ほくろの形成外科手術|美しい仕上がりを目指す治療法の全て

はじめに

ほくろは誰にでもある身近な皮膚の変化ですが、その存在が気になっている方は少なくありません。顔や体の目立つ部分にあるほくろ、年々大きくなっているほくろ、盛り上がって衣服に引っかかるほくろなど、ほくろに関する悩みは人それぞれです。

ほくろの除去を考えた時、多くの方が「どこで治療を受ければよいのか」「どんな方法があるのか」「傷跡は残らないのか」といった疑問を持たれます。特に、美容面での仕上がりを重視したい場合、形成外科での手術という選択肢があることをご存知でしょうか。

本記事では、形成外科におけるほくろ手術について、その特徴や方法、メリット、注意点などを詳しく解説していきます。ほくろ除去を検討されている方、形成外科での治療に興味がある方に、判断材料となる情報をお届けします。

ほくろとは何か

ほくろの医学的定義

ほくろは医学的には「色素性母斑」または「母斑細胞性母斑」と呼ばれる皮膚の良性腫瘍です。メラニン色素を作る細胞(メラノサイト)が変化した母斑細胞が、皮膚の中で増殖することで形成されます。

一般的に「ほくろ」と呼ばれるものの多くは後天性色素性母斑で、生まれた後に徐々に現れてくるタイプです。一方、生まれつき存在する先天性色素性母斑もあり、これらは大きさや性質が異なることがあります。

ほくろができるメカニズム

ほくろができる正確なメカニズムはまだ完全には解明されていませんが、いくつかの要因が関係していると考えられています。

遺伝的要因は重要な役割を果たしており、家族内でほくろの数が多い傾向が見られることがあります。また、紫外線による刺激も、ほくろの発生や増加に関与していると言われています。特に思春期から成人初期にかけて、新しいほくろが増えやすい傾向があります。

ホルモンの変化も影響を与える可能性があり、妊娠中にほくろが増えたり、既存のほくろが濃くなったりすることもあります。

ほくろの一般的な特徴

ほくろには様々な形状や色、大きさがあります。

色は茶色から黒色まで幅があり、同じ人でも複数の色合いのほくろを持っていることが一般的です。形は円形や楕円形が多いですが、不規則な形状のものもあります。

大きさは数ミリ程度の小さなものから、数センチに及ぶ大きなものまで様々です。平坦なものもあれば、皮膚から盛り上がっているもの、毛が生えているものもあります。

多くのほくろは無害で、医学的な治療の必要はありません。しかし、中には注意が必要なほくろや、皮膚がんとの鑑別が必要なものもあります。

ほくろの種類と分類

発生時期による分類

ほくろは発生時期によって大きく2つに分類されます。

先天性色素性母斑は、生まれた時からすでに存在するほくろです。新生児の約1%に見られ、大きさによってさらに細分化されます。直径20cm以上の巨大先天性色素性母斑は比較的まれですが、将来的に悪性化のリスクがやや高いため、専門医による定期的な観察が推奨されます。

後天性色素性母斑は、生後に新たに現れるほくろで、最も一般的なタイプです。幼児期から成人初期にかけて数が増え、中年以降は徐々に減少する傾向があります。

存在する深さによる分類

ほくろは、母斑細胞が皮膚のどの層に存在するかによっても分類されます。

境界母斑は、表皮と真皮の境界部分に母斑細胞が存在するタイプで、平坦で黒っぽい色をしていることが多いです。主に子供から若い成人に見られます。

複合母斑は、表皮と真皮の両方に母斑細胞が存在し、やや盛り上がっていることが多く、色は茶色から黒色まで様々です。

真皮内母斑は、真皮内のみに母斑細胞が存在するタイプで、肌色から茶色で、盛り上がっていることが多いです。加齢とともに境界母斑や複合母斑から変化することがあります。

特殊なタイプのほくろ

いくつかの特殊なタイプのほくろも知られています。

青色母斑は、真皮深層にメラニンが存在するため、青みがかった色に見えるほくろです。手の甲や顔に好発します。

スピッツ母斑は、ピンク色や赤褐色を呈する隆起性のほくろで、子供に多く見られます。細胞の形態が悪性黒色腫に類似することがあるため、病理診断が重要です。

異形成母斑は、通常のほくろよりやや大きく、不規則な形状や色むらを持つことがあります。悪性黒色腫のリスクが一般的なほくろよりやや高いとされ、経過観察が必要な場合があります。

