脂漏性角化症「自分で取る」のは危険!安全で効果的な治療法を専門医が解説

はじめに

年齢を重ねると、顔や首、手の甲などにぽつぽつとした茶色や黒色の盛り上がりができることがあります。これらの多くは「脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)」と呼ばれる良性の皮膚腫瘍です。見た目が気になって「自分で取れないか」と考える方も多いのですが、セルフケアでの除去は非常に危険です。

この記事では、脂漏性角化症の正しい知識と、なぜ自分で取ってはいけないのか、そして安全で効果的な治療法について、アイシークリニック上野院の医師が詳しく解説します。

脂漏性角化症とは

定義と基本情報

脂漏性角化症は、皮膚の表皮基底細胞が異常増殖することで発生する良性の皮膚腫瘍です。「老人性イボ」「老人性疣贅(ろうじんせいゆうぜい)」とも呼ばれますが、実際にはウイルス性のイボとは異なる疾患です。

疫学データ

脂漏性角化症は非常に一般的な皮膚疾患で、以下のような特徴があります:

  • 発症年齢:早い人で20代後半から出現
  • 有病率:40歳以上の成人の約80%以上に見られる
  • 高齢者での頻度:80歳以上では、ほぼ全員に何らかの脂漏性角化症が認められる
  • 性別差:男女差はほとんどない

医学的分類

脂漏性角化症は、皮膚病理組織学的に以下のように分類されます:

  1. 肥厚型:表皮が厚くなっているタイプ
  2. 角化型:角質層が過度に厚くなっているタイプ
  3. 網状型(腺様型):表皮が網目状に増殖しているタイプ
  4. クローン型:色素細胞の増殖が見られるタイプ
  5. 被刺激型:慢性的な刺激により形成されたタイプ
  6. 鋸歯状型:表皮が鋸歯状に増殖しているタイプ

症状と特徴

外観の特徴

脂漏性角化症の外観には以下のような特徴があります:

色調

  • 肌色から褐色、黒色まで様々
  • 健康な皮膚色に近いものから濃い黒色まで幅広い
  • 同一人物でも病変によって色調が異なることが多い

大きさ

  • 数ミリから2~3センチ程度
  • 時間とともに徐々に大きくなる傾向
  • 個人差が非常に大きい

形状と質感

  • わずかに盛り上がったものから、明らかに突出したしこり状のものまで
  • 表面はざらざらしており、硬い質感
  • 「張り付いたような」外観
  • 鱗屑(りんせつ)が付着していることもある

好発部位

脂漏性角化症ができやすい部位は以下の通りです:

紫外線を浴びやすい部位

  • 顔面(特にこめかみ、頬)
  • 頭部
  • 手の甲
  • デコルテ(胸元)
  • 背中の肩周辺

紫外線の影響が少ない部位

  • 脇の下
  • 脇腹
  • 腹部
  • そけい部(股)
  • 陰部
  • 大腿(太もも)

注意点として、手のひらと足の裏には脂漏性角化症はできません。

自覚症状

一般的に、脂漏性角化症は以下のような特徴があります:

  • 無症状:多くの場合、痛みやかゆみはない
  • 機械的刺激による症状:衣服や帽子との摩擦により、まれに炎症や出血を起こすことがある
  • 美容的な悩み:見た目の問題で悩む方が多い

類似疾患との鑑別

脂漏性角化症と見た目が似ている疾患には以下があります:

良性疾患

  • 老人性色素斑(平坦なシミ)
  • ほくろ(色素性母斑)
  • 尋常性疣贅(ウイルス性イボ)

悪性疾患

  • 悪性黒色腫(メラノーマ)
  • 基底細胞癌
  • 日光角化症(前癌病変)

これらの鑑別には専門的な診断が必要で、自己判断は非常に危険です。

原因

主要な原因因子

脂漏性角化症の発症には、複数の要因が関与していると考えられています。

1. 加齢(皮膚の老化)

