皮膚にできる小さな盛り上がりである「イボ」は、誰にでも起こりうる身近な皮膚疾患です。しかし、イボには様々な種類があり、それぞれ原因や治療法が異なることをご存知でしょうか。適切な治療を受けるためには、まずイボの種類を正しく理解することが大切です。本記事では、代表的なイボの種類とその特徴について、写真で見るような詳細な説明とともに解説いたします。

イボとは?基本的な知識
イボの定義
イボ(疣贅:ゆうぜい)とは、皮膚の一部が盛り上がってできる小さなできもののことを指します。医学的には「疣贅」と呼ばれ、大きさは主に5mm~1cm程度のものが一般的です。イボは皮膚表面から隆起した病変として現れ、その形状や色調は種類によって大きく異なります。
イボの分類
イボは大きく分けて以下の2つのカテゴリーに分類されます:
1. ウイルス性のイボ(感染性)
- ヒトパピローマウイルス(HPV)による感染
- 伝染性軟属腫ウイルスによる感染(水いぼ)
- 人から人へ、または自分の他の部位へ感染する可能性がある
2. 非ウイルス性のイボ(非感染性)
- 紫外線や皮膚の老化によるもの
- 遺伝的要因によるもの
- 機械的刺激によるもの
- 人に感染することはない
イボの種類と特徴的な見た目
1. 尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)
基本情報
- 原因:ヒトパピローマウイルス(HPV)2型、57型など
- 好発部位:手指、足、肘、膝など外傷を受けやすい部位
- 年齢層:子供から大人まで幅広い年齢層
見た目の特徴
尋常性疣贅は最も一般的なウイルス性イボです。写真で見ると以下のような特徴があります:
- 形状:皮膚から丸みを帯びて盛り上がった硬いしこり
- 大きさ:数mm~1cm程度、時には数cmの大きなものも
- 表面:ザラザラした質感で、カリフラワー状の凹凸がある
- 色調:肌色からやや白っぽい色調
- 特徴的所見:表面を少し削ると、黒い点々(毛細血管)が見える
手指の背側や指先によくできるため、日常生活で目につきやすい位置に発生します。複数個が集まって融合し、面状に広がることもあります。痛みやかゆみはほとんどありませんが、触るとザラザラした感触があります。
2. 足底疣贅(そくていゆうぜい)
基本情報
- 原因:ヒトパピローマウイルス(HPV)1型、63型など
- 好発部位:足裏、特に体重がかかる部分
- 特徴:体重圧迫により平坦化しやすい
見た目の特徴
足底疣贅は足の裏にできる特殊なタイプのイボです:
- 形状:体重により圧迫されるため、あまり隆起せず平坦
- 大きさ:数mm~数cm、時に大きな面状のものも
- 表面:硬くザラザラしており、角質が厚くなっている
- 色調:黄白色~灰白色
- 特徴的所見:表面を削ると黒い点々が見え、出血しやすい
魚の目(鶏眼)やタコ(胼胝)と間違われやすいですが、イボには中心に芯がなく、削ると出血する点が鑑別のポイントです。痛みを伴うことがあり、歩行時に違和感を感じることもあります。
3. 扁平疣贅(へんぺいゆうぜい)・青年性扁平疣贅
基本情報
- 原因:ヒトパピローマウイルス(HPV)3型、10型、28型など
- 好発部位:顔面、前腕、手の甲
- 好発年齢:10~30歳代の若年者、特に女性
見た目の特徴
扁平疣贅は平らで目立ちにくいイボです:
- 形状:皮膚面からわずかに隆起した平坦な病変
- 大きさ:2~5mm程度の小さなもの
- 表面:滑らかで光沢がある
- 色調:肌色、淡褐色、時に黄褐色
- 分布:多発することが多く、数十個から数百個できることも
顔面にできると、シミや色素沈着と間違われることがあります。しかし、よく観察すると軽度の隆起があり、表面に細かい鱗屑(うろこ状の皮膚片)が付着していることがあります。かゆみを伴うことは少なく、多くは無症状です。