ほくろ除去を検討すべきケース

美容的な理由

顔や首など目立つ場所にあるほくろは、美容的な観点から除去を希望される方が多くいます。特に大きなほくろや盛り上がったほくろは、メイクでカバーすることが難しく、コンプレックスの原因となることがあります。

写真撮影や人前に出る機会が多い方、接客業や営業職の方など、外見を気にする必要がある環境にいる方が除去を検討されることも少なくありません。

美容的な理由での除去は、基本的に保険適用外となりますが、ほくろの存在が精神的な負担となっている場合、QOL(生活の質)向上のために治療を選択することは十分に意義があります。

機能的な問題がある場合

ほくろの位置や大きさによっては、日常生活に支障をきたすことがあります。

まぶたにあるほくろが視野を妨げる、唇のほくろが食事の際に気になる、頭皮のほくろがブラッシングの際に引っかかって出血するなど、機能的な問題がある場合は、保険適用での治療が認められることがあります。

また、衣服や下着、アクセサリーなどに繰り返し擦れて炎症を起こすほくろ、シェービングの際に傷つけやすいほくろなども、除去を検討する理由になります。

医学的に除去が推奨される場合

いくつかの状況では、医学的な観点からほくろの除去や生検が推奨されます。

短期間で急速に大きくなっているほくろ、色が変化したり濃淡にムラが出てきたほくろ、形が不規則になってきたほくろ、境界が不明瞭になってきたほくろなどは、悪性化の可能性を考慮して検査が必要です。

日本皮膚科学会が提唱する「ABCDEルール」は、注意すべきほくろを見分ける指標となります。A(Asymmetry:非対称)、B(Border irregularity:境界不整)、C(Color variation:色調の多様性)、D(Diameter:直径が6mm以上)、E(Evolving:変化)のいずれかに該当する場合は、専門医の診察を受けることが推奨されます。

また、直径が20cm以上ある巨大先天性色素性母斑は、悪性黒色腫への変化のリスクが一般的なほくろより高いため、予防的な除去が検討されることがあります。

出血を繰り返すほくろ、かゆみや痛みが持続するほくろも、医師の診察を受けるべきサインです。

形成外科とは

形成外科の専門領域

形成外科は、体表面の異常や変形を、機能面と美容面の両方を考慮しながら治療する外科の専門分野です。「形を整える外科」という意味で、生まれつきの異常、けがや手術後の傷跡、腫瘍切除後の再建など、幅広い疾患を扱います。

日本形成外科学会によれば、形成外科の対象となる主な疾患には、先天異常(口唇口蓋裂、多指症など)、外傷(顔面骨折、熱傷など)、腫瘍(皮膚がんの切除と再建など)、瘢痕・ケロイド、難治性潰瘍、美容外科などが含まれます。

形成外科医の専門性

形成外科医は、精密な手術手技と繊細な縫合技術を習得しています。特に顔面や手指など、機能的にも美容的にも重要な部位の治療において、専門的なトレーニングを受けています。

皮膚の構造や創傷治癒のメカニズムに関する深い知識を持ち、傷跡を最小限にするための様々な技術を駆使します。また、組織欠損がある場合の再建方法(皮弁や植皮など)についても専門的な技能を有しています。

形成外科専門医の資格を取得するには、日本形成外科学会が定める研修プログラムを修了し、試験に合格する必要があります。

皮膚科との違い

ほくろの治療は、皮膚科でも形成外科でも行われていますが、それぞれの専門性には違いがあります。

皮膚科は皮膚疾患全般の診断と治療を専門とし、ほくろの診断や悪性腫瘍との鑑別に優れています。レーザー治療や液体窒素による治療など、非手術的な方法も多く取り入れています。