メカニズム

  • 皮膚の老化により、表皮基底細胞の遺伝子に変化が蓄積
  • 細胞分裂の制御機能が低下
  • ターンオーバーサイクルの乱れ

年齢との関係

  • 20代後半:初期の小さな病変が出現し始める
  • 40代以降:明らかな脂漏性角化症として認識されるものが増加
  • 80代以上:ほぼ全員に何らかの病変が存在

2. 紫外線(UV)の影響

紫外線による皮膚ダメージ

  • 長期間にわたる紫外線曝露により、表皮基底細胞の遺伝子に異常が発生
  • メラノサイト(色素細胞)の刺激により、大量のメラニンが産生
  • 表皮の異常増殖と色素沈着が同時に進行

日光角化症からの進展

  • 平坦なシミ(老人性色素斑)から脂漏性角化症に発展するケースが多い
  • 「シミの一部がざらついてきた」という訴えで受診される患者さんが多い

3. 遺伝的要因

家族歴の影響

  • 同じ年齢でも、脂漏性角化症ができる数や大きさに大きな個人差
  • 家族に脂漏性角化症が多い人は、発症リスクが高い
  • 若年発症例では、遺伝的要因の関与がより強いと考えられる

遺伝的素因の特徴

  • 体質的に皮膚の老化が早い人
  • メラニン産生能力が高い人
  • 皮膚の修復能力が低い人

4. その他の要因

物理的刺激

  • 慢性的な摩擦や外傷
  • やけどや怪我の瘢痕部位
  • 反復する機械的刺激

ホルモンバランス

  • 加齢によるホルモン変化
  • 免疫機能の変化
  • 皮膚の代謝機能の低下

発症のメカニズム

脂漏性角化症の発症は、以下のような段階を経て進行すると考えられています:

  1. 初期段階:紫外線や加齢により表皮基底細胞の遺伝子に変化
  2. 進行段階:異常細胞の増殖と色素沈着
  3. 完成段階:隆起性病変の形成

診断方法

臨床診断

視診

経験豊富な皮膚科医であれば、多くの場合、視診だけで脂漏性角化症の診断が可能です。診断のポイントは以下の通りです:

典型的な外観

  • 褐色~黒色の隆起性結節
  • 表面は疣贅状で硬い質感
  • 境界明瞭な病変
  • 「貼り付いたような」外観

ダーモスコピー検査

ダーモスコピー(拡大鏡)を用いることで、より正確な診断が可能になります。

脂漏性角化症に特徴的な所見

  • Milia-like cysts:小さな白色の嚢胞様構造
  • Comedo-like openings:面ぽうに似た開口部
  • Network pattern:網目状のパターン
  • Fissures and ridges:溝と隆起の構造

悪性腫瘍との鑑別点

  • 悪性黒色腫:非対称性、境界不明瞭、色調の不均一、直径の変化
  • 基底細胞癌:真珠様光沢、血管拡張、潰瘍形成

組織学的検査

皮膚生検の適応

以下のような場合には、確定診断のために皮膚生検(組織検査)が推奨されます:

絶対的適応

  • 悪性腫瘍が疑われる場合
  • 急激な変化(サイズ、色調、形状)がある場合
  • 出血や潰瘍形成がある場合

相対的適応

  • 非典型的な外観を呈する場合
  • 他の皮膚疾患との鑑別が困難な場合
  • 患者さんや医師が不安を感じる場合

病理組織学的所見

脂漏性角化症の病理組織学的特徴:

表皮の変化

  • 表皮の肥厚(acanthosis)
  • 角化細胞の増殖
  • 基底細胞に似た小型細胞の集積

色素の変化

  • メラニンの増加
  • 色素細胞の活性化
  • 角質層内への色素沈着

鑑別診断が重要な理由

正確な診断が重要な理由は以下の通りです:

  1. 治療方針の決定:疾患によって最適な治療法が異なる
  2. 悪性腫瘍の除外:皮膚がんの可能性を確実に除外する必要
  3. 予後の予測:良性疾患であることの確認
  4. 患者さんの不安解消:正確な診断による安心感の提供

