はじめに
近年、2型糖尿病治療の現場で注目を集めているオゼンピック(一般名:セマグルチド)。GLP-1受容体作動薬という新しいクラスの薬剤として、血糖コントロールに加えて体重減少効果も期待できることから、多くの患者様と医療従事者の関心を集めています。
本記事では、アイシークリニック上野院の医師監修のもと、オゼンピックの効果から副作用、適切な使用方法、費用面まで、一般の方にもわかりやすく詳しく解説いたします。糖尿病治療を検討されている方、またオゼンピックについて正確な情報を得たい方にとって、信頼できる情報源となるよう努めました。
オゼンピックとは?基本情報を理解する
薬剤の基本データ
製品名: オゼンピック皮下注2mg 一般名: セマグルチド(遺伝子組換え) 薬効分類: 持続性GLP-1受容体作動薬 製造販売元: ノボノルディスクファーマ株式会社 承認年月日: 2018年3月23日(日本)
オゼンピックは、週1回の皮下注射により投与する2型糖尿病治療薬です。2型糖尿病治療剤, 持続性GLP-1受容体作動薬として、通常、成人には、セマグルチド(遺伝子組換え)として週1回0.5mgを維持用量とし、皮下注射します。
GLP-1受容体作動薬とは
GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)は、小腸のL細胞から分泌されるインクレチンホルモンの一種です。食事摂取に応じて分泌され、血糖値に依存してインスリン分泌を促進する重要な働きを持っています。
オゼンピックは、小腸のL細胞から分泌されるインクレチンホルモンであり、血糖降下作用のほか、中枢における摂食抑制作用を有するグルカゴン様ペプチド(GLP)-1と94%のアミノ酸配列の相同性を有するヒトGLP-1アナログとして開発された薬剤です。
オゼンピックの作用機序:なぜ効果があるのか
1. インスリン分泌促進
オゼンピックは膵臓のGLP-1受容体に結合し、血糖値が高い時にのみインスリンの分泌を促進します。この「グルコース依存性」という特徴により、血糖値が正常範囲にある時はインスリンの過剰分泌を避け、低血糖のリスクを軽減します。
2. グルカゴン分泌抑制
血糖値が高い際に、肝臓からのグルコース産生を促進するグルカゴンというホルモンの分泌を抑制します。これにより、肝臓からの余分な糖の放出を防ぎ、血糖値の上昇を抑制します。
3. 胃内容物排出遅延
オゼンピックは胃の運動を緩やかにし、食べ物が胃から小腸へ移動する速度を遅らせます。オゼンピックは胃の働きを緩やかにすることで、胃に食べ物が入っている時間を長くします。いつもより少ない量の食事で満腹感が持続するため、間食したい気持ちを減らしてくれる効果があります。
4. 中枢性食欲抑制
脳の視床下部にあるGLP-1受容体に作用し、満腹中枢を刺激することで食欲を抑制します。食欲は脳にある視床下部でコントロールされています。オゾンピックは、満腹中枢に働きかけて過剰な食欲を抑える働きにより、食欲を抑えて食べ過ぎを防いでくれます。
オゼンピックの効果:臨床データに基づく検証
HbA1c改善効果
日本人を含む2型糖尿病患者を対象とした臨床試験「SUSTAIN試験」では、優れた血糖改善効果が実証されています。
本剤0.5mg及び1.0mgの30週間投与により、主要評価項目であるHbA1cのベースラインから投与後30週までの変化量に関して、本剤のいずれの用量でもプラセボに対する優越性が検証された(p<0.0001)
具体的な数値として、既存治療薬であるシタグリプチンとの比較試験では、オゼンピックのHbA1c改善効果は約-2%と非常に高い結果が示されています。
体重減少効果
2型糖尿病患者さんを対象として行われたオゼンピック(セマグルチド)の臨床試験である「SUSTAIN1〜5試験」において、オゼンピック1.0㎎投与で、体重減少効果は平均5〜6㎏となっています。
これは糖尿病患者において、単なる血糖コントロールにとどまらない総合的な代謝改善効果を示す重要なデータです。
心血管保護効果
最近では心血管疾患・慢性腎臓病を患っている患者さんにGLP-1受容体作動薬を投与しましょう、という動きが加速しています。オゼンピックを含むGLP-1受容体作動薬は、心血管イベントのリスク低下効果も報告されており、糖尿病患者の総合的な健康管理において重要な役割を果たしています。
オゼンピックの適応と使用方法
承認された適応
オゼンピックは日本において、2型糖尿病 あらかじめ糖尿病治療の基本である食事療法、運動療法を十分に行ったうえで効果が不十分な場合に限り考慮することという適応で承認されています。
用法・用量
標準的な投与スケジュール:
- 開始用量: 週1回0.25mg(4週間)
- 維持用量: 週1回0.5mg
- 増量: 効果不十分な場合、週1回1.0mgまで増量可能
