はじめに
皮膚にできる小さなしこりやできものを見つけて、「これは一体何だろう?」と心配になったことはありませんか?皮膚のすぐ下にコロコロとしたしこりができて、数か月しても消えない場合は粉瘤を疑います。このしこりが粉瘤(ふんりゅう)という良性の皮膚腫瘍である可能性があります。
粉瘤は日本人にとって非常に身近な皮膚疾患の一つで、形成外科や皮膚科で診察される良性腫瘍の中でも、粉瘤は比較的頻度が高い疾患です。しかし、多くの方が「どの病院の何科を受診すればよいのか」で悩まれています。
この記事では、粉瘤の基本的な知識から、適切な診療科の選び方、治療法、予防策まで、専門医の視点から詳しく解説いたします。正しい知識を身につけることで、適切な時期に適切な治療を受けることができるようになるでしょう。

粉瘤(アテローム)とは何か
粉瘤の定義と特徴
粉瘤は、医学的には「表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)」や「アテローム」とも呼ばれています。皮膚の内側に「嚢胞(のうほう)」と呼ばれる袋状の組織ができ、その中に本来剥がれ落ちるはずの垢や皮脂などの老廃物が溜まってしまうことでしこりとして盛り上がります。
粉瘤の最も重要な特徴は、ニキビだと勘違いされることがありますが、粉瘤はニキビと異なり自然治癒することはありませんという点です。これは、袋状になった組織を完全に除去しない限り治すことができませんからです。
粉瘤の見た目と特徴的な症状
粉瘤には以下のような特徴的な見た目があります:
外見の特徴
- 粉瘤は半球状に盛り上がったしこりで、サイズは数mm~数cm、中には数十㎝にまで巨大化することもあります
- 粉瘤では中央に小さな皮膚表面につながる出口があり、その部分が黒く点で見えることがあります
- 粉瘤の中で感染が起こったときには、膿が溜まったり痛みを感じたりします
触感と内容物
- しこりを強く圧迫すると、開口部から不快なニオイを伴うドロドロとした内容物が出てくることがあり、これらの特徴に当てはまる場合は、粉瘤の可能性が高い
- この粥状の物はよく脂肪のカタマリと言われますが、実は垢のカタマリです
ただし、ただし、全ての粉瘤に穴が開いているわけではありませんため、見た目だけでは判断が困難な場合もあります。
粉瘤ができやすい部位
粉瘤は身体のさまざまな部位に発生する可能性がありますが、特にできやすい場所があります。
頻発部位
- 身体のどこにでも生じますが、特に顔や耳の後ろ、首、背中などにできやすい傾向があります
- 粉瘤は、顔や首、耳たぶ、背中、わきの下、お尻、鼠径部などのデリケートゾーンなど体の様々な場所にでき、皮膚のあるところであればどこにでもできる可能性があります
部位別の特徴
- 頭部:外毛根鞘性嚢腫という粉瘤の一種ができやすい
- 首・腕・わきの下:多発性毛包嚢腫は単発のこともありますが、首、腕、わきの下などに20~30個ほど多発することもあります
- 手のひら・足の裏:手のひら、足の裏にできる粉瘤の場合は、けがやいぼができるウイルスへの感染をきっかけに発生することもあると考えられています
粉瘤の症状と進行過程
初期症状
粉瘤の初期段階では、多くの場合、目立った症状はありません。多くの場合症状はありませんが、以下のような変化に気づくことがあります:
初期の変化
- 皮膚表面の小さな盛り上がり
- 触ると動く小さなしこり
- 中央部に見える黒い点(すべてにあるわけではない)
症状の進行
時間の経過とともに大きくなっていきますという特徴があるため、以下のような変化が現れます:
サイズの変化
- 大きさは直径1~2cm大、大きいものは10cm以上にもなります
- 時間の経過とともに老廃物が蓄積していくため、粉瘤が大きくなっていくことがあります
内容物の変化
- 粉瘤を強く圧迫すると、ドロドロとした粥状の白い物質が出てきます
- 内容物には特有の臭いがある場合が多い
炎症を起こした場合の症状
粉瘤が炎症を起こすと、症状は劇的に変化します:
炎症性粉瘤の症状
- 粉瘤に細菌が侵入して感染すると、膿がたまって大きさを増し、赤く腫れ上がって痛みを伴います
