ウゴービ(セマグルチド)による肥満症治療

日本初の肥満症治療薬として承認された革新的な薬剤について


はじめに

近年、日本における肥満症患者数の増加は深刻な社会問題となっています。厚生労働省の調査によると、BMI(Body Mass Index)25以上の肥満者は男性で約31%、女性で約21%に達し、さらに増加傾向にあります。肥満症は単なる見た目の問題ではなく、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症、睡眠時無呼吸症候群など、様々な健康障害を引き起こすリスク因子として知られています。

これまで日本における肥満症の薬物治療は非常に限られており、主にサノレックス(マジンドール)という食欲抑制薬のみが使用されていました。しかし、サノレックスは使用期間が3ヶ月に限定され、依存性のリスクもあることから、長期的な肥満症治療には課題が残されていました。

そのような状況の中、2023年3月に厚生労働省より承認され、2024年2月に発売開始となった「ウゴービ(Wegovy)」は、日本の肥満症治療に革命をもたらす可能性を秘めた画期的な薬剤です。ウゴービは、GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)受容体作動薬という新しいカテゴリーの薬剤で、食欲抑制と代謝改善により、安全かつ効果的な体重減少を実現します。

本コラムでは、ウゴービの作用機序から臨床効果、使用方法、副作用、注意点に至るまで、医学的根拠に基づいた詳細な情報をわかりやすく解説いたします。

ウゴービとは何か

基本情報

ウゴービ(一般名:セマグルチド)は、ノボ ノルディスク ファーマが開発・製造する肥満症治療薬です。有効成分であるセマグルチドは、すでに2型糖尿病治療薬として「オゼンピック皮下注」や「リベルサス錠」という名称で広く使用されている成分ですが、ウゴービでは肥満症治療に特化した用量設計となっています。

ウゴービは週1回の皮下注射で使用する持続性GLP-1受容体作動薬に分類されます。使い切りタイプの専用注射器(プレフィルドペン)を使用することで、患者さん自身が自宅で簡単に投与できるよう設計されています。

開発の背景

GLP-1は、もともと人体で自然に産生されるホルモンの一種です。食事摂取後に小腸のL細胞から分泌され、血糖値の調節や食欲の抑制に重要な役割を果たしています。しかし、天然のGLP-1は体内で急速に分解されてしまうため、薬剤としての応用には工夫が必要でした。

セマグルチドは、天然のGLP-1と94%の相同性を持つヒトGLP-1アナログです。分子構造に特殊な修飾を加えることで、体内での安定性を大幅に向上させ、週1回の投与でも十分な効果を発揮できるようになりました。この技術革新により、実用性の高い肥満症治療薬として実現したのがウゴービです。

ウゴービの作用機序

GLP-1受容体作動薬としての働き

ウゴービの主な作用機序を理解するためには、まずGLP-1の生理的役割について理解する必要があります。GLP-1は「インクレチン」と呼ばれるホルモンの一種で、食後の血糖調節において重要な役割を担っています。

GLP-1の主な生理作用は以下の通りです:

  1. 膵β細胞からのインスリン分泌促進:血糖値が高い時のみインスリン分泌を促進するため、低血糖のリスクが少ない
  2. 膵α細胞からのグルカゴン分泌抑制:不必要な糖新生を抑制し、血糖上昇を防ぐ
  3. 胃排出能の遅延:食物の胃からの排出を遅らせ、急激な血糖上昇を抑制
  4. 中枢神経系への作用:視床下部の摂食中枢に作用し、食欲を抑制
  5. 心血管保護作用:血管内皮機能の改善や抗炎症作用

食欲抑制メカニズム

ウゴービによる体重減少の主要なメカニズムは、中枢神経系への作用による食欲抑制です。脳の視床下部には摂食行動をコントロールする神経回路が存在し、GLP-1受容体が豊富に発現しています。

セマグルチドがこれらのGLP-1受容体に結合することで、以下のような作用が発揮されます:

  1. 満腹中枢の活性化:少量の食事でも満腹感を感じやすくなる
  2. 食欲中枢の抑制:食べたいという欲求そのものが軽減される
  3. 報酬系への影響:高カロリー食品への嗜好性が低下する

代謝改善効果

食欲抑制に加えて、ウゴービは体の代謝機能にも直接的な影響を与えます:

  1. 胃排出遅延による満腹感の持続:食物が胃に長時間留まることで、食後の満腹感が持続し、間食の欲求が減少
  2. 基礎代謝の改善:褐色脂肪細胞の活性化により、エネルギー消費量が増加
  3. インスリン感受性の向上:筋肉や肝臓でのグルコース取り込みが改善
  4. 脂肪分解の促進:アディポネクチンなどの善玉ホルモンの分泌が増加