本剤は、週1回0.25mgで投与を開始し、4週間投与した後に週1回0.5mgへ増量した。1.0mgまで増量する群では、その後週1回0.5mgを4週間投与した後に週1回1.0mgへ増量した
投与方法
オゼンピックは患者自身が行う皮下注射薬です。注射部位は以下の通りです:
- 腹部: 最も一般的な投与部位
- 大腿部: 腹部に次ぐ推奨部位
- 上腕部: 必要に応じて使用
本剤を異なる投与部位(腹部、大腿部及び上腕部)に投与したとき、腹部への投与に対する大腿部及び上腕部への投与での定常状態の本剤曝露量の比の推定値及び90%信頼区間は、0.96[0.93;1.00]及び0.92[0.89;0.96]であったことが示されており、部位による吸収の差は臨床的に問題ないレベルです。
新規格の特徴
従来は使い切りタイプでしたが、今回の新規格は1本にオゼンピック2mg分が入っており、たとえば1回0.5mg注射している方の場合、1本で4回分、ということになります。この変更により、使用頻度の柔軟性と経済性が向上しています。
オゼンピックの副作用と安全性
主な副作用
オゼンピックの使用に際して最も注意が必要なのは副作用の理解と対処です。
消化器系副作用(最多):
- 嘔吐・悪心(吐き気)
- 食欲減退
- 下痢
- 便秘
- 腹痛
- 腹部不快感
オゼンピックは非常に血糖改善作用が強く、体重低下作用も高い薬剤で非常に期待が持てるお薬なのですが、胃腸の不調が高頻度に出現するお薬です
発現頻度と時期: 副作用は治療開始直後に最も多く現れ、副作用は、一般的に治療開始直後(最初の数週間〜数か月)に多く見られ、時間の経過とともに軽減していくことが多いです。
重篤な副作用
急性膵炎: 急性膵炎の初期症状(嘔吐を伴う持続的な激しい腹痛等)があらわれた場合は、使用を中止し、速やかに医師の診断を受けるよう指導することが重要です。
低血糖: 特にSU薬(スルホニル尿素薬)やインスリンとの併用時に注意が必要です。
副作用の対処法
- 段階的増量: 副作用軽減のため、必ず0.25mgから開始
- 経過観察: 初回投与から数週間は特に注意深い観察が必要
- 生活習慣の調整: 少量頻回の食事など、胃腸症状を軽減する工夫
- 医師との連携: 症状に応じた用量調整や対症療法の検討
薬価と費用:保険適用と自費診療の違い
保険適用時の費用
薬価基準価格:
- オゼンピック皮下注2mg: 11,151円(1キット)
患者自己負担額: 2025年4月時点のオゼンピック2㎎の薬価は1キット11,151円で、窓口で実際に支払う3割負担額は1キット3,345円となります
月額費用の目安:
- 0.25mg週1回使用: 約1,650円/月(3割負担)
- 0.5mg週1回使用: 約3,300円/月(3割負担)
- 1.0mg週1回使用: 約6,600円/月(3割負担)
自費診療時の費用
ダイエット目的などの適応外使用では保険適用されません。
一般的な価格帯: オゼンピックの価格はクリニックによって異なりますが、2mg製剤1本の価格は一般的に25,000〜30,000円程度が多いです。
追加費用:
- 初診料・再診料
- 注射針代
- 血液検査費用
- 配送料(オンライン診療の場合)
保険適用の条件
適用条件: オゼンピックは、糖尿病治療に対する処方であれば保険適用となる。糖尿病ではない人がオゼンピックの食欲抑制効果を期待してダイエット目的で使用する場合は、保険適用にはならない
他のGLP-1受容体作動薬との比較
リベルサス(経口薬)
特徴:
- オゼンピックと同じセマグルチドを含有
- 世界初のGLP-1受容体作動薬経口薬
- 1日1回服用
効果の比較: 同じ成分を含むオゼンピック(注射薬)とリベルサス(経口薬)を比較した場合、統計的な有意差は確認されていませんが、オゼンピックの方がより強い体重減少効果が期待できる傾向が示されています
ウゴービ(肥満症治療薬)
特徴:
- セマグルチドを含有(オゼンピックと同成分)
- 日本で肥満症治療薬として承認
- より高用量まで使用可能(最大2.4mg)
適応の違い: オゼンピックは0.25mg〜1.0mgを、ウゴービは0.25mg〜2.4mgを週に1回皮下に注射するタイプです
ビクトーザ・サクセンダ(リラグルチド)
特徴:
- 1日1回注射タイプ
- ビクトーザ:糖尿病治療薬として承認
- サクセンダ:海外で肥満症治療薬として承認
マンジャロ(チルゼパチド)
新しい作用機序: 2023年4月には新しいタイプの薬としてGIP/GLP-1受容体作動薬の「マンジャロ」が国内で販売され、強い体重減少効果が期待できるとして注目を集めています
効果の比較: 実臨床での使用感と概ね同じ結果かと思います。やはりHbA1c低下・体重減少共にマンジャロの効果が際立った結果となっています
オゼンピック使用時の注意点
使用できない方(禁忌)
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡又は糖尿病性前昏睡、1型糖尿病の患者。重症感染症、手術等の緊急の場合