4. 水いぼ(伝染性軟属腫)
基本情報
- 原因:伝染性軟属腫ウイルス(molluscum contagiosum virus)
- 好発部位:体幹、四肢、腋窩など
- 好発年齢:乳幼児、学童期の子供
見た目の特徴
水いぼは子供に多い特徴的なイボです:
- 形状:半球状に隆起したドーム型の病変
- 大きさ:2~5mm程度
- 表面:滑らかで光沢があり、中央にへそのような陥凹
- 色調:真珠様光沢のある肌色~淡紅色
- 内容物:中心を圧迫すると白いチーズ様の内容物が出る
プールや入浴施設での感染が多く、アトピー性皮膚炎の子供に好発します。通常は無症状ですが、時にかゆみを伴うことがあります。自然治癒することが多いですが、感染拡大防止のため除去されることもあります。
5. 老人性疣贅(脂漏性角化症)
基本情報
- 原因:紫外線による皮膚の老化、遺伝的要因
- 好発部位:顔面、頭部、体幹
- 好発年齢:40歳以降、高齢者に多い
見た目の特徴
老人性疣贅は加齢に伴う良性の皮膚腫瘍です:
- 形状:平坦なものから隆起したものまで様々
- 大きさ:数mm~数cm、時に非常に大きなものも
- 表面:ざらざらした角化が強く、時に脂っぽい
- 色調:淡褐色~黒褐色、時に黒色
- 特徴:「貼り付けたような」外観
年齢とともに数も大きさも増加する傾向があります。表面は角化が強く、時に厚いかさぶた状になります。悪性化することは稀ですが、急速に変化する場合は皮膚科での精査が必要です。
6. 軟性線維腫(アクロコルドン)・スキンタグ
基本情報
- 原因:加齢、摩擦、肥満、糖尿病などとの関連
- 好発部位:首、腋窩、鼠径部など摩擦の多い部位
- 好発年齢:中年以降
見た目の特徴
軟性線維腫は柔らかいイボ様病変です:
- 形状:有茎性(茎がある)で垂れ下がったような形
- 大きさ:数mm~1cm程度
- 表面:滑らかで柔らかい
- 色調:肌色~淡褐色
- 特徴:茎をねじると容易に取れそうな外観
首の周りに多発することが多く、「首いぼ」とも呼ばれます。摩擦により炎症を起こすことがあり、時に痛みやかゆみを伴います。悪性化することはありませんが、美容的な理由で除去を希望される方が多い病変です。
7. 尖圭コンジローマ
基本情報
- 原因:ヒトパピローマウイルス(HPV)6型、11型
- 好発部位:外陰部、肛門周囲
- 感染経路:性的接触
見た目の特徴
尖圭コンジローマは性器周辺にできるイボです:
- 形状:初期は小さな尖った形、進行するとカリフラワー状
- 大きさ:数mm~数cm
- 表面:湿潤してざらざらした感触
- 色調:肌色~淡紅色、時に白色
- 特徴:多発し、融合してニワトリのトサカ状になることも
性感染症の一種として扱われ、パートナーへの感染リスクがあります。無症状のことが多いですが、かゆみや痛みを伴うことがあります。女性では膣内にできることもあり、発見が遅れる場合があります。
イボができる原因とメカニズム
ウイルス性イボの感染メカニズム
ウイルス性イボの最も一般的な原因であるヒトパピローマウイルス(HPV)は、現在150種類以上が確認されています。これらのウイルスは皮膚や粘膜の小さな傷から侵入し、基底細胞に感染します。
感染の過程
- ウイルスの侵入:皮膚の微細な傷からHPVが侵入
- 細胞感染:基底細胞のDNAにウイルスが組み込まれる
- 細胞増殖:感染細胞が異常増殖し、イボを形成
- ウイルス産生:成熟した細胞からウイルスが放出
感染経路
- 直接接触:イボのある人との皮膚接触
- 間接接触:タオル、スリッパ、足拭きマットなどの共用
- 自己感染:自分のイボを触った手で他の部位を触る
- 環境感染:プール、銭湯、ジムなどの湿った環境
感染リスクを高める要因
皮膚の状態
- 小さな傷や擦り傷
- 乾燥肌