「自分で取る」ことの危険性

なぜ自分で取ってはいけないのか

脂漏性角化症を「自分で取る」ことは、以下の理由から極めて危険で、強く推奨されません。

1. 診断の問題

誤診のリスク

  • 脂漏性角化症に見える病変が、実は悪性腫瘍の可能性
  • 悪性黒色腫(メラノーマ)の初期は脂漏性角化症と見分けがつかないことがある
  • 基底細胞癌も類似した外観を呈することがある

見落としの危険性

  • 素人判断による重大な疾患の見落とし
  • 早期発見・早期治療の機会を逸する
  • 適切な治療開始の遅れによる予後の悪化

2. 治療に関する問題

不完全な除去

  • 表面のみの除去では根本的な解決にならない
  • 深部に残存した病変からの再発
  • より大きな病変として再発する可能性

二次的な合併症

  • 感染症のリスク
  • 瘢痕(きずあと)の形成
  • 色素沈着や色素脱失
  • ケロイドの形成

3. 具体的な危険な行為

以下のような行為は絶対に避けてください:

物理的な除去

  • 爪で引っかく、削る
  • カッターやハサミでの切除
  • ピンセットでの摘出

化学的な処理

  • 市販の「イボ取り」薬品の使用
  • 木酢液などの民間療法
  • 強酸や強アルカリ性物質の使用

熱処理

  • ライターやマッチでの焼却
  • ドライアイスの直接接触
  • 熱した金属での焼灼

市販薬の効果について

イボ取り市販薬の限界

ウイルス性イボとの違い

  • 市販の「イボ取り」薬は、主にウイルス性疣贅を対象としている
  • 脂漏性角化症はウイルス性ではないため、これらの薬剤は効果がない
  • サリチル酸などの成分では、根本的な改善は期待できない

効果を感じる場合の説明

  • 表面の角質が柔らかくなることで、一時的に改善したように感じることがある
  • しかし、根本的な病変は残存しており、完全な治癒には至らない
  • 自然脱落との区別がつかない場合もある

ヨクイニン(漢方薬)について

ヨクイニンの作用機序

  • ハトムギの種子から抽出された成分
  • ウイルス性疣贅に対する免疫調整作用
  • 脂漏性角化症に対する科学的根拠は不十分

限界と注意点

  • 脂漏性角化症への効果は科学的に証明されていない
  • 改善を感じる場合も、自然経過との区別が困難
  • 副作用や他の薬剤との相互作用の可能性

セルフケアによる合併症

感染症

細菌感染

  • 黄色ブドウ球菌、連鎖球菌などによる化膿
  • 蜂窩織炎(ほうかしきえん)への進展リスク
  • 抗生物質治療が必要となる場合

真菌感染

  • 湿潤環境での真菌繁殖
  • 治療の長期化
  • 抗真菌薬による治療の必要性

瘢痕形成

肥厚性瘢痕

  • 過度な組織修復による盛り上がった傷跡
  • 元の病変よりも目立つ結果となることがある
  • 治療が困難な場合が多い

ケロイド

  • 体質的にケロイドを形成しやすい人では特に危険
  • 一度形成されると治療が非常に困難
  • 見た目の問題が深刻化

色素異常

炎症後色素沈着

  • 炎症により周囲の皮膚に色素沈着
  • 元の病変よりも広範囲に及ぶことがある
  • 改善に数ヶ月から数年を要する

色素脱失

  • 過度な刺激により色素細胞が破壊
  • 白斑状の色素脱失
  • 永続的な変化となる可能性

法的・倫理的問題

医師法との関係

医療行為の定義

  • 皮膚の病変除去は医療行為に該当
  • 資格のない者が行うことは医師法違反の可能性
  • 他人に対して行った場合は刑法違反となる可能性

責任の所在

  • セルフケアによる合併症は自己責任
  • 医療保険の適用外となる場合がある
  • 労災等の補償対象外となる可能性

医療機関での治療法

治療方針の決定

治療の必要性

脂漏性角化症は良性腫瘍であるため、必ずしも治療が必要ではありません。しかし、以下のような場合には治療を検討します:

治療を推奨するケース

  • 見た目が気になる場合
  • 衣服や帽子との摩擦で炎症を起こす場合
  • 出血やかゆみなどの症状がある場合
  • 悪性腫瘍との鑑別が必要な場合
  • 患者さんが強く希望する場合

経過観察で良いケース

  • 小さくて目立たない病変
  • 症状のない病変
  • 患者さんが治療を望まない場合

治療法選択の考慮事項

病変の特徴

  • サイズ(大きさ)
  • 隆起の程度
  • 色調の濃さ
  • 数の多少

患者さんの背景

  • 年齢
  • 職業
  • 希望する仕上がり
  • 治療にかけられる時間
  • 経済的な制約

医学的要因

  • アレルギーの有無
  • 既往歴
  • 現在服用中の薬剤
  • 皮膚の状態

主な治療法

1. 液体窒素冷凍療法

治療原理

  • マイナス196℃の液体窒素で病変を急速冷凍
  • 細胞内氷晶形成による細胞破壊
  • 凍傷による組織の壊死と自然脱落

治療手順

  1. 患部の消毒
  2. 液体窒素をスプレーまたは綿棒で塗布
  3. 凍結・融解を3回程度繰り返し
  4. 治療後のケア指導

メリット

  • 保険適用で費用が安価(3割負担で1回数百円~1,000円程度)
  • 麻酔が不要
  • 簡便で多くの医療機関で実施可能
  • 外来での日帰り治療

デメリット

  • 強い痛みを伴う
  • 複数回の治療が必要(1-2週間間隔)
  • 炎症後色素沈着のリスク
  • 治療後半年~2年程度のシミが残ることがある

治療成功率

  • 国際的に報告されている成功率:約85-90%
  • 病変の大きさや深さにより成功率は変動

適応となる患者さん

  • 費用を抑えたい方
  • 小さな病変の方
  • 色素沈着を許容できる方

2. 炭酸ガスレーザー治療

治療原理

  • 10,600nmの赤外線レーザーによる組織の蒸散
  • 水分を瞬時に蒸発させることで組織を除去
  • 周囲組織への熱損傷を最小限に抑制

使用機器

  • 最新型炭酸ガスレーザー(例:AcuPulse™)
  • スキャナ付きシステムによる精密制御
  • 厚生労働省認可の安全性・効果の高い機械

治療手順

  1. 局所麻酔(注射または外用麻酔)
  2. 眼球保護
  3. レーザー照射による病変の蒸散
  4. 止血処置
  5. 創部保護(軟膏・テープ処置)

メリット

  • 1回の治療で完全除去可能
  • 出血が少ない
  • 正確な深度制御
  • 周囲組織への影響が少ない
  • 美容的に優れた仕上がり

デメリット

  • 自由診療のため費用が高額
  • 局所麻酔が必要
  • 術後1-2週間のケアが必要
  • 一時的な赤みや腫れ

治療成功率

  • ほぼ100%の除去率
  • 再発率は極めて低い

適応となる患者さん

  • きれいな仕上がりを重視する方
  • 顔などの目立つ部位の病変
  • 大きな病変や隆起の強い病変
  • 1回での完全除去を希望する方

3. 電気焼灼法(電気外科的治療)

