では、長期使用により皮膚萎縮、毛細血管拡張、酒さ様皮膚炎などの副作用のリスクがあります。体幹部では比較的副作用は少ないですが、それでも間欠的使用が推奨されます。症状が安定したら抗真菌薬外用薬のみでの維持療法に移行することが重要です。定期的な医師の診察により、適切な薬剤選択と使用期間の調整を行うことが大切です。
Q: 市販薬と処方薬の効果の違いは? A: 市販薬と処方薬には成分濃度と種類に違いがあります。処方薬の方が高濃度の有効成分を含むことが多く、より強力な効果が期待できます。特に抗真菌薬については、処方薬のケトコナゾールは市販品では入手できません。また、ステロイド外用薬についても、処方薬の方が症状や部位に応じた適切な強さのものを選択できます。ただし、軽症の場合は市販薬でも十分な効果が得られることがあります。自己判断で市販薬を使用し、2週間程度で改善がない場合は医療機関を受診することを推奨します。
日常ケアに関する質問
Q: 洗髪の頻度はどの程度が適切ですか? A: 洗髪の頻度は症状の程度と皮脂分泌量により個人差があります。一般的には以下を目安にしてください。症状が強い時期は毎日の洗髪を推奨します。症状が安定している時期は隔日の洗髪でも可能です。皮脂分泌が多い方は毎日、普通の方は隔日が目安です。重要なのは頻度よりも正しい洗髪方法で、十分な泡立てと丁寧なすすぎを心がけることです。症状に応じて調整し、悪化する場合は頻度を見直してください。
Q: ドライヤーの使用は症状に影響しますか? A: ドライヤーの使用方法により症状に影響する可能性があります。高温での乾燥は頭皮を乾燥させ、かえって皮脂分泌を促進する場合があります。冷風または低温での使用を推奨します。頭皮から15-20cm離して使用し、同じ場所に長時間当て続けないよう注意してください。完全に乾燥させることは重要ですが、過度な乾燥は避けましょう。自然乾燥との併用も効果的です。
職業別・ライフスタイル別対策
デスクワーク従事者向け対策
特有のリスク因子
- 長時間のPC作業によるストレス
- エアコン環境での乾燥
- 不規則な食事時間
- 運動不足
具体的対策
- 作業環境の改善:
- デスク周りの加湿
- 1時間ごとの小休憩
- ブルーライトカット眼鏡の使用
- ストレス管理:
- 休憩時間の深呼吸
- ストレッチの実施
- 昼休みの軽い散歩
接客業・サービス業従事者向け対策
特有のリスク因子
- 人前に出ることによる心理的ストレス
- 化粧による皮膚への負担
- 不規則な勤務時間
具体的対策
- 化粧方法の工夫:
- 軽めのベースメイク
- こまめな化粧直し
- 帰宅後の完全なクレンジング
- 勤務中のケア:
- 休憩時間の洗顔
- ストレス軽減法の実践
屋外作業従事者向け対策
特有のリスク因子
- 紫外線による皮膚ダメージ
- 汗による皮膚刺激
- 埃や汚れによる皮膚への負担
具体的対策
- 保護具の使用:
- 帽子やサンバイザー
- UVカット機能のある作業着
- 日焼け止めの使用
- 作業後のケア:
- 速やかな洗浄
- 保湿ケアの実施
季節の変わり目対策
季節性変動の理解
春(花粉症の時期)
- 花粉による皮膚への直接刺激
- アレルギー反応による免疫バランスの乱れ
- 環境変化によるストレス
対策
- 花粉対策の徹底: マスク、帽子の着用
- 帰宅後の洗浄: 顔・髪の洗浄
- 室内環境: 空気清浄機の使用
梅雨(高湿度の時期)
- カビ・細菌の繁殖しやすい環境
- 皮膚の蒸れによる症状悪化
対策
- 除湿対策: 除湿器の使用
- 通気性の確保: 衣類・寝具の工夫
- 抗真菌ケアの強化: シャンプー頻度の増加
重症化予防のための早期対応
症状悪化のサインを見逃さない
注意すべき症状変化
- 炎症の拡大: 病変部位の急速な拡大
- 浸出液の増加: 黄色や緑色の浸出液
- 痛みの出現: かゆみから痛みへの変化
- 発熱: 皮膚症状に伴う発熱
- リンパ節腫脹: 首や耳の後ろのリンパ節の腫れ
緊急時の対応方法
応急処置
- 冷却: 清潔な冷たいタオルで患部を冷やす
- 清拭: 生理食塩水での清拭
- 保護: 清潔なガーゼで患部を保護
- 避けるべき行為: 掻く、市販薬の自己判断での使用
脂漏性皮膚炎と関連疾患
パーキンソン病との関連
関連性 パーキンソン病患者では脂漏性皮膚炎の発症率が高いことが知られています:
- 皮脂分泌異常: ドーパミン不足による皮脂分泌調整の障害
- 免疫機能低下: 病気による全身状態の変化
- 薬剤の影響: パーキンソン病治療薬の副作用
対策
- 多職種連携: 神経内科医との連携治療
- 薬剤調整: パーキンソン病薬との相互作用考慮
- 家族サポート: 日常ケアへの家族の協力
HIV感染症との関連
関連性 HIV感染症患者では重症の脂漏性皮膚炎が発症しやすいとされています:
- 免疫不全: CD4陽性T細胞数の減少
- 日和見感染: 常在菌の異常増殖
- 薬剤耐性: 通常治療への反応低下
治療の特殊性
- 免疫状態の考慮: CD4数値に応じた治療強度調整
- 薬剤選択: HIV治療薬との相互作用チェック
- 感染予防: 二次感染防止の徹底
脂漏性皮膚炎の社会復帰支援
仕事復帰へのステップ
段階的復帰プログラム
- 第1段階: 症状の安定化(2-4週間)
- 第2段階: 日常活動の回復(2-4週間)
- 第3段階: 職場環境への適応(1-2週間)
- 第4段階: 完全復帰とモニタリング
職場での配慮事項
- 作業環境: 適切な湿度・温度管理
- 休憩時間: 適度な休憩とリフレッシュ
- ストレス軽減: 業務負荷の調整
- 理解促進: 同僚への病気の理解促進
まとめ:長期的な管理のポイント
脂漏性皮膚炎は完治が難しい慢性疾患ですが、適切な管理により症状をコントロールし、質の高い生活を送ることが可能です。
成功する管理の要素
- 継続性: 症状改善後も予防的ケアの継続
- 個別化: 個人の症状や生活スタイルに応じた対策
- 多角的アプローチ: 医療・生活習慣・心理面の総合的ケア
- 柔軟性: 症状の変化に応じた治療方針の調整
患者さんへのメッセージ 脂漏性皮膚炎は決して珍しい病気ではなく、多くの人が経験する皮膚疾患です。適切な知識と継続的なケアにより、症状をコントロールすることは十分可能です。一人で悩まず、医療従事者とともに最適な管理方法を見つけていきましょう。症状が改善しない場合や新たな心配事がある場合は、遠慮なく医療機関にご相談ください。
皮膚は私たちの体を守る重要な器官です。脂漏性皮膚炎の適切な管理を通じて、健康で快適な生活を取り戻しましょう。
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務