形成外科は、特に手術的な切除と縫合、再建を得意とします。大きなほくろや深いほくろの除去、美容的に目立つ場所のほくろ除去で、傷跡をできるだけ目立たなくしたい場合などに、形成外科の専門性が活かされます。

実際には、多くの施設で皮膚科と形成外科が連携し、それぞれの専門性を活かした治療を提供しています。

形成外科でのほくろ手術の特徴

美容的配慮を重視した手術計画

形成外科でのほくろ手術の最大の特徴は、美容的な仕上がりを重視した手術計画を立てることです。

ほくろを除去するだけでなく、除去後の傷跡をいかに目立たなくするかを考慮します。皮膚の自然なしわやシワの方向(Langer線)に沿って切開線をデザインすることで、傷跡が周囲に馴染みやすくなります。

顔面の解剖学的な構造や表情筋の走行を理解した上で、最適な切除方法を選択します。例えば、眉毛の中のほくろは眉毛の流れに沿って切除する、鼻や唇のほくろは輪郭を考慮して切除するなど、部位ごとの特性に応じた工夫がなされます。

精密な手術手技

形成外科医は、マイクロサージャリー(顕微鏡下手術)のトレーニングを受けていることが多く、非常に繊細な手術操作が可能です。

ほくろの切除では、必要十分な範囲を正確に切除し、健康な組織へのダメージを最小限に抑えます。特に悪性が疑われる場合は、適切な安全域(マージン)を確保しながら切除します。

縫合においても、複数層に分けて丁寧に縫い合わせる技術(層別縫合)により、傷跡の盛り上がりや陥凹を防ぎ、平坦で目立ちにくい傷跡を目指します。皮膚表面の縫合には、極細の糸を使用し、抜糸後の縫合痕が残りにくいよう配慮します。

組織の病理検査

形成外科での手術では、切除したほくろの組織を必ず病理検査に提出することが一般的です。

病理検査により、ほくろが良性であることを確認できるだけでなく、万が一悪性の変化があった場合も早期に発見できます。また、ほくろの種類や深さを正確に診断することで、再発のリスクを評価できます。

検査結果は通常1〜2週間程度で判明し、結果に応じて今後の方針を決定します。

傷跡への長期的なフォローアップ

形成外科では、手術後の傷跡の経過を長期的に観察することも重要視されます。

傷は手術直後から数ヶ月から1年以上かけて成熟していきます。この過程で、傷跡が赤みを帯びたり、硬くなったり、かゆみが生じたりすることがありますが、多くの場合、時間とともに改善します。

必要に応じて、傷跡を目立たなくするための追加治療(瘢痕形成術、レーザー治療、ステロイド注射など)を提案することもあります。

ほくろ手術の方法

切除縫縮術

切除縫縮術は、ほくろを周囲の正常な皮膚とともに切り取り、その後、創を縫い合わせる方法です。形成外科で最も一般的に行われるほくろ除去の方法の一つです。

手術の流れは以下の通りです。まず、局所麻酔を行います。ほくろの周囲に麻酔薬を注射し、手術中の痛みを取り除きます。

次に、ほくろを中心として、紡錘形(楕円形)にデザインを描きます。この形状は、縫合後に皮膚が自然に閉じるために最適な形です。紡錘形の長軸は、できるだけ皮膚のシワの方向に合わせます。

メスを用いて、デザインに沿って皮膚を切開します。ほくろが深い場合は、皮下組織や場合によっては筋膜まで達する深さで切除することもあります。完全にほくろの細胞を取り除くことが重要です。

切除後、創の両側を寄せて縫合します。縫合は通常、複数の層に分けて行われます。まず深部の組織を吸収糸で縫合し、創にかかる張力を分散させます。その後、皮膚表面を極細の糸で縫合します。