治療原理

  • 高周波電流による組織の焼灼
  • 電気メスを用いた切除・凝固
  • 止血効果も同時に得られる

治療手順

  1. 局所麻酔
  2. 電気メスによる病変の除去
  3. 止血・凝固処置
  4. 創部処理

メリット

  • 確実な除去が可能
  • 止血効果が高い
  • 比較的短時間での処置

デメリット

  • 瘢痕が残りやすい
  • 周囲組織への熱損傷
  • 深く削ると傷跡のリスク

適応

  • 大きな病変
  • 出血しやすい部位
  • 他の治療法で除去困難な場合

4. 外科的切除

治療原理

  • メスを用いた直接切除
  • 病理組織学的検査が可能
  • 確実な診断と治療を同時に実施

治療手順

  1. 局所麻酔
  2. メスによる切除
  3. 縫合
  4. 病理検査への提出

メリット

  • 確定診断が可能
  • 完全除去が確実
  • 悪性腫瘍の場合も対応可能

デメリット

  • 線状の傷跡が残る
  • 縫合が必要
  • 抜糸のための再受診が必要

適応となるケース

  • 悪性腫瘍が疑われる場合
  • 病理診断が必要な場合
  • 非常に大きな病変
  • 他の治療法では対応困難な場合

5. Qスイッチレーザー・ピコレーザー

治療原理

  • 色素に特異的に反応するレーザー
  • メラニンを選択的に破壊
  • 隆起の軽い病変に有効

レーザーの種類

  • QスイッチYAGレーザー
  • Qスイッチアレキサンドライトレーザー
  • Qスイッチルビーレーザー
  • ピコ秒レーザー

適応

  • 隆起の軽い脂漏性角化症
  • 色素沈着が主体の病変
  • 顔面の美容的配慮が必要な場合

限界

  • 隆起の強い病変では不十分
  • 再発のリスクがある
  • 複数回の治療が必要な場合がある

治療の組み合わせ

併用療法のメリット

炭酸ガスレーザー+Qスイッチレーザー

  • 隆起部分を炭酸ガスレーザーで除去
  • 基底部の色素をQスイッチレーザーで破壊
  • 再発率の大幅な減少
  • 美容的に優れた結果

段階的治療

  • 大きな病変を複数回に分けて治療
  • 一度に広範囲を治療する場合のリスク軽減
  • 患者さんの負担軽減

治療費用と保険適用

保険適用の治療

適用条件

脂漏性角化症の治療で保険適用となるのは、以下の治療法です:

液体窒素冷凍療法

  • 診療報酬:「イボ等冷凍凝固術」
  • 条件:1週間以上の間隔を空けた治療
  • 費用:3割負担で1回700-900円程度

電気焼灼法(一部)

  • 診療報酬:「いぼ焼灼法」
  • 適用:限定的な範囲の治療
  • 費用:3割負担で数千円程度

外科的切除

  • 診療報酬:「皮膚、皮下腫瘍摘出術」
  • 適用:悪性が疑われる場合、診断目的
  • 費用:3割負担で数千円~数万円

保険適用の制限

平成30年度診療報酬改定の影響

  • 広範囲の脂漏性角化症治療は保険適用外となった
  • 炭酸ガスレーザーの広範囲治療は自由診療
  • 美容目的の治療は基本的に保険適用外

自由診療の費用

炭酸ガスレーザー治療

一般的な料金設定

  • 1mm未満:5,000-10,000円
  • 1-2mm:10,000-15,000円
  • 2-3mm:15,000-25,000円
  • 3mm以上:25,000-50,000円

複数個の治療

  • 取り放題プラン:50,000-200,000円
  • 範囲による設定:顔半分、全顔など
  • 個数による割引制度

その他の自由診療

Qスイッチレーザー

  • 1照射:5,000-15,000円
  • 複数回治療が必要な場合が多い

ピコレーザー

  • 1照射:10,000-20,000円
  • 最新技術のため比較的高額

追加費用

初診・再診料

  • 初診料:3,000-5,000円
  • 再診料:1,000-2,000円

麻酔代

  • 局所麻酔注射:3,000-5,000円
  • 外用麻酔(エムラクリーム等):1,000-3,000円

薬剤費

  • 軟膏:1,000-2,000円
  • 内服薬:2,000-5,000円
  • テープ類:500-1,500円

医療費控除

脂漏性角化症の治療費は、以下の条件下で医療費控除の対象となる場合があります:

対象となるケース

  • 症状がある場合(痛み、かゆみ、出血等)
  • 悪性腫瘍との鑑別が必要な場合
  • 機能的な問題がある場合

対象外となるケース

  • 純粋に美容目的の場合
  • 予防的な除去
  • 審美的な改善のみが目的

予防方法

紫外線対策

基本的な紫外線防御

日焼け止めの使用

  • SPF30以上、PA+++以上の製品を推奨
  • 2-3時間ごとの塗り直し
  • 曇りの日や室内でも使用
  • 首、手の甲、耳などの見落としがちな部位も注意

物理的防御

  • 帽子:つばの広い帽子(7cm以上推奨)
  • 日傘:UV遮蔽率90%以上
  • サングラス:UV400対応
  • 長袖・長ズボン:UVカット素材

行動による対策

  • 午前10時~午後2時の外出を控える
  • 日陰を積極的に利用
  • 屋外活動時間の短縮

年代別紫外線対策

20-30代

  • 予防的な日焼け止め使用の習慣化
  • レジャー時の十分な対策
  • 基礎化粧品でのUVケア

40-50代

  • より強力な日焼け止めの使用
  • 美白化粧品の併用
  • 定期的な皮膚チェック

60代以降

  • 継続的な紫外線対策
  • 既存病変の増悪防止
  • 医師による定期検診

スキンケア

基本的なスキンケア

正しい洗顔

  • ぬるま湯での洗顔
  • 優しいクレンジング
  • 過度な摩擦を避ける

保湿

  • 適切な保湿剤の使用
  • 皮膚バリア機能の維持
  • 乾燥による刺激の防止

抗酸化対策

  • ビタミンC誘導体の外用
  • ビタミンE配合製品
  • 抗酸化成分入り化粧品

生活習慣

栄養管理

  • ビタミンA、C、Eの摂取
  • 抗酸化作用のある食品
  • バランスの取れた食事

睡眠

  • 十分な睡眠時間
  • 質の良い睡眠
  • 皮膚の修復時間の確保

ストレス管理

  • 適度な運動
  • リラクゼーション
  • 免疫機能の維持

定期的な皮膚チェック

セルフチェック

観察のポイント

  • サイズの変化
  • 色調の変化
  • 形状の変化
  • 新たな病変の出現

チェック頻度

  • 月1回程度の自己観察
  • 写真による記録
  • 変化があった場合の医師への相談

医師による検診

検診の頻度

  • 40歳以降:年1回の皮膚科検診を推奨
  • 家族歴がある場合:より頻回の検診
  • 既存病変がある場合:6ヶ月~1年ごと

検診の内容

  • 全身の皮膚観察
  • ダーモスコピー検査
  • 必要に応じた生検

よくある質問

Q1. 脂漏性角化症は癌になりますか?

回答: 脂漏性角化症は良性腫瘍であり、基本的に癌化することはありません。しかし、以下の点にご注意ください:

  • 急激にサイズが大きくなる
  • 色調が急に変化する
  • 出血や潰瘍ができる
  • かゆみや痛みが強くなる

これらの症状がある場合は、他の疾患の可能性もあるため、速やかに皮膚科を受診してください。

Q2. 一度治療すれば再発しませんか?

回答: 治療法によって再発率は異なります:

液体窒素治療

  • 軽い冷凍では再発の可能性あり
  • 数ヶ月~数年後の再発例も報告

炭酸ガスレーザー

  • 適切な深度まで除去すれば、再発率は極めて低い
  • 基底部の細胞を完全に除去することが重要

外科的切除

  • 完全切除すれば再発はほぼない
  • 最も確実な方法

Q3. 治療後の傷跡は残りますか?

回答: 治療法と個人の体質によって異なります:

傷跡が残りにくい治療

  • 適切に行われた炭酸ガスレーザー
  • Qスイッチレーザー

傷跡のリスクがある治療

  • 強すぎる液体窒素治療
  • 電気焼灼法
  • 外科的切除

傷跡を最小限にするためには、経験豊富な医師による治療と、適切なアフターケアが重要です。

Q4. 治療に最適な時期はありますか?