- 患部の熱感
- 強い痛み
- 膿の排出
風邪を引いたり免疫力が弱くなったりしたときに、この穴を通じて感染を起こし、袋の中に膿が溜まりますため、体調不良時には特に注意が必要です。
粉瘤の原因
原因の解明状況
現在のところ、粉瘤は、皮膚の炎症や腫れの有無、しこりの大きさなど、症状によって受診先を判断し、早めの処置を必要としますが、その原因については十分に解明されていません。実はその原因はまだほとんど明らかになっていませんというのが医学界の現状です。
考えられる原因
研究により、以下のような要因が粉瘤の発生に関与している可能性が指摘されています:
外的要因
- 表皮の一部が真皮に入り込むことで粉瘤が形成される可能性があります
- 打撲・外傷などの痕やニキビ痕にできること
- 皮膚への慢性的な刺激
感染要因
- ウイルス性のイボの感染をきっかけとして足の裏のイボから粉瘤になること
- ヒトパピローマ(乳頭腫)ウイルスに感染することでできることもありる
- 手のひらや足の裏にできる粉瘤は、特定のウイルスが原因とされることがあります
体質的要因
- 清潔にしていても体質でなりやすい人もおり
- 粉瘤は男性の方ができやすいと言われています
- 体質的に粉瘤ができやすい方もいらっしゃいます
発生メカニズム
外傷や何らかの原因で表皮細胞(皮膚の一番表の細胞。最終的には垢になって剥がれ落ちます)が皮膚の深いところ(真皮)に入り込んでしまうためにできるものです。真皮層に入り込んだ表皮細胞は袋状の壁を形成します。
その結果、本来なら垢となってはがれ落ちてなくなるはずが、袋の外に出られずにどんどん蓄積され、少しずつ大きくなってシコリとして触れるようになりますのです。
粉瘤は何科を受診すべきか?
粉瘤の治療を受ける際に最も悩ましいのが、「どの診療科を受診すればよいか」という問題です。粉瘤は皮膚疾患のひとつです。そのため粉瘤が疑われる場合には、皮膚科を受診してください。また、形成外科でも診察や処置は可能です。
皮膚科を受診する場合
皮膚科の特徴
- 皮膚の病気全般に詳しい皮膚科でとりあえず診察を受けて診断してもらってもよいでしょう
- 厚生労働省によると形成外科の病院・クリニック数は皮膚科の半分なので、比較的身近にあるのは皮膚科です
- 粉瘤は皮膚科でよくある一般的な疾患ですので、皮膚科の医師であれば簡単に見分けることができます
皮膚科が適している場合
- 粉瘤かニキビかを知りたいケースや、傷跡が多少残ってもあまり気にならない場合には皮膚科への受診が適しています
- 診断を確定したい場合
- 炎症を起こしている場合の初期治療
- 粉瘤ではなく、薬物療法などで治癒が見込める場合には皮膚科ではよりスムーズに治療を受けられる可能性が高い
形成外科を受診する場合
形成外科の特徴
- 形成外科は、傷や変形をただ修復するだけでなく「綺麗に治す」ための専門的な知識や技術を持って治療に当たる診療科です
- 形成外科は、皮膚や皮下組織の腫瘍・できものに対する外科的処置を専門としている診療科です
- 粉瘤で受診する場合、皮膚科・形成外科のどちらでも治療は可能ですが、綺麗に治すという点では形成外科での治療が適しています
形成外科が適している場合
- できるだけ綺麗に治したい、日帰りで手術を受けたい場合には形成外科への受診が適しています
- 特に目立つ部分に粉瘤がある場合には、形成外科受診をおすすめしています
- 初めから手術を考えているのであれば、形成外科を受診する方が流れはスムーズです
- 顔や首など、見た目が気になる部位の治療
診療科選択の判断基準
症状の状態による選択
- 炎症がない場合:皮膚科・形成外科どちらでも可能
- 炎症がある場合:粉瘤が赤く腫れて痛みを伴う場合は、感染による炎症が進行している可能性があります。こうした状態ではすぐに手術を行う事ができないため、まず皮膚科で抗生物質を使って炎症を抑える処置を受けるのが一般的です
治療目標による選択
- 診断重視:皮膚科
- 美容面重視:形成外科
- 手術の傷跡を最小限にしたい:形成外科専門医
専門医の重要性 日本形成外科学会が認定する「形成外科専門医」が治療を行っているかどうかを確かめておくとより安心でしょう。専門医による治療を受けることで、より安全で効果的な治療が期待できます。