適応症と使用条件

保険適用の条件

ウゴービの保険適用には、厚生労働省が定めた厳格な条件があります。これらの条件は、薬剤の適正使用と医療費の適切な使用を目的として設定されています。

患者の適応条件:

  1. 基礎疾患の存在
    • 高血圧、脂質異常症、2型糖尿病のいずれか1つ以上の診断を受けている
  2. BMIに関する条件
    • BMI 35 kg/m²以上、または
    • BMI 27 kg/m²以上かつ肥満に関連する健康障害を2つ以上有する
  3. 既治療歴
    • 適切な食事療法・運動療法を6ヶ月以上実施しても十分な効果が得られない
    • この間、2ヶ月に1回以上の管理栄養士による栄養指導を受けている

肥満に関連する健康障害

ウゴービの適応判断において重要な「肥満に関連する健康障害」には以下が含まれます:

  1. 代謝系疾患
    • 2型糖尿病
    • 耐糖能異常
    • インスリン抵抗性症候群
  2. 循環器疾患
    • 高血圧
    • 心血管疾患(冠動脈疾患、心不全など)
  3. 脂質代謝異常
    • 脂質異常症(高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高中性脂肪血症)
  4. 呼吸器疾患
    • 睡眠時無呼吸症候群
    • 肥満低換気症候群
  5. 運動器疾患
    • 変形性関節症(膝関節、股関節)
    • 腰痛症
  6. 消化器疾患
    • 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)

処方可能な医療機関の条件

ウゴービの処方には、医療機関と医師に対しても厳格な要件が設定されています:

  1. 医師の条件
    • 日本糖尿病学会、日本内科学会、日本循環器学会のいずれかの専門医資格を有する常勤医師が在籍
  2. 施設の条件
    • 上記学会の教育研修施設として認定されている
    • 管理栄養士が常勤または定期的に栄養指導を実施できる体制
  3. 投与期間の制限
    • 最大投与期間は68週間(約1年4ヶ月)
    • 発売から1年間は2週間分までの処方制限

これらの厳格な条件により、現在ウゴービを処方できる医療機関は主に大学病院や総合病院などの大規模施設に限られているのが現状です。

臨床効果と試験結果

STEP臨床試験プログラム

ウゴービの承認は、「STEP(Semaglutide Treatment Effect in People with obesity)臨床試験プログラム」と呼ばれる大規模な国際共同臨床試験の結果に基づいています。このプログラムは、過体重または肥満の成人約4,700名を対象とした複数の第III相臨床試験で構成されています。

STEP6試験(東アジア人対象試験)

日本人を含む東アジア人584名を対象としたSTEP6試験では、特に注目すべき結果が得られました。

試験デザイン:

  • 対象:BMI 27 kg/m²以上かつ1つ以上の体重関連合併症を有する、または BMI 35 kg/m²以上の成人
  • 期間:68週間
  • 比較群:ウゴービ 2.4mg群、1.7mg群、プラセボ群
  • 併用治療:食事療法・運動療法

主要結果(68週時点):

治療群体重減少率(平均)5%以上減少達成率10%以上減少達成率ウゴービ 2.4mg-13.2%83%61%ウゴービ 1.7mg-9.6%72%42%プラセボ-2.1%21%7%

この結果は、アジア人においてもウゴービが非常に高い体重減少効果を示すことを証明しています。体重100kgの患者さんであれば、平均して13.2kgの体重減少を期待できることになります。

合併症への効果

STEP6試験では、体重減少に加えて肥満に関連する合併症の改善も確認されました:

  1. 血糖管理の改善
    • HbA1c:2.4mg群で-0.9%、1.7mg群で-0.7%の改善
    • 空腹時血糖:有意な改善を確認
  2. 血圧の改善
    • 収縮期血圧:2.4mg群で-7.4mmHg、1.7mg群で-5.1mmHgの低下
    • 拡張期血圧:両群で有意な改善
  3. 脂質プロファイルの改善
    • 中性脂肪:両群で有意な低下
    • HDLコレステロール:有意な増加

国際試験結果との比較

欧米人を対象とした他のSTEP試験でも、同様に優れた効果が確認されています:

STEP1試験(1,961名、68週間):