この方法のメリットは、ほくろを完全に除去でき、組織を病理検査に提出できることです。また、一度の処置で治療が完了し、再発のリスクが非常に低いという特徴があります。

切除縫縮術が適しているのは、直径が1cm程度までのほくろ、悪性の可能性があるほくろ、深いほくろなどです。

術後は直線状の傷跡が残りますが、適切に行われた場合、時間とともに目立ちにくくなります。傷跡の長さは、一般的にほくろの直径の3倍程度になると言われています。

くり抜き法(パンチ切除)

くり抜き法は、円筒状の医療器具(トレパン、パンチ)を用いて、ほくろを円形にくり抜く方法です。比較的小さなほくろに適用されます。

手術の手順は、まず局所麻酔を行った後、ほくろよりやや大きめの直径のパンチをほくろの中心に当て、回転させながら皮膚に押し込みます。これにより、円柱状の組織が切り取られます。

切除後の処置には2つの選択肢があります。一つは、創を縫合せずに自然治癒させる方法です。小さな創(直径3〜4mm以下)の場合、縫合せずに軟膏と被覆材で保護し、自然に閉じるのを待つことがあります。この場合、傷は中心から徐々に盛り上がりながら治癒し、最終的には小さく丸い傷跡が残ります。

もう一つは、創を縫合する方法です。やや大きめのパンチで切除した場合、創縁を寄せて縫合することで、より早く治癒し、傷跡も線状になります。

くり抜き法のメリットは、手術時間が短く簡便であること、組織を病理検査に提出できることです。また、小さなほくろの場合、傷跡が比較的目立ちにくくなることがあります。

この方法が適しているのは、直径5mm以下の小さなほくろ、顔以外の部位のほくろなどです。顔面の目立つ部分では、切除縫縮術の方が傷跡がきれいに仕上がることが多いため、あまり選択されません。

レーザー治療との併用

形成外科では、場合によってレーザー治療と外科的切除を組み合わせることもあります。

例えば、浅いほくろに対しては炭酸ガスレーザーで蒸散させ、深い部分が残った場合にのみ追加で切除する方法があります。また、大きなほくろを切除した後、周囲の色素沈着をレーザーで治療することもあります。

ただし、レーザー治療のみでほくろを除去した場合、組織を病理検査に提出できないというデメリットがあります。そのため、形成外科では、確実な診断と完全な除去のために、外科的切除を基本とすることが多いです。

複雑な再建が必要な場合

非常に大きなほくろや、顔面の重要な部位(まぶた、鼻、唇など)のほくろを除去する場合、単純な縫縮では創が閉じないことや、機能や外見に影響が出ることがあります。

このような場合、形成外科の専門的な再建技術が必要になります。

皮弁術は、ほくろ除去後の欠損部を、近くの皮膚を移動させて覆う方法です。局所皮弁、回転皮弁、前進皮弁など、様々な種類があり、欠損の部位や大きさに応じて最適な方法が選択されます。

植皮術は、体の他の部位から皮膚を採取し、欠損部に移植する方法です。非常に大きな先天性色素性母斑などで用いられることがあります。

これらの高度な再建術は、形成外科医の専門性が最も発揮される領域です。

手術の流れ

初診とカウンセリング

ほくろの手術を検討する場合、まず初診でカウンセリングを受けます。

医師はほくろの状態を詳しく観察し、大きさ、色、形状、盛り上がりの程度などを確認します。ダーモスコピーという拡大鏡を使用して、ほくろの構造をより詳細に観察することもあります。

患者さんの希望(完全に除去したい、傷跡を最小限にしたいなど)を聞き、最適な治療方法を提案します。また、手術のリスクや合併症、術後の経過、費用などについても説明があります。

悪性の可能性がある場合や、診断が難しい場合は、先に小さく組織を採取して病理検査を行う(生検)こともあります。

手術前の準備

手術日が決まったら、いくつかの準備が必要です。

抗血小板薬や抗凝固薬を服用している場合、出血のリスクが高まるため、主治医と相談の上、一時的に中止することがあります。ただし、心疾患や脳血管疾患などで服用している場合は、中止によるリスクもあるため、慎重な判断が必要です。