注意が必要な方
- 膵炎の既往歴がある方
- 胆石症、胆嚢炎の既往がある方
- 重篤な腎機能障害のある方
- 妊娠中・妊娠を希望する女性
- 高齢者
薬物相互作用
他のGLP-1受容体作動薬、SU薬(スルホニル尿素薬)、インスリンなどと併用しないでください
保管方法
未使用時: オゼンピックは「使用を開始するまでは遮光して室温で保管する」
使用開始後: 使用開始後は冷蔵もしくは室温(1〜30℃)で保管し、8週間以内に使用してください
適応外使用:ダイエット目的での使用について
現状と課題
オゼンピックは糖尿病治療薬として承認されていますが、オゼンピックをダイエット目的で安易に処方するのは適応外使用にあたります。
海外での状況
GLP-1受容体作動薬の注射製剤が米国FDAで肥満治療薬として承認されていますが、日本では肥満症治療目的での使用は承認されていません。
医師の判断の重要性
適応外使用を検討する場合は、以下の点が重要です:
- 十分な医学的評価
- リスクと利益の慎重な検討
- 適切な医学的管理下での使用
- 患者への十分な説明と同意
患者さんへの実践的アドバイス
治療開始前の準備
- 医師との十分な相談
- 現在の治療状況の確認
- 副作用についての理解
- 治療目標の設定
- 生活習慣の見直し
- 食事療法の継続
- 適度な運動の実施
- 定期的な血糖測定
注射技術の習得
- 正しい注射手技の学習
- 注射部位のローテーション
- 針の安全な廃棄方法
副作用への対処
- 初期症状の理解と対応
- 緊急時の連絡先確保
- 定期的な医師との面談
最新の研究動向と将来展望
新しい適応の可能性
GLP-1受容体作動薬 糖尿病・肥満以外で進む研究開発―アルコール依存症、アルツハイマー病、循環器疾患など、新しい治療領域での研究が進んでいます。
日本での肥満症治療薬開発
肥満症治療薬、市場競争火ぶた…ゼップバウンド19日薬価収載、処方は広がるかなど、今後の治療選択肢の拡大が期待されています。
よくある質問(FAQ)
A1: オゼンピックの効果を実感しやすいタイミングは、使用を開始してから2〜3か月です。ただし、個人差があり、血糖値の改善は比較的早期から認められることもあります。
A2: GLP-1受容体作動薬の注射針の細さは髪の毛ほどなので、痛みはほとんどないとされています。
A3: メトホルミンやDPP-4阻害薬との併用は可能ですが、SU薬やインスリンとの併用時は低血糖に注意が必要です。必ず医師にご相談ください。
A4: 妊娠中の安全性は確立されていないため、妊娠中または妊娠を希望する場合は医師にご相談ください。
A5: 冷蔵保存が必要な場合があるため、保冷剤と共に携行し、処方箋のコピーを持参することをお勧めします。
まとめ
オゼンピックは、2型糖尿病治療において革新的な効果をもたらすGLP-1受容体作動薬です。血糖コントロールの改善に加えて、体重減少効果や心血管保護効果も期待でき、糖尿病患者さんの総合的な健康管理において重要な役割を果たしています。
しかし、副作用への十分な理解と適切な医学的管理が不可欠です。特に消化器系副作用は高頻度で発現するため、段階的な用量調整と綿密な経過観察が必要です。
費用面では、糖尿病治療目的であれば保険適用となり、患者さんの経済的負担も軽減されます。一方、適応外使用は自費診療となるため、医師との十分な相談のもと、慎重な判断が求められます。
今後も新しい研究結果や臨床経験の蓄積により、より安全で効果的な使用方法が確立されていくことが期待されます。オゼンピックの使用を検討されている方は、必ず専門医にご相談いただき、適切な医学的指導のもとで治療を開始することをお勧めします。
参考文献
- 厚生労働省. 医療用医薬品の添付文書等情報. オゼンピック皮下注2mg. 2025.
- ノボノルディスクファーマ株式会社. オゼンピック皮下注 製品情報. 2025.
- 日本糖尿病学会. 糖尿病診療ガイドライン2024. 南江堂. 2024.
- SUSTAIN試験グループ. セマグルチドの2型糖尿病に対する効果と安全性. N Engl J Med. 2016-2018.
- 横浜市立大学医学部. 日本人における GLP-1受容体作動薬の効果比較研究. 2023.
- 厚生労働省. 薬価基準一覧. 令和7年4月版. 2025.
- 日本肥満学会. 肥満症診療ガイドライン2022. ライフサイエンス出版. 2022.
免責事項 本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断や治療に関するアドバイスではありません。具体的な治療については、必ず医師にご相談ください。
最終更新日: 2025年8月26日
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務