- アトピー性皮膚炎
- 角質の薄い部位
免疫状態
- 免疫力の低下
- ストレス
- 疲労
- 栄養不良
- 免疫抑制剤の使用
環境要因
- 湿度の高い環境
- 公共施設の利用
- 素足での歩行
- 密接な接触が多い環境
非ウイルス性イボの原因
老人性疣贅の原因
- 紫外線による皮膚老化:長年の紫外線曝露
- 遺伝的要因:家族歴がある場合
- 皮膚の老化:コラーゲンの減少、細胞更新の低下
軟性線維腫の原因
- 機械的刺激:衣服による摩擦
- 加齢:皮膚の弾性低下
- 肥満:皮膚同士の摩擦増加
- 糖尿病:代謝異常との関連
- 妊娠:ホルモンバランスの変化
イボの診断について
診断の重要性
イボの正確な診断は適切な治療法選択のために極めて重要です。見た目が似ていても原因や治療法が全く異なる場合があり、誤った治療を行うと症状が悪化したり、感染が拡大したりする可能性があります。
診断方法
視診
皮膚科医による詳細な視診が診断の基本です。以下の点を観察します:
- 形状:隆起の程度、輪郭の形状
- 大きさ:病変の大きさと分布
- 表面性状:滑らか、ざらざら、角化の程度
- 色調:肌色、褐色、黒色などの色調
- 分布:単発、多発、配列パターン
拡大鏡検査(ダーモスコピー)
皮膚用の拡大鏡を使用して、より詳細な観察を行います:
- 表面の微細構造の確認
- 血管パターンの観察
- 色素分布の評価
- 角質の状態の確認
削り検査
必要に応じて、皮膚の最表層を薄く削って内部構造を確認します:
- ウイルス性イボ:黒い点々(毛細血管)が見える
- 魚の目:中心に硬い芯がある
- タコ:均一な角質肥厚
鑑別診断
イボと間違われやすい疾患との鑑別が重要です:
良性疾患との鑑別
- 魚の目(鶏眼):中心に芯があり、圧痛がある
- タコ(胼胝):均一な角質肥厚、痛みは少ない
- ほくろ(色素性母斑):色素沈着が主体
- 粉瘤:皮下に嚢胞があり、開口部が見える
悪性疾患との鑑別
- 基底細胞癌:真珠様光沢、辺縁の隆起
- 有棘細胞癌:急速な増大、潰瘍形成
- 悪性黒色腫:色調の不均一、形状の非対称
診断時の注意点
医師の判断が必要な症状
- 急速に大きくなるイボ
- 出血しやすいイボ
- 色調が急に変化したイボ
- 潰瘍を形成したイボ
- 非対称で境界不明瞭なイボ
これらの症状がある場合は、悪性疾患の可能性も考慮して、詳細な検査が必要になります。
イボの治療法
治療方針の決定
イボの治療法選択は以下の要因を総合的に考慮して決定されます:
- イボの種類と大きさ
- 発生部位と数
- 患者の年齢と全身状態
- 症状の有無
- 美容的な要求
- 患者の希望
主要な治療法
1. 液体窒素による冷凍凝固療法
概要 -196℃の液体窒素を用いてイボを凍結し、ウイルスに感染した細胞を破壊する治療法です。日本皮膚科学会のガイドラインで推奨度A(行うよう強く勧められる)とされています。
治療方法
- 液体窒素を綿棒に浸す
- イボとその周囲に3~4回凍結と解凍を繰り返す
- 1~2週間間隔で治療を継続
メカニズム
- 直接的細胞破壊:ウイルス感染細胞の凍結による破壊
- 免疫反応誘導:冷凍によってウイルスに対する免疫反応を活性化
メリット
- 高い治療効果
- 外来で簡単に施行可能
- 副作用が比較的少ない
- 保険適用
デメリット
- 治療時の痛み
- 色素沈着が残ることがある
- 複数回の治療が必要
- 水ぶくれができることがある
2. 外用薬治療
サリチル酸絆創膏(スピール膏)
- メカニズム:角質を剥がし、ウイルス感染組織を除去
- 使用方法:イボの大きさに切って2~3日間貼付
- 適応:足底疣贅、角化の強いイボ
- 推奨度:A(日本皮膚科学会ガイドライン)
イミキモドクリーム(ベセルナクリーム)
- メカニズム:免疫反応を活性化してウイルスを排除