回答: 以下の点を考慮して時期を選択することをお勧めします:

紫外線の少ない時期

  • 秋~冬が理想的
  • 治療後の色素沈着リスクが低い

生活スタイル

  • 人前に出る機会の少ない時期
  • 十分なアフターケアができる時期

病変の状態

  • 急激な変化がある場合は時期を問わず早急に治療

Q5. 家族にも脂漏性角化症が多いのですが、遺伝しますか?

回答: 脂漏性角化症には遺伝的要因が関与していると考えられています:

遺伝的要因

  • 家族歴がある場合、発症リスクが高い
  • 若年発症例では遺伝要因がより強い
  • 個数や大きさにも遺伝的影響

対策

  • 早期からの紫外線対策
  • 定期的な皮膚科検診
  • 生活習慣の改善

遺伝的要因は変えることができませんが、適切な予防対策により発症を遅らせることは可能です。

Q6. 妊娠中に治療できますか?

回答: 妊娠中の治療については、以下の点を考慮します:

可能な治療

  • 診断のための視診・ダーモスコピー
  • 緊急性がある場合の外科的切除

避けるべき治療

  • レーザー治療(安全性のデータが不十分)
  • 広範囲の液体窒素治療

推奨事項

  • 出産後の治療を推奨
  • 急激な変化がある場合は医師に相談
  • 予防的な紫外線対策の継続

Q7. 子供にもできることがありますか?

回答: 脂漏性角化症は主に中年以降の疾患ですが、まれに若年者にも発症します:

若年発症の特徴

  • 遺伝的要因が強い
  • 数が多い傾向
  • 紫外線の影響が少ない部位にもできる

注意点

  • ウイルス性疣贅との鑑別が重要
  • 専門医による正確な診断が必要
  • 他の疾患の除外

若年者の場合は、特に慎重な診断と治療方針の決定が必要です。

まとめ

脂漏性角化症は非常に一般的な良性皮膚腫瘍で、加齢とともに多くの方に見られる症状です。「自分で取る」ことは診断の問題、治療の不完全性、重篤な合併症のリスクなど、多くの危険性があるため、絶対に避けるべきです。

重要なポイント

  1. 正確な診断の重要性
    • 悪性腫瘍との鑑別が必要
    • 専門医による診断が不可欠
    • ダーモスコピーや病理検査の活用
  2. 適切な治療法の選択
    • 液体窒素治療:保険適用、費用面でのメリット
    • 炭酸ガスレーザー:美容的に優れた結果
    • 外科的切除:確実な診断と治療
  3. 予防の重要性
    • 若年期からの紫外線対策
    • 適切なスキンケア
    • 定期的な皮膚科検診
  4. セルフケアの危険性
    • 診断の問題
    • 不完全な治療
    • 感染症や瘢痕形成のリスク

アイシークリニック上野院からのメッセージ

当院では、脂漏性角化症の診断から治療まで、患者さん一人ひとりの状況に応じた最適な医療を提供しております。見た目が気になる小さな病変から、悪性腫瘍が疑われる病変まで、経験豊富な専門医が対応いたします。

「自分で何とかしたい」というお気持ちは理解できますが、安全で確実な治療のためには、必ず医療機関にご相談ください。気になる症状がございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

参考文献

  1. MSDマニュアル家庭版「脂漏性角化症」https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/17-皮膚の病気/皮膚の良性腫瘍/脂漏性角化症
  2. 慶應義塾大学病院KOMPAS「脂漏性角化症」https://kompas.hosp.keio.ac.jp/disease/000287/
  3. Jackson JM, Alexis A, Berman B, et al. Current understanding of seborrheic keratosis: prevalence, etiology, clinical presentation, diagnosis, and management. J Drugs Dermatol. 2015;14(10):1119-1125.
  4. 田辺三菱製薬「ヒフノコトサイト – 脂漏性角化症(老人性イボ)」https://hc.mt-pharma.co.jp/hifunokoto/solution/1977
  5. 日本医事新報社「脂漏性角化症[私の治療]」https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=26652

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

プロフィールを見る

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

プロフィールを見る