手術当日は、手術部位の化粧を避け、清潔にしておきます。また、手術後に車の運転ができない場合もあるため、公共交通機関を利用するか、付き添いの方と来院することが推奨されます。

手術当日

多くの場合、ほくろの手術は日帰りで行われます。

来院後、手術室または処置室に案内されます。手術部位を消毒し、清潔な布(ドレープ)で覆います。

局所麻酔を行います。細い針を使用しますが、注射時にチクッとした痛みがあります。麻酔が効くまで数分待ち、効果を確認してから手術を開始します。

手術時間は、ほくろの大きさや部位、方法によって異なりますが、通常15分から1時間程度です。手術中は麻酔が効いているため、痛みはほとんど感じません。

手術が終わったら、創部にガーゼや被覆材を貼付します。圧迫が必要な場合は、包帯で固定することもあります。

手術後は、しばらく休んでから帰宅できます。術後の注意事項や、次回の受診日について説明があります。

術後の経過と通院

手術翌日または数日後に、創部の状態を確認するために受診します。

出血や感染の兆候がないか、創がきちんと治癒しているかをチェックします。必要に応じて、ガーゼ交換や消毒を行います。

抜糸は、部位や縫合方法によって異なりますが、顔面では5〜7日後、体幹や四肢では7〜14日後に行うことが一般的です。抜糸は通常、ほとんど痛みを伴いません。

抜糸後も、傷跡の経過を観察するために、数週間から数ヶ月後に受診することがあります。

病理検査の結果は、通常1〜2週間程度で判明します。結果が出たら説明を受け、必要に応じて今後の方針を相談します。

術後のケアと経過

創部の管理

手術直後から抜糸までの期間は、創部を清潔に保つことが重要です。

医師の指示に従って、ガーゼ交換や消毒を行います。創部が濡れないよう注意が必要な場合もありますが、最近では、適度な湿潤環境を保つことが創傷治癒を促進するという考え方も広まっており、被覆材を使用して保護する方法も一般的になっています。

洗顔や入浴は、創部を避ければ通常通り行えることが多いですが、具体的な指示は医師に確認してください。

抜糸後のケア

抜糸後は、傷跡を紫外線から保護することが重要です。

紫外線は傷跡の色素沈着を引き起こす可能性があるため、少なくとも数ヶ月間は、日焼け止めを使用したり、帽子や衣服で傷跡を覆ったりすることが推奨されます。

また、傷跡の成熟を促し、盛り上がりを抑えるために、テープによる固定(ステリストリップなど)を数ヶ月間続けることがあります。これは傷跡にかかる張力を減らし、よりきれいな傷跡にする効果があります。

保湿も重要で、乾燥により傷跡が硬くなったり、かゆみが生じたりすることを防ぎます。

傷跡の変化と成熟過程

手術直後の傷跡は赤みがあり、やや盛り上がっていることが一般的です。

手術後3〜6ヶ月頃が、傷跡が最も目立つ時期です。この時期は、傷の治癒過程で線維組織が活発に形成されるため、赤みが強くなったり、硬く盛り上がったり、かゆみを感じたりすることがあります。

しかし、その後は徐々に傷跡が成熟し、赤みは薄くなり、平坦化していきます。最終的な傷跡の状態が確定するまでには、6ヶ月から1年以上かかることもあります。

個人差が大きく、年齢、体質、傷の部位、術後のケアなどによって、傷跡の経過は異なります。若い人や、胸や肩などの部位では、ケロイドや肥厚性瘢痕といって、傷跡が過剰に盛り上がる傾向があります。