- 使用方法:週3回就寝前に塗布
- 適応:尖圭コンジローマ、皮膚の薄い部位のイボ
- 注意点:炎症反応が強く出ることがある
活性型ビタミンD3外用薬
- メカニズム:細胞増殖抑制、角化抑制
- 使用方法:密封療法と併用
- 適応:難治性イボ
- 副作用:皮膚刺激、カルシウム代謝異常
3. 内服薬治療
ヨクイニン(ハトムギエキス)
- メカニズム:免疫力向上によるウイルス排除
- 用法用量:1日6~12g を分割投与
- 推奨度:B(日本皮膚科学会ガイドライン)
- 特徴:副作用が少なく、長期服用可能
シメチジン
- メカニズム:細胞性免疫の活性化
- 用法用量:小児に対して20~40mg/kg/日
- 適応:小児の多発性イボ
- 注意点:保険適用外
4. 手術的治療
電気焼灼術
- 方法:電気メスでイボを焼灼・切除
- 適応:大きなイボ、難治性イボ
- メリット:確実な除去
- デメリット:瘢痕が残る可能性
炭酸ガスレーザー
- 方法:レーザーでイボを蒸散
- 適応:美容的配慮が必要な部位
- メリット:精密な治療、出血が少ない
- デメリット:保険適用外、費用が高い
外科的切除
- 方法:メスでイボを切除し縫合
- 適応:悪性が疑われる場合、大きなイボ
- メリット:病理組織検査が可能
- デメリット:瘢痕が残る
5. その他の治療法
モノクロロ酢酸外用
- メカニズム:化学的な組織破壊
- 適応:小児のイボ(液体窒素より痛みが少ない)
- 注意点:正常皮膚への傷害リスク
ブレオマイシン局注
- メカニズム:抗がん剤による細胞破壊
- 適応:難治性イボ
- 注意点:副作用のリスク、保険適用外
治療効果と期間
治療期間の目安
- 手指のイボ:2~4ヶ月
- 足底疣贅:6ヶ月~1年以上
- 扁平疣贅:3~6ヶ月
- 水いぼ:自然治癒待ちの場合6ヶ月~2年
治療効果に影響する因子
- イボの大きさ:大きいほど治療期間が長い
- 発生部位:皮膚の厚い部位は治りにくい
- 患者の年齢:若年者の方が治りやすい
- 免疫状態:免疫力が高いほど効果的
- ウイルスの型:HPVの型により治療反応が異なる
治療の合併症と対策
一般的な合併症
- 色素沈着:治療後3~6ヶ月で改善することが多い
- 色素脱失:まれに永続的な白斑が残る
- 瘢痕形成:過度な治療により瘢痕が形成される
- 感染:治療部位の細菌感染
合併症の予防と対策
- 適切な治療強度の調整
- 治療後の適切なケア
- 感染予防のための清潔保持
- 紫外線防止による色素沈着の予防
イボの予防法
基本的な予防原則
イボの予防は感染リスクを減らすことが基本となります。特にウイルス性イボは感染症であるため、日常生活での注意が重要です。
具体的な予防方法
1. 皮膚の健康維持
適切なスキンケア
- 毎日の手洗いと清潔保持
- 適度な保湿で皮膚バリア機能を維持
- 過度な洗浄や摩擦を避ける
- 傷やささくれの適切な処置
皮膚の外傷予防
- 爪を短く清潔に保つ
- ささくれや逆剥けの適切な処置
- 手荒れの予防と治療
- 靴擦れや足の外傷の予防
2. 感染経路の遮断
直接接触の回避
- イボのある人との素肌の接触を避ける
- 自分のイボを触らない、触った場合は手洗い
- 家族間でのタオルや衣類の共用を避ける
間接接触の予防
- 公共施設でのスリッパやタオルの共用を避ける
- プールや銭湯では足拭きマットに注意
- ジムや更衣室では裸足を避ける
- 共用の足ふきマットの代わりに個人のタオルを使用
3. 免疫力の維持・向上
生活習慣の改善
- 十分な睡眠時間の確保
- バランスの取れた栄養摂取
- 適度な運動習慣
- ストレス管理
体調管理
- 風邪や感染症の予防
- 慢性疾患の適切な管理
- 免疫抑制剤使用時の注意
- 定期的な健康チェック
4. 環境整備
家庭環境
- 適切な湿度の管理