  • ウゴービ 2.4mg群:-14.9%の体重減少
  • 5%以上減少達成率:86.4%
  • 15%以上減少達成率:50.5%

これらの結果は、人種を問わずウゴービが一貫して高い減量効果を示すことを証明しています。

使用方法と投与スケジュール

投与方法

ウゴービは週1回、皮下注射による投与を行います。患者さんが自宅で自己注射できるよう、使いやすい専用の注射器(プレフィルドペン)が提供されています。

注射部位:

  • 腹部(最も推奨される部位)
  • 太もも(前面または外側)
  • 上腕(二の腕の外側)

注射のコツ:

  • 毎回注射部位をローテーションし、前回と少なくとも1cm以上離れた場所に注射
  • 同じ曜日、同じ時間帯での投与を心がける
  • 食事のタイミングに関係なく投与可能

用量漸増スケジュール

ウゴービは副作用を最小限に抑えるため、段階的に用量を増加させる「用量漸増」方式を採用しています。

標準的な投与スケジュール:

週数投与量主な目的1-4週0.25mg体を薬に慣らす導入期5-8週0.5mg初期の効果発現期9-12週1.0mg効果の確立期13-16週1.7mg効果の最適化期17週以降2.4mg維持療法期

このスケジュールにより、多くの患者さんで副作用を軽減しながら治療効果を最大化できることが臨床試験で確認されています。

効果判定と継続の基準

ウゴービの治療効果は、以下の指標で定期的に評価します:

  1. 体重変化
    • 開始から3-4ヶ月で5%以上の体重減少が目標
    • 効果不十分な場合は治療中止を検討
  2. 合併症の改善
    • 血糖値、血圧、脂質などの改善
    • 睡眠時無呼吸症候群の症状改善
  3. 生活の質(QOL)の向上
    • 日常生活動作の改善
    • 心理的ウェルビーイングの向上

副作用について

主な副作用(頻度5%以上)

ウゴービの副作用の大部分は消化器系症状であり、多くは治療開始初期や増量時に現れ、時間の経過とともに軽減する傾向があります。

STEP6試験で報告された主な副作用:

副作用ウゴービ2.4mg群ウゴービ1.7mg群プラセボ群便秘24.1%18.0%-悪心(吐き気)15.6%15.0%6.7%下痢13.1%19.0%7.7%嘔吐7.5%8.0%-食欲減退6.5%5.0%-腹部不快感6.0%9.0%-

副作用の対処法

消化器症状への対処:

  1. 吐き気・嘔吐
    • 少量ずつ頻回に食事を摂取
    • 脂っこい食事や香辛料を避ける
    • 消化の良い食品を選択(おかゆ、うどんなど)
    • 十分な水分摂取
  2. 便秘
    • 食物繊維の多い食品を摂取
    • 適度な運動を心がける
    • 十分な水分摂取
    • 必要に応じて医師と相談の上、緩下剤の使用を検討
  3. 下痢
    • 脱水予防のための水分・電解質補給
    • 刺激の少ない食事
    • プロバイオティクスの摂取を検討

重大な副作用(稀だが注意が必要)

以下の症状が現れた場合は、直ちに医療機関を受診する必要があります:

  1. 急性膵炎
    • 症状:持続的で激しい腹痛、背部痛、悪心・嘔吐、発熱
    • 対処:即座に治療中止し、緊急受診
  2. 胆嚢炎・胆石症
    • 症状:右上腹部の激痛、発熱、黄疸
    • 対処:速やかな医療機関受診
  3. 低血糖(特に糖尿病薬併用時)
    • 症状:冷汗、動悸、手の震え、意識混濁
    • 対処:糖分補給後、医師に相談
  4. 急性腎障害
    • 症状:尿量減少、むくみ、倦怠感
    • 対処:脱水の改善と速やかな受診

副作用軽減のための生活指導

副作用を最小限に抑えるための生活習慣の工夫:

  1. 食事に関する工夫
    • 一度に大量に食べず、少量を複数回に分けて摂取
    • ゆっくりよく噛んで食べる
    • 食後すぐに横にならない
    • アルコールの摂取を控える
  2. 水分摂取
    • 1日1.5-2Lの十分な水分摂取
    • 特に下痢や嘔吐がある場合は電解質も補給
  3. 運動習慣
    • 軽度から中程度の有酸素運動
    • 消化機能の改善と便秘予防

注意事項と禁忌

絶対禁忌(使用してはいけない場合)

以下に該当する患者さんには、ウゴービを使用できません:

  1. 本剤成分への過敏症
    • セマグルチドまたは添加物に対するアレルギー歴
  2. 糖尿病関連疾患
    • 糖尿病性ケトアシドーシス
    • 糖尿病性昏睡または前昏睡状態
    • 1型糖尿病
  3. 緊急事態
    • 重症感染症
    • 手術前後の状態
    • 重篤な外傷