合併症とその対処

ほくろの手術は比較的安全な手術ですが、いくつかの合併症が起こる可能性があります。

出血は、手術中や術後に起こりうる合併症です。多くの場合、圧迫することで止血できますが、まれに再手術が必要になることもあります。

感染は、創部が赤く腫れ、痛みや熱感を伴い、膿が出ることがあります。抗菌薬の内服や外用で治療しますが、重度の場合は創を開いて洗浄する必要があることもあります。

創離開は、縫合した創が開いてしまうことです。張力が強い部位や、術後に傷を引っ張るような動作をした場合に起こりやすくなります。

肥厚性瘢痕やケロイドは、傷跡が盛り上がり、赤みやかゆみを伴う状態です。ステロイド注射、圧迫療法、レーザー治療などで対処します。

再発は、ほくろの細胞が完全に除去されなかった場合に起こります。形成外科での手術では、十分な深さまで切除するため、再発のリスクは低いですが、ゼロではありません。

これらの合併症が疑われる場合は、すぐに医療機関に連絡し、適切な処置を受けることが大切です。

保険適用と費用

保険適用となるケース

ほくろの除去手術は、一定の条件を満たせば、健康保険が適用されます。

保険適用の基準は、主に以下の通りです。悪性の疑いがある場合、急速に大きくなっている、色や形が変化している、出血を繰り返すなどの症状があるほくろは、医学的に除去が必要と判断され、保険適用となります。

機能的な障害がある場合も保険適用です。まぶたのほくろで視野が妨げられる、衣服や装身具に繰り返し擦れて炎症を起こす、日常生活動作に支障があるなどの場合が該当します。

また、一定の大きさ以上のほくろも、保険適用となることがあります。具体的な基準は医療機関や医師の判断によりますが、一般的に直径数mm以上のほくろであれば、保険適用で除去できることが多いです。

保険適用外となるケース

単純に美容目的で、小さなほくろや症状のないほくろを除去する場合は、保険適用外(自費診療)となります。

自費診療の場合、費用は医療機関によって異なりますが、1個のほくろにつき数千円から数万円程度が一般的です。複数のほくろを同時に除去する場合、割引がある医療機関もあります。

保険診療と自費診療の違い

保険診療の場合、治療内容や使用できる材料、薬剤などに一定の制約があります。また、診療報酬は全国一律で定められており、3割負担の場合、患者さんの費用負担も一定の範囲内に収まります。

自費診療の場合、医療機関が自由に費用を設定でき、より高度な技術や材料を使用できることもあります。ただし、全額自己負担となるため、費用は高くなります。

どちらが良いかは、ほくろの状態、患者さんの希望、経済的な事情などを総合的に考慮して決定します。

よくある質問

手術は痛いですか?

手術中は局所麻酔を使用するため、痛みはほとんど感じません。麻酔の注射時にチクッとした痛みがありますが、これは数秒程度です。
手術後、麻酔が切れてから数時間から1日程度は、軽い痛みや違和感があることがありますが、多くの場合、処方された鎮痛剤で対処できる程度です。

傷跡は残りますか?

ほくろを除去する以上、何らかの傷跡は残ります。しかし、形成外科での手術では、傷跡を最小限にするための様々な工夫がなされています。
傷跡の目立ちやすさは、ほくろの大きさ、部位、個人の体質、術後のケアなどによって異なります。適切に行われた手術と術後ケアにより、多くの場合、時間とともに傷跡は目立たなくなります。

手術後、いつから普通の生活ができますか?

日常生活の多くの活動は、手術翌日から可能です。ただし、創部を強く擦ったり、引っ張ったりする動作は避ける必要があります。

激しい運動や重い物を持つことは、出血のリスクがあるため、抜糸まで控えることが推奨されます。また、長時間の入浴やサウナなども、しばらく避けた方が良いでしょう。

メイクは、創部以外であれば通常通り可能です。創部のメイクは、抜糸後、医師の許可が出てから開始します。

仕事や学校は、デスクワークなど身体的負担の少ないものであれば、翌日から復帰できることが多いです。

再発することはありますか?