- 清潔な環境の維持
- 個人用品の分離使用
- 感染者がいる場合の隔離対策
公共施設利用時
- 素足での歩行を避ける
- 個人用のタオルやスリッパの持参
- 利用後の手洗いと消毒
- 傷がある場合の施設利用の控え
特殊な状況での予防
水いぼの予防(小児)
- プールや集団入浴の際の注意
- アトピー性皮膚炎の適切な治療
- 掻爬による皮膚損傷の予防
- 集団生活での感染対策
尖圭コンジローマの予防
- 安全な性行動の実践
- HPVワクチンの接種検討
- パートナーとの感染状況の確認
- 定期的な検診の受診
予防の限界と注意点
完全な予防の困難性
ヒトパピローマウイルスは非常に身近に存在するウイルスであり、完全な感染予防は困難です。健康な人でも一度は感染することが多く、多くの場合は免疫力により自然治癒します。
過度な予防の弊害
過度な清潔志向や接触回避は、社会生活に支障をきたす可能性があります。合理的な範囲での予防を心がけることが大切です。

よくある質問と回答
A: ウイルス性イボの場合、免疫力により自然治癒することがあります。小児では約2/3が2年以内に自然治癒しますが、大人では時間がかかり、数年以上かかることも珍しくありません。しかし、治療せずに放置すると数が増えたり、他人への感染リスクがあるため、皮膚科での相談をお勧めします。
A: 市販のイボ治療薬にはサリチル酸が含まれており、一定の効果が期待できます。しかし、使用方法を誤ると正常な皮膚を傷つけたり、イボが悪化することがあります。また、イボの種類によっては効果がない場合もあるため、まず皮膚科で正しい診断を受けることが重要です。
A: 液体窒素治療は-196℃の極低温で組織を凍結するため、治療中は痛みを伴います。痛みの程度は個人差がありますが、多くの患者さんが我慢できる範囲です。治療後も数時間ジンジンした痛みが続くことがありますが、通常は市販の鎮痛剤で対応可能です。
A: 液体窒素などの治療後に一時的な色素沈着が生じることがあります。多くの場合、3~6ヶ月で自然に改善しますが、まれに永続的に残ることもあります。色素沈着を最小限にするためには、治療後の紫外線防止が重要です。
A: 妊娠中は胎児への影響を考慮して、治療法が制限される場合があります。液体窒素治療は比較的安全ですが、外用薬の中には妊娠中に使用できないものもあります。妊娠中のイボ治療については、必ず皮膚科医と産婦人科医に相談してください。
A: 一般的なウイルス性イボ(尋常性疣贅など)が悪性化することは極めて稀です。しかし、一部のHPV型は癌の原因となることが知られており、尖圭コンジローマでは性器癌のリスクがあります。また、老人性疣贅は稀に悪性化することがあるため、急速に変化するイボは皮膚科での精査が必要です。
Q7: 家族にイボがある場合、どのような注意が必要ですか?
A: ウイルス性イボは感染性があるため、以下の注意が必要です:
- タオルや衣類の共用を避ける
- イボを触った後は手洗いを徹底する
- 公共の足拭きマットなどは個人のタオルを使用
- 家族全員の手洗いを励行
- イボのある部位は絆創膏などで覆う
Q8: プールや温泉でイボに感染しますか?
A: プールや温泉の水自体からの感染リスクは低いですが、足拭きマットや更衣室の床、スリッパなどを介した感染の可能性があります。これらの施設を利用する際は、素足での歩行を避け、個人用のタオルやスリッパを使用することをお勧めします。
Q9: イボの治療中に注意することはありますか?
A: 治療中は以下の点に注意してください:
- 治療部位を清潔に保つ
- 過度な刺激や摩擦を避ける
- かさぶたを無理に剥がさない
- 紫外線防止を心がける
- 処方された薬は指示通りに使用
- 定期的な受診を継続
Q10: レーザー治療と液体窒素、どちらが良いですか?