慎重投与(注意深い使用が必要)

以下の場合は、リスクとベネフィットを慎重に検討した上で使用を判断します:

  1. 消化器疾患
    • 胃腸障害の既往歴
    • 炎症性腸疾患
    • 胃排出遅延を来す疾患
  2. 内分泌疾患
    • 甲状腺疾患(特に髄様癌の既往・家族歴)
    • 多発性内分泌腫瘍症2型
  3. 腎・肝機能障害
    • 重度の腎機能障害
    • 重度の肝機能障害
  4. 精神疾患
    • 重度のうつ病
    • 自殺念慮の既往

妊娠・授乳・小児への使用

  1. 妊娠中の使用
    • 妊娠中または妊娠の可能性がある女性には禁忌
    • 動物試験で胎児毒性が確認されている
    • 妊娠を計画する2ヶ月前には投与を中止
  2. 授乳中の使用
    • 治療上の有益性と授乳の有益性を比較検討
    • 必要に応じて授乳中止を考慮
  3. 小児への使用
    • 18歳未満での安全性・有効性は確立されていない
    • 保険適用の対象外

併用注意薬

以下の薬剤との併用時は注意が必要です:

  1. 糖尿病治療薬
    • インスリン製剤(低血糖リスク増加)
    • SU薬(低血糖リスク増加)
    • SGLT2阻害薬(脱水リスク増加)
  2. 経口薬全般
    • 胃排出遅延により吸収に影響する可能性
    • 服用タイミングの調整が必要な場合

従来治療薬との比較

サノレックス(マジンドール)との比較

日本で長年使用されてきたサノレックスと比較すると、ウゴービは多くの点で優位性を示します:

有効性の比較:

  • サノレックス:3-6ヶ月で5-10%の体重減少
  • ウゴービ:68週で平均13.2%の体重減少

安全性の比較:

  • サノレックス:依存性のリスク、使用期間制限(最大3ヶ月)
  • ウゴービ:依存性なし、長期使用可能(最大68週)

適応患者の範囲:

  • サノレックス:BMI 35以上に限定
  • ウゴービ:BMI 27以上(条件付き)で幅広い患者に適用可能

他のGLP-1受容体作動薬との比較

同じセマグルチドを含有する他の製剤との比較:

オゼンピック皮下注(糖尿病治療薬):

  • 最大用量:1.0mg(週1回)
  • ウゴービ:2.4mg(週1回)
  • 体重減少効果:ウゴービが優勢

リベルサス錠(糖尿病治療薬、経口薬):

  • 最大用量:14mg(1日1回)
  • 生物学的利用率が低い(約1%)
  • 体重減少効果:ウゴービが大幅に優勢

保険適用と医療経済性

薬価と費用負担

ウゴービの薬価は以下のように設定されています(2024年現在):

規格薬価(1本当たり)0.25mg1,923円0.5mg3,281円1.0mg6,060円1.7mg8,101円2.4mg10,740円

月額費用の例(維持期:2.4mg週1回):

  • 薬価:10,740円 × 4回 = 42,960円/月
  • 3割負担:約12,900円/月
  • 1割負担:約4,300円/月

医療経済学的価値

ウゴービの使用により期待される医療経済効果:

  1. 直接医療費の削減
    • 糖尿病合併症の予防・改善
    • 心血管疾患リスクの低減
    • 整形外科疾患の軽減
  2. 間接的効果
    • 生活の質(QOL)の向上
    • 労働生産性の改善
    • 介護負担の軽減

海外の研究では、ウゴービによる治療は長期的に見て医療費削減効果があることが報告されています。

今後の展望と課題

適応拡大の可能性

現在の厳格な適応基準について、今後以下のような拡大が検討される可能性があります:

  1. BMI基準の緩和
    • 現在:BMI 27以上(条件付き)
    • 将来:BMI 25以上への拡大の可能性
  2. 合併症要件の見直し
    • より軽微な合併症でも適応となる可能性
    • 予防的使用の検討
  3. 処方施設の拡大
    • 専門医による処方要件の緩和
    • クリニック・診療所での処方解禁

新しい適応症の開発

肥満症以外への適応拡大研究も進行中です:

  1. 心血管疾患の予防
    • SELECT試験:心血管イベント抑制効果を検証
    • 既に海外では適応承認済み
  2. 非アルコール性脂肪性肝疾患(NASH)
    • 肝機能改善効果の検証
    • 将来的な適応拡大の可能性
  3. 睡眠時無呼吸症候群
    • 体重減少による症状改善効果
    • 専用の臨床試験が進行中

技術革新と新剤形

より使いやすい剤形の開発も進んでいます:

  1. 経口製剤の改良
    • 生物学的利用率の向上
    • 服用回数の最適化
  2. 長時間作用型製剤
    • 月1回投与製剤の開発
    • 患者コンプライアンスの向上
  3. 配合剤の開発
    • 他の肥満症治療薬との配合
    • 相乗効果の期待

患者さんへのアドバイス

ウゴービ治療を成功させるポイント

  1. 医師との密な連携
    • 定期的な受診と検査
    • 副作用や効果について正直に報告
    • 疑問点は遠慮なく質問
  2. 生活習慣の改善
    • 食事療法の継続
    • 適度な運動習慣
    • 十分な睡眠
  3. 長期的な視点
    • 短期間での劇的な変化を期待しない
    • 健康的な減量ペースを理解する
    • リバウンド予防の重要性

よくある質問と回答

Q: ウゴービはいつから効果が現れますか? 

A: 個人差がありますが、多くの患者さんで投与開始から4-8週頃から体重減少が始まります。最大効果を得るには数ヶ月の継続が必要です。

Q: 副作用が強い場合はどうすれば良いですか?

A: 自己判断で中止せず、必ず医師に相談してください。用量調整や対症療法により改善できる場合が多くあります。

Q: 治療終了後のリバウンドが心配です

A: 治療中に身につけた食習慣・運動習慣を維持することが重要です。医師と相談しながら段階的な減量・中止を計画します。

Q: 他の肥満治療薬との併用は可能ですか?

A: 基本的に併用は推奨されていません。医師の判断により慎重に検討される場合があります。

まとめ

ウゴービ(セマグルチド)は、日本における肥満症治療に革命をもたらす画期的な薬剤です。GLP-1受容体作動薬としての作用機序により、従来の治療薬では達成困難だった大幅かつ持続的な体重減少を実現します。

ウゴービの主な特徴:

  1. 高い有効性:日本人を含む臨床試験で平均13.2%の体重減少を達成
  2. 安全性:依存性がなく、長期使用が可能
  3. 包括的効果:体重減少に加え、合併症の改善も期待
  4. 患者の利便性:週1回の自己注射で治療継続が容易

一方で、保険適用には厳格な条件があり、現在は限られた医療機関でのみ処方可能という課題もあります。また、消化器系副作用の管理や、治療終了後のリバウンド予防など、適切な使用には医師の専門的な管理が不可欠です。

肥満症は単なる美容の問題ではなく、様々な健康障害を引き起こす深刻な疾患です。ウゴービという新しい治療選択肢により、多くの患者さんが健康的な体重を取り戻し、生活の質を向上させることが期待されます。

治療を検討される方は、まずは信頼できる医療機関で専門医による適切な診断・評価を受けることをお勧めいたします。ウゴービが皆様の健康管理に貢献できることを心より願っております。


参考文献

  1. Davies M, et al. Semaglutide 2·4 mg once a week in adults with overweight or obesity, and type 2 diabetes (STEP 2): a randomised, double-blind, double-dummy, placebo-controlled, phase 3 trial. Lancet. 2021;397(10278):971-984.
  2. Kadowaki T, et al. Semaglutide once a week in adults with overweight or obesity, with or without type 2 diabetes in an east Asian population (STEP 6): a randomised, double-blind, double-dummy, placebo-controlled, phase 3a trial. Lancet Diabetes Endocrinol. 2022;10(3):193-206.
  3. Wilding JPH, et al. Once-Weekly Semaglutide in Adults with Overweight or Obesity. N Engl J Med. 2021;384(11):989-1002.
  4. 厚生労働省. ウゴービ皮下注の最適使用推進ガイドライン. 2023年11月.
  5. 日本肥満学会. 肥満症診療ガイドライン2022. 2022年.
  6. ノボ ノルディスク ファーマ株式会社. ウゴービ皮下注 医薬品インタビューフォーム. 2024年2月.
  7. Kushner RF, et al. Semaglutide 2.4 mg for the Treatment of Obesity: Key Elements of the STEP Trials 1 to 5. Obesity (Silver Spring). 2020;28(6):1050-1061.
  8. 糖尿病学会/内分泌学会/循環器学会合同. GLP-1受容体作動薬適正使用に関する委員会報告書. 2023年.

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監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

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佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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