粉瘤の治療法
基本的な治療方針
粉瘤の基本的な治療法は、手術となります。袋状の組織をすべて取り除かない場合は再発することがあるため、袋そのものを取り除く必要があります。
粉瘤の治療には主に2つの手術方法があります:
くり抜き法(へそ抜き法)
手術方法 円筒形の特殊なメスで4~5㎜ほどの小さな穴をあけて、粉瘤の中身を押し出してから袋を丁寧取り除く「くり抜き法(へそ抜き法)」があります。
くり抜き法の特徴
- くり抜き法は、切開範囲が小さいため傷が目立ちにくいのが特徴です
- 手術時間が5〜20分程度と短く、患者さまの負担が少ない治療法です
- 小さな穴なので手術後に縫合を行う必要もありません
適応症例
- 小さめの粉瘤
- 炎症を起こしていない粉瘤
- 傷跡を最小限にしたい場合
切開法(従来法)
手術方法 粉瘤の真上の皮膚を切開し、粉瘤をまるごと摘出する手術法です。
切開法の特徴
- くり抜き法に比べて切開部分が大きくなりますが、再発の可能性が低いため、患者さまの状態によっては切開法が適切な場合もあます
- メスを使った切除方法のメリット・デメリットとして、再発リスクが低いことが挙げられる
- 大きな粉瘤や癒着が強い粉瘤、炎症性の粉瘤など、さまざまな状態の粉瘤に対応可能です
手術の流れ 粉瘤の開口部(”へそ”)を含めて皮膚と嚢腫(袋)を合併切除します。”へそ”を残すと再発する可能性があるため確実に切除することが重要です。
手術時間と入院の必要性
手術時間
- 手術時間は30分から1時間程度です
- 手術自体は5~10分程度で、長くても20分以上になることはほとんどありません(小さな粉瘤の場合)
入院の必要性
- 大きさにもよりますがほとんどが日帰り手術可能で
- 当院では必要性がないと判断できれば日帰り手術を行なっており、基本的に入院も不要です
麻酔について
粉瘤の手術は基本的に局所麻酔で行われます:
- 切開法またはくりぬき法により腫瘍を摘出します。局所麻酔を行う際の注射針が刺さる時の痛みを軽減するために極細針を使用しています
- 日帰り手術が可能
- 手術中の痛みはほとんどない
炎症性粉瘤(感染性粉瘤)について
炎症が起こる原因
粉瘤が炎症を起こす原因は複数あります:
細菌感染による炎症
- 風邪を引いたり免疫力が弱くなったりしたときに、この穴を通じて感染を起こし、袋の中に膿が溜まります
- 不適切な自己処置による細菌の侵入
非感染性の炎症 粉瘤は炎症を起こして赤く腫れ、痛みを起こすことがあります。これまで炎症は主に細菌感染が原因で起きているとされていましたが、そうではない理由で炎症が起こるケースがアメリカで報告されています。
圧力によってこの嚢胞がつぶれて老廃物が皮膚内部に広がり、それによって炎症反応が起こっているというものです。
炎症性粉瘤の治療
炎症を起こした粉瘤の治療は段階的に行われます:
第一段階:炎症の鎮静化
- 軽い炎症であれば、基本的に抗生剤を内服し数日間で炎症が治ってきます
- また、粉瘤の炎症が強ければ、腫れた部分を切開して中の膿を出す切開排膿を行い、中にガーゼを入れて消毒する処置が必要となります
第二段階:根治手術
- この場合は数日間通院し、ガーゼ交換を繰り返して粉瘤の中をきれいにします。その後、ガーゼを除去し、2〜4週間経過を見ます
- 炎症が完全に治まってから袋の摘出手術を行う
炎症時の注意点
炎症を起こした粉瘤に対しては、以下の点に注意が必要です:
してはいけないこと
- 赤く腫れているときに膿を出そうとして無理に圧迫すると、袋が破れて脂肪織内に散らばり膿皮症という状態になる場合があり慢性化することもあります
- 膿が出て匂いがするような場合には、粉瘤を手で絞ったり針を刺したりして自分で処置してしまおうと考えるかもしれませんが、これは避けるべき
適切な対処法
- 無理に圧迫し内容物を排出することは避けて、早めに医師に相談し処置を受ける必要があります
- 速やかな医療機関受診
粉瘤と間違えやすい疾患
粉瘤と見た目が似ている皮膚疾患がいくつかあります。正確な診断を受けるためにも、これらの違いを理解しておくことが重要です。
ニキビとの違い
ニキビの特徴
- ニキビは毛穴に皮脂が詰まり発生します
- 大きさは炎症を起こしていても数mmです
- 自然治癒する場合がある
粉瘤との相違点
- 粉瘤は袋状の構造を持つ
- ニキビと異なり自然治癒することはありません
- サイズがより大きくなる傾向
脂肪腫との違い
脂肪腫は脂肪細胞からなる良性腫瘍で、粉瘤に比べると柔らかく、弾力があります。脂肪腫は周囲の組織と皮膜で分離しており、指で押すと皮膚とは別に動きます。
脂肪腫の特徴
- より柔らかい質感
- 皮膚との可動性がある
- 中央に黒い点がない
せつ(おでき)との違い
せつ(おでき)は、肥満体型の人や高齢者、糖尿病患者にできやすい皮膚疾患で、細菌感染が原因で発生します。
せつの特徴
- 細菌感染が明確な原因
- より急激な炎症症状
- 全身症状を伴う場合がある
その他の疾患
ガングリオン ガングリオンは手の指の付け根や手首に発生し、ゼリー状の物質が詰まった良性腫瘍です。
類似疾患の鑑別
- 粉瘤に似たできものとして皮様嚢腫、耳瘻孔、外歯瘻、毛巣洞、石灰化上皮腫などがありますが、切除の方法などは大きく粉瘤とは変わりません

粉瘤の予防法と日常生活での注意点
予防法の現状
皮膚の病気として珍しくない粉瘤ですが、実はその原因はまだほとんど明らかになっていませんため、粉瘤は発生原因があまり分かっていないため、予防法についても「これをすると粉瘤にならない」といった確実な予防法はありません。
身体が不衛生だとできやすいのでは?」と思われがちですが、粉瘤は清潔にしていても生じることがあります。
予防に役立つ可能性のある対策
確実な予防法はありませんが、以下のような対策が有効である可能性があります:
スキンケアの改善
- 肌を清潔に保つ、肌に刺激を与えないなど肌を良い状態に保っておくのに越したことはありません
- 日常生活の中で肌を清潔に保つことや、ホルモンバランスを整える生活習慣を心がけることが大切です
ターンオーバーの正常化 肌の細胞が生まれ変わる仕組みである「ターンオーバー」の周期が乱れると、皮脂や角質が溜まりやすくなることは事実です。
生活習慣の改善 ターンオーバーを乱れさせる主な要因には、生活習慣の乱れや紫外線、乾燥、ホルモンバランスの乱れなどがあるため、これらの影響をできる限り取り除くことは、粉瘤の予防につながる可能性があります。
日常生活での注意点
してはいけないこと
- 膿が出て匂いがするような場合には、粉瘤を手で絞ったり針を刺したりして自分で処置してしまおうと考えるかもしれませんが、これは危険
- きちんと膿を出しきれないと再発する可能性がありますし、針などから細菌が入り込み状態がさらに悪化することもあります
- 汚い手で触らないようにします
適切な対処法
- 自己判断で様子を見ず、皮膚科の受診を検討しましょう
- 気になっても無闇に触らない
- 清潔な環境を維持する
粉瘤治療の費用と保険適用
保険適用について
粉瘤の治療は基本的に保険診療の対象となります:
保険適用の範囲
- 粉瘤は良性の皮膚腫瘍のため、診察から治療までは保険診療です
- 診察、検査、手術、病理検査といった粉瘤の一連の治療には、健康保険の適用が受けられます
- 当院では、粉瘤の検査から診断、手術など一連の治療をすべて健康保険適用で行っています
自己負担額
- 医療費の3割または1割負担となりますので、経済的にも大きな負担なく治療を受けて頂けます
民間医療保険について
民間の医療保険に加入している場合には、契約内容などによって手術給付金が受けられることもあります。手術を検討されている方は、事前に保険会社への確認をお勧めします。
早期受診の重要性
なぜ早期受診が重要なのか
粉瘤は自然治癒しない疾患であるため、早期の医療機関受診が極めて重要です:
早期受診のメリット
- 大きくなってからでは切除した後の傷痕も目立ちますし、手術後の出血や感染などの合併症のリスクも大きくなります
- 悪化前の処置であれば比較的短い期間での治癒が見込めます
- 大きくなるほど、取り除く際の皮膚への負担が大きく、傷痕も残りやすくなります
遅れることのリスク
- 