はじめに
多汗症は、多くの人が「単なる汗かき体質」として見過ごしがちな疾患ですが、実際には患者さんの日常生活に深刻な影響を与える医学的な病気です。握手を避ける、書類が汗で濡れる、靴下がびしょびしょになるなど、社会生活や人間関係にも大きな支障をきたすことがあります。
本記事では、多汗症の詳細な分類、関連する病気、そして最新の治療法について、専門医監修のもと詳しく解説いたします。

多汗症とは何か?詳しい定義と概要
基本的な定義
多汗症(hyperhidrosis)とは、体温調節に必要な量を大幅に超えた過剰な発汗が起こる疾患です。医学的には「日常生活に支障をきたす程度の過剰な局所性または全身性の発汗」と定義されています。
発汗の生理学的メカニズム
人間の発汗は、主に以下の3つのメカニズムによって調節されています:
1. 体温調節性発汗
- 体温が上昇した際に体温を下げるために起こる
- 主に背中、胸部、腹部から発汗
- 交感神経系によって制御される
2. 情動性発汗
- 精神的ストレス、緊張、不安によって起こる
- 手のひら、足の裏、脇の下、額が主要部位
- アドレナリンやノルアドレナリンが関与
3. 味覚性発汗
- 辛い食べ物や熱い飲み物を摂取した際に起こる
- 主に顔面、特に額や鼻周辺
- 通常は一時的で生理的な反応
多汗症では、これらの正常な発汗調節機能に異常が生じ、必要以上の汗が分泌されます。
多汗症の詳細な分類
原因による分類
1. 原発性多汗症(Primary hyperhidrosis)
特徴:
- 明確な基礎疾患が存在しない
- 全多汗症患者の約90%を占める
- 通常、小児期から思春期に発症
- 家族歴がある場合が多い(約30-50%)
発症部位による細分類:
- 手掌多汗症: 手のひらの過剰発汗
- 足底多汗症: 足の裏の過剰発汗
- 腋窩多汗症: 脇の下の過剰発汗
- 顔面多汗症: 額や顔面の過剰発汗
- 頭部多汗症: 頭皮からの過剰発汗
2. 続発性多汗症(Secondary hyperhidrosis)
特徴:
- 他の疾患や薬物が原因
- 全身性の場合が多い
- 成人になってから発症することが多い
- 原因疾患の治療により改善する可能性がある
範囲による分類
1. 局所性多汗症
- 身体の特定の部位のみに発汗
- 原発性多汗症に多い
- 左右対称に発症することが多い
2. 全身性多汗症
- 全身に過剰な発汗
- 続発性多汗症に多い
- より重篤な基礎疾患の可能性
続発性多汗症の原因疾患
内分泌・代謝疾患
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)
- 症状: 全身の多汗、動悸、体重減少、手の震え
- メカニズム: 甲状腺ホルモン過剰による基礎代謝の亢進
- 診断: TSH、FT4、FT3の血液検査
- 治療: 抗甲状腺薬(メチマゾール、プロピルチオウラシル)
糖尿病
- 関連する多汗の種類:
- 低血糖による発汗(冷汗)
- 糖尿病性自律神経障害による味覚性発汗
- 感染症併発による発熱性発汗
- 診断: HbA1c、空腹時血糖値、経口ブドウ糖負荷試験
- 治療: 血糖コントロールの徹底
褐色細胞腫
- 症状: 発作性の多汗、高血圧、動悸、頭痛
- メカニズム: カテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン)の過剰分泌
- 診断: 尿中カテコールアミン、血中カテコールアミン、MRI/CT
- 治療: 外科的摘出
先端巨大症
- 症状: 成長ホルモン過剰による多汗、手足の肥大
- メカニズム: 成長ホルモンによる基礎代謝の亢進
- 診断: IGF-1、成長ホルモン分泌刺激試験
- 治療: 経蝶形骨洞手術、薬物療法
カルチノイド症候群
- 症状: 顔面紅潮、下痢、喘息様症状とともに多汗
- メカニズム: セロトニンなどの生理活性物質の過剰分泌