形成外科での切除手術では、ほくろの細胞を含む組織を十分な深さまで切除するため、再発のリスクは非常に低いです。しかし、完全にゼロではありません。

ほくろの細胞が予想より深くまで存在していた場合、わずかに残った細胞から再発することがあります。再発率は、適切に行われた切除縫縮術では数%以下とされています。

レーザー治療など、表面的な治療のみを行った場合は、再発率が高くなります。

悪性の可能性はどのくらいありますか?

一般的なほくろの大部分は良性で、悪性化することはまれです。しかし、前述のABCDEルールに該当するようなほくろは、悪性黒色腫の可能性を考慮する必要があります。

悪性黒色腫は、日本では年間10万人あたり1〜2人程度の発症率で、皮膚がんの中では比較的まれですが、早期発見・早期治療が非常に重要です。

気になるほくろがある場合は、自己判断せず、専門医の診察を受けることが大切です。

妊娠中や授乳中でも手術できますか?

妊娠中や授乳中でも、局所麻酔を使用したほくろの手術は可能です。局所麻酔薬は全身への影響が少なく、胎児や母乳への影響もほとんどありません。

ただし、緊急性がない場合は、出産後や授乳終了後に手術を延期することもあります。個々の状況に応じて、産科医と相談の上、判断します。

妊娠中はホルモンの影響でほくろが濃くなったり、大きくなったりすることがありますが、多くの場合、出産後に元に戻ります。

ほくろ除去における形成外科の役割

美容と機能の両立

形成外科の最大の強みは、美容面と機能面の両方を考慮した治療を提供できることです。

ほくろを単に除去するだけでなく、除去後の外見や機能を最適化することを目指します。特に顔面など、外見が重要な部位では、この専門性が大きな意味を持ちます。

複雑な症例への対応

大きなほくろ、深いほくろ、重要な構造物に近いほくろなど、複雑な症例では、形成外科の専門的な技術が必要になります。

再建術を含む高度な手術計画、精密な手術手技、術後の長期的なフォローアップなど、形成外科ならではの包括的なケアが提供されます。

チーム医療の中核

悪性腫瘍が疑われる場合や、全身疾患を伴う場合など、形成外科医は皮膚科医、腫瘍内科医、病理医などと連携し、チーム医療の一員として最適な治療を提供します。

まとめ

ほくろの形成外科手術は、美容的な仕上がりと機能の保持を重視した、専門性の高い治療法です。

形成外科医は、精密な手術手技と繊細な縫合技術を駆使し、ほくろを完全に除去しながら、傷跡を最小限にすることを目指します。切除縫縮術やくり抜き法などの方法があり、ほくろの大きさ、部位、性質に応じて最適な方法が選択されます。

手術は通常、局所麻酔下で日帰りで行われ、手術時間も比較的短時間です。術後は適切なケアにより、多くの場合、時間とともに傷跡は目立たなくなります。

一定の条件を満たせば健康保険が適用され、経済的な負担も軽減されます。切除した組織は病理検査に提出され、診断の確実性も高まります。

ほくろでお悩みの方は、その種類や状態を正確に診断し、最適な治療方法を提案できる専門医に相談することをお勧めします。特に、美容的な仕上がりを重視したい場合、大きなほくろや複雑な部位のほくろの場合は、形成外科での治療が良い選択肢となるでしょう。

当院では、形成外科専門医が、患者さん一人ひとりの状態とご希望に合わせた、最適なほくろ治療を提供しています。気になるほくろがある方は、お気軽にご相談ください。

参考文献

  1. 日本皮膚科学会「皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン」 https://www.dermatol.or.jp/modules/guideline/
  2. 日本形成外科学会 https://www.jsprs.or.jp/
  3. 国立がん研究センター「皮膚がん」 https://ganjoho.jp/public/cancer/melanoma/index.html
  4. 厚生労働省「医療安全に関する情報」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/i-anzen/index.html
  5. 日本皮膚科学会「色素性母斑」 https://www.dermatol.or.jp/qa/qa11/index.html
  6. 日本形成外科学会「形成外科で扱う疾患」 https://www.jsprs.or.jp/general/disease/

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

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佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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