A: それぞれに特徴があります:
液体窒素
- 保険適用で費用が安い
- 多くの医療機関で施行可能
- 治療期間が長い場合がある
レーザー治療
- 精密な治療が可能
- 周囲組織への損傷が少ない
- 自費診療で費用が高い
- 色素沈着のリスクが低い
最適な治療法は、イボの種類、大きさ、部位、患者さんの希望などを総合的に考慮して決定されます。
まとめ
イボは日常的によく見られる皮膚疾患ですが、その種類は多岐にわたり、原因や治療法も様々です。適切な治療を受けるためには、まず正確な診断が不可欠です。
重要なポイント
- 早期受診の重要性
- イボかどうかの判断は医師に委ねる
- 自己判断での治療は症状悪化のリスク
- 早期治療により感染拡大を防ぐ
- 治療の継続性
- イボの治療には時間がかかることが多い
- 根気強い通院と治療の継続が必要
- 治療中断は再発や悪化の原因
- 予防の重要性
- 日常的な手洗いと清潔保持
- 皮膚の健康維持
- 感染経路の遮断
- 専門医による管理
- 皮膚科専門医による適切な診断と治療
- 治療効果の評価と治療法の調整
- 合併症の早期発見と対応
イボでお悩みの方は、まず皮膚科専門医にご相談いただき、適切な診断と治療を受けることをお勧めします。アイシークリニック上野院では、イボの診断から治療まで、患者さん一人ひとりの状態に応じた最適な医療を提供いたします。
参考文献
- 日本皮膚科学会尋常性疣贅診療ガイドライン策定委員会. 尋常性疣贅診療ガイドライン2019(第1版). 日本皮膚科学会雑誌. 2019; 129(6): 1265-1292.
- 公益社団法人日本皮膚科学会. イボとミズイボ、ウオノメとタコ─どう違うのですか?─ 皮膚科Q&A. Available at: https://www.dermatol.or.jp
- MSDマニュアル家庭版. 疣贅(いぼ)- 皮膚の病気. Available at: https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home
- 田辺三菱製薬株式会社. 尋常性疣贅(ウイルス性イボ)の症状、原因、治療法. ヒフノコトサイト. Available at: https://hc.mt-pharma.co.jp
- 日本皮膚科学会. 各種皮膚疾患の診療ガイドライン. Available at: https://www.dermatol.or.jp/modules/guideline/
- 厚生労働省. 感染症情報. Available at: https://www.mhlw.go.jp
- Sterling JC, Handfield-Jones S, Hudson PM. Guidelines for the management of cutaneous warts. British Journal of Dermatology. 2001; 144(1): 4-11.
- Lipke MM. An armamentarium of wart treatments. Clinical Medicine & Research. 2006; 4(4): 273-293.
図表1:イボの分類と特徴一覧
イボの種類 | 原因 | 好発部位 | 特徴的外観 | 感染性 |
---|---|---|---|---|
尋常性疣贅 | HPV 2, 57型 | 手指、足 | ザラザラした隆起 | あり |
足底疣贅 | HPV 1, 63型 | 足裏 | 平坦、黒い点々 | あり |
扁平疣贅 | HPV 3, 10型 | 顔面、前腕 | 平坦、滑らか | あり |
水いぼ | 軟属腫ウイルス | 体幹、四肢 | ドーム状、中央陥凹 | あり |
老人性疣贅 | 紫外線、加齢 | 顔面、体幹 | 角化強い、貼付様 | なし |
軟性線維腫 | 摩擦、加齢 | 首、腋窩 | 有茎性、柔らか | なし |
尖圭コンジローマ | HPV 6, 11型 | 外陰部 | カリフラワー状 | あり(性感染) |
図表2:治療法の比較
治療法 | 推奨度* | 保険適用 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|---|
液体窒素 | A | あり | 高い効果、簡便 | 痛み、色素沈着 |
サリチル酸 | A | あり | 安全、家庭で使用可 | 効果まで時間 |
ヨクイニン | B | あり | 副作用少ない | 効果個人差大 |
レーザー | C1 | なし | 精密、美容的良好 | 高額、設備限定 |
外科切除 | C1 | あり | 確実な除去 | 瘢痕形成 |
*日本皮膚科学会ガイドライン推奨度:A(強く推奨)、B(推奨)、C1(行ってもよい)
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務