- 診断: 尿中5-HIAA、血中セロトニン
- 治療: 腫瘍摘出、オクトレオチド投与
感染症
結核
- 症状: 夜間発汗(night sweats)が特徴的
- メカニズム: 炎症性サイトカインによる体温調節中枢への影響
- 診断: 胸部X線、喀痰検査、ツベルクリン反応
- 治療: 抗結核薬の多剤併用療法
HIV感染症
- 症状: 進行期での夜間多汗
- メカニズム: 免疫機能低下に伴う日和見感染
- 診断: HIV抗体・抗原検査
- 治療: 抗HIV薬(HAART)
敗血症
- 症状: 発熱とともに全身の発汗
- メカニズム: 細菌毒素による全身炎症反応
- 診断: 血液培養、炎症反応マーカー
- 治療: 抗生物質の静脈内投与
悪性腫瘍
リンパ腫(ホジキン病、非ホジキンリンパ腫)
- 症状: B症状(発熱、夜間発汗、体重減少)
- メカニズム: 腫瘍細胞からのサイトカイン分泌
- 診断: リンパ節生検、CT、PET-CT
- 治療: 化学療法、放射線療法
白血病
- 症状: 夜間多汗、発熱、易感染性
- メカニズム: 異常な白血球による炎症反応
- 診断: 血液検査、骨髄検査
- 治療: 化学療法、造血幹細胞移植
固形がん
- 症状: 進行がんでの夜間多汗
- メカニズム: 腫瘍随伴症候群としての発汗
- 診断: 各種画像検査、腫瘍マーカー
- 治療: 手術、化学療法、放射線療法
神経系疾患
脊髄損傷
- 症状: 損傷レベル以上での代償性発汗
- メカニズム: 交感神経伝達経路の障害
- 診断: 神経学的検査、MRI
- 治療: リハビリテーション、症状対症療法
パーキンソン病
- 症状: 運動症状に伴う多汗
- メカニズム: ドパミン不足による自律神経機能異常
- 診断: 臨床症状、DaTscan
- 治療: レボドパ、ドパミンアゴニスト
脳血管障害
- 症状: 片麻痺とともに患側の発汗異常
- メカニズム: 発汗調節中枢の障害
- 診断: 頭部CT、MRI
- 治療: 急性期治療、リハビリテーション
薬物による多汗症
抗うつ薬
- 主な薬物: SSRI、SNRI、三環系抗うつ薬
- メカニズム: セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害による自律神経への影響
- 対処法: 薬物変更、用量調整、制汗剤併用
抗精神病薬
- 主な薬物: ハロペリドール、リスペリドン
- メカニズム: ドパミン受容体遮断による錐体外路症状の一環
- 対処法: 薬物変更、抗コリン薬併用
オピオイド系鎮痛薬
- 症状: 服用時および離脱時の発汗
- メカニズム: μオピオイド受容体への作用
- 対処法: 緩徐な減薬、症状対症療法
ホルモン補充療法
- 症状: エストロゲン製剤による発汗異常
- メカニズム: ホルモンバランスの変化
- 対処法: 製剤変更、用量調整
原発性多汗症の詳細
疫学と遺伝的要因
原発性多汗症は、人口の約2-3%に見られる比較的一般的な疾患です。家族歴を有する患者が30-50%存在し、遺伝的要因の関与が示唆されています。
遺伝パターン:
- 常染色体優性遺伝の可能性
- 複数の遺伝子が関与する多因子遺伝
- 浸透率は完全ではない
発症年齢と経過
- 発症年齢: 大多数が25歳以前に発症
- ピーク年齢: 13-19歳(思春期)
- 経過: 慢性進行性で、自然寛解は稀
- 季節性: 夏季に症状が悪化する傾向
部位別の特徴
手掌多汗症
- 有病率: 原発性多汗症の約80%
- 特徴: 手のひら全体または指先から過剰な発汗
- 日常生活への影響: 握手の回避、書類の汚損、楽器演奏の困難
- 重症度分類:
- 軽度: 湿潤感のみ
- 中等度: 汗滴の形成
- 重度: 汗滴の滴下
足底多汗症
- 特徴: 足の裏、特に足趾部からの発汗
- 合併症: 水虫、細菌感染、足臭
- 日常生活への影響: 靴下の頻繁な交換、靴の劣化促進
腋窩多汗症
- 特徴: 脇の下からの過剰な発汗
- 社会的影響: 衣服の汗染み、体臭の懸念
- 心理的影響: 社交不安、自信の低下
顔面・頭部多汗症
- 特徴: 額、頭皮からの顕著な発汗
- 社会的影響: 化粧の崩れ、髪型の乱れ
- 心理的負担: 最も目立つ部位のため精神的影響が大きい
診断方法と評価
診断基準
原発性局所多汗症の診断基準(2004年、国際多汗症学会):
必須条件: 明らかな原因のない局所的な過剰発汗が6か月以上持続
以下のうち2項目以上を満たす:
- 左右対称性の発汗
- 週1回以上の頻度で発汗エピソードがある
- 25歳以前に発症
- 家族歴がある
- 睡眠中は発汗が止まる
- 日常生活に支障をきたしている
重症度評価
HDSS(Hyperhidrosis Disease Severity Scale)
- 全く気にならず、日常生活に全く支障がない
- 我慢できるが、日常生活に時々支障がある
- ほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある
- 我慢できず、日常生活に常に支障がある
スコア3-4を重症多汗症として治療適応とします。
Minor法(ヨード・デンプン法)
- ヨウ素液とデンプンを用いた発汗範囲の可視化
- 定量的な評価が可能
- 治療効果の判定に有用
重量測定法
- 一定時間の発汗量を重量で測定
- 正常値: 手掌で20mg/min未満
- 客観的評価として最も正確
鑑別診断
続発性多汗症との鑑別
- 詳細な病歴聴取
- 身体診察
- 必要に応じた血液検査、画像検査
他の皮膚疾患との鑑別
- 掌蹠角化症
- 接触皮膚炎
- 真菌感染症
治療法の詳細解説
保存的治療
1. 外用療法
塩化アルミニウム製剤
- 作用機序: 汗管の閉塞による発汗抑制
- 濃度: 10-20%溶液
- 使用方法: 就寝前に乾いた皮膚に塗布、朝に洗い流す
- 効果: 約70-80%の患者で改善
- 副作用: 皮膚刺激、かぶれ
- 使用期間: 効果発現まで1-2週間
その他の外用薬
- グリコピロニウム外用液(保険適用)
- ボツリヌストキシン外用製剤(海外)
- メトヘナミン製剤
2. 内服療法
抗コリン薬
- 主な薬物: オキシブチニン、プロバンテリン
- 作用機序: アセチルコリン受容体遮断による発汗抑制
- 効果: 全身性の発汗抑制
- 副作用: 口渇、便秘、眠気、尿閉
- 使用上の注意: 緑内障、前立腺肥大症では禁忌
漢方薬
- 防已黄耆湯: 水分代謝改善
- 茯苓桂朮甘草湯: 水分循環の調整
- 補中益気湯: 体質改善
β遮断薬
- 情動性発汗に対する補助療法
- 手の震えを伴う場合に有効
3. イオントフォレーシス
原理:
- 微弱な直流電流を用いた治療
- 水道水を介して皮膚に電流を通電
- 汗管の一時的な閉塞を誘導
方法:
- 手足を電極を入れた水槽に浸す
- 15-20mA、20-30分間の通電
- 週3回、2-3週間継続
効果:
- 約80%の患者で改善
- 効果持続期間は4-6週間
副作用:
- 皮膚刺激、水疱形成
- 心疾患、妊娠では禁忌
侵襲的治療
1. ボツリヌストキシン注射
作用機序:
- 神経終末からのアセチルコリン放出阻害
- 汗腺への神経伝達を遮断
手技:
- Minor法で発汗範囲を確認
- 1-2cm間隔で皮内注射
- 総投与量: 腋窩で100-200単位
効果:
- 約95%の患者で改善
- 効果持続期間: 4-12か月
- 繰り返し投与可能
副作用:
- 注射部位の疼痛
- 一時的な筋力低下(手掌注射時)
- アレルギー反応(稀)
適応:
- 原発性腋窩多汗症(保険適用)
- 手掌・足底多汗症(自費診療)
2. マイクロ波療法(miraDry)
原理:
- 5.8GHzのマイクロ波エネルギー
- 汗腺の選択的破壊
- 表皮・真皮の冷却システム併用
効果:
- 1回の治療で約80%の発汗減少
- 効果は永続的
- 腋窩多汗症に限定
副作用:
- 治療部位の腫れ、痛み
- 一時的な感覚鈍麻
- 代償性発汗(稀)
3. 外科的治療
胸腔鏡下交感神経遮断術(ETS)
適応:
- 重症の手掌多汗症
- 保存的治療無効例
- 患者の強い希望がある場合
手技:
- 全身麻酔下での胸腔鏡手術
- 第2-4胸部交感神経節の切断または遮断
- 両側同時手術が可能
効果:
- 手掌多汗症に対して95%以上の治療成功率
- 即座に効果が現れる
合併症:
- 代償性発汗: 最も重要な合併症(80-90%に発生)
- 胸部、腹部、背部、大腿部での発汗増加
- 不可逆的で、時に元の症状より重篤
- ホルネル症候群(2%未満)
- 気胸
- 術後神経痛
代償性発汗の予測因子:
- BMI高値
- 術前の全身性発汗傾向
- 広範囲の神経切断
局所汗腺除去術
腋窩多汗症に対する治療:
- 皮弁法: 汗腺を含む皮下組織の除去
- 吸引法: カニューレによる汗腺の吸引除去
- 超音波法: 超音波による汗腺破壊後吸引
効果と合併症:
- 約90%の症例で改善
- 瘢痕形成、色素沈着
- 感染、血腫のリスク

心理社会的影響と対策
多汗症の心理的影響
社会不安障害との関連
- 多汗症患者の約40%で社会不安障害を併発
- 人前での発表や握手の回避
- 自己評価の低下
うつ病との関連
- 慢性的な症状による精神的負担
- 社会活動の制限
- 治療への絶望感
QOL(生活の質)への影響
- DLQI(皮膚疾患生活質指数)の著明な悪化
- 職業選択への影響
- 恋愛・結婚への不安
心理的サポートの重要性
認知行動療法(CBT)
- 不適切な思考パターンの修正
- 不安症状の軽減
- 自己効力感の向上
患者教育
- 疾患の正しい理解
- 治療選択肢の説明
- 予後についての情報提供
患者会・サポートグループ
- 同じ悩みを持つ患者との交流
- 経験の共有
- 孤立感の解消
日常生活での対策と予防
生活習慣の改善
食事療法
避けるべき食品:
- カフェイン含有飲料(コーヒー、緑茶、エナジードリンク)
- 辛い食べ物(唐辛子、わさび、からし)
- アルコール飲料
- 熱い飲み物や食べ物
推奨される食品:
- 水分を適度に含む食品
- ビタミンB群を多く含む食品
- マグネシウムを含む食品(ナッツ、緑黄色野菜)
ストレス管理
- リラクゼーション法: 深呼吸、瞑想、ヨガ
- 規則正しい生活: 十分な睡眠、適度な運動
- 趣味の時間: ストレス発散の機会を作る
衣類の選択
素材の選択:
- 天然繊維(コットン、リネン)を選ぶ
- 吸湿速乾性の高い機能性素材
- ゆったりとした通気性の良いデザイン
色の選択:
- 汗染みが目立ちにくい色(黒、白、濃紺)
- 中間色(グレー、ベージュ)は汗染みが目立ちやすい
制汗剤の効果的な使用法
制汗剤の種類
塩化アルミニウム系:
- 最も効果が高い
- 医療用と市販品がある
- 夜間使用が原則
その他の有効成分:
- 塩化ベンザルコニウム
- イソプロピルメチルフェノール
- ミョウバン
使用方法のコツ
- 完全に乾いた皮膚に使用
- 就寝前の使用が最も効果的
- 朝に石鹸で洗い流す
- 効果が現れるまで継続使用
- 皮膚刺激が生じたら使用中断
職場での配慮事項
環境調整
- 座席位置の配慮(エアコンの風が当たる場所)
- 適切な室温・湿度の維持
- 扇風機の活用
作業方法の工夫
- こまめな手洗い・拭き取り
- 予備の衣類の準備
- タオルやハンカチの携帯
最新の研究動向と将来の治療法
新しい治療法の開発
新規外用薬
ソフピロニウム臭化物ゲル:
- 2020年に米国で承認
- 抗コリン作用による発汗抑制
- 全身への影響が少ない
ATP合成酵素阻害薬:
- 汗腺のエネルギー代謝を阻害
- 選択的な汗腺機能抑制
- 現在臨床試験中
新しいデバイス治療
高強度収束超音波(HIFU):
- 非侵襲的な汗腺破壊
- マイクロ波治療の改良版
- より精密な治療が可能
レーザー治療:
- 1444nmダイオードレーザー
- 汗腺の選択的破壊
- 皮膚表面への影響が少ない
遺伝学的研究
疾患関連遺伝子の同定
- 複数の染色体領域での連鎖解析
- ゲノムワイド関連解析(GWAS)の実施
- 家系解析による遺伝パターンの解明
個別化医療への応用
- 遺伝型に基づく治療法の選択
- 薬物反応性の予測
- 代償性発汗のリスク評価
再生医学的アプローチ
汗腺の再生療法
- 幹細胞を用いた汗腺の再構築
- 組織工学による汗腺移植
- 遺伝子治療による汗腺機能の修復
よくある質問(FAQ)
A1: 多汗症の完治は困難ですが、適切な治療により症状を大幅に改善することは可能です。外用薬や内服薬による保存的治療から、ボツリヌストキシン注射、手術療法まで、患者さんの症状と希望に応じて最適な治療法を選択できます。重要なのは、症状に悩まず早期に専門医に相談することです。
A2: 胸腔鏡下交感神経遮断術(ETS)後の代償性発汗は80-90%の患者さんに認められますが、その程度は個人差があります。軽度で日常生活に支障がない場合から、元の手掌多汗症より不快に感じる重度の場合まで様々です。手術前に十分な説明を受け、リスクとベネフィットを慎重に検討することが重要です。
A3: 多汗症の症状が学校生活や社会活動に支障をきたしている場合は、年齢に関係なく治療を検討すべきです。小児では比較的安全な外用療法や生活指導から始めることが一般的です。思春期以降であれば、より積極的な治療選択肢も考慮されます。
A4: 多くの患者さんで夏季に症状が悪化する傾向があります。これは気温の上昇と湿度の増加が影響しているためです。冬季でも症状は持続しますが、軽減することが多いです。季節に応じた治療の調整や生活習慣の改善が重要です。
A5: 原発性多汗症の30-50%で家族歴が認められ、遺伝的要因の関与が示唆されています。しかし、必ずしも遺伝するわけではなく、環境因子も発症に影響します。家族に多汗症の人がいても過度に心配する必要はありませんが、症状が現れた場合は早期の相談をお勧めします。
A6: 適切な使用方法であれば大きな害はありません。ただし、塩化アルミニウム系制汗剤の過度な使用は皮膚刺激を起こす可能性があります。皮膚に異常を感じた場合は使用を中断し、専門医に相談してください。長期使用による全身への影響は報告されていません。
まとめ
多汗症は「単なる体質」ではなく、患者さんの生活の質に大きな影響を与える医学的疾患です。原発性多汗症と続発性多汗症の正確な診断により、適切な治療方針を決定することが可能です。
続発性多汗症では、原因疾患の特定と治療が最優先となります。甲状腺機能亢進症、糖尿病、悪性腫瘍など、重篤な疾患が隠れている可能性があるため、詳細な検査が必要です。
原発性多汗症に対しては、外用薬、内服薬、イオントフォレーシスなどの保存的治療から開始し、効果不十分な場合にはボツリヌストキシン注射や外科的治療も選択肢となります。治療法の選択は、患者さんの症状の重症度、日常生活への影響、社会的要因、そして患者さんの希望を総合的に考慮して決定されます。
近年、新しい治療法の開発も進んでおり、より効果的で安全な治療選択肢が増えています。また、多汗症の心理社会的影響も重要視されており、医学的治療と並行して心理的サポートも提供されるようになっています。
多汗症でお悩みの方は、一人で抱え込まず専門医に相談することをお勧めします。適切な診断と治療により、症状の改善と生活の質の向上が期待できます。
本記事の内容は医学的情報の提供を目的としており、特定の診断や治療を推奨するものではありません。症状でお悩みの方は、必ず医療機関を受診し、専門医にご相談ください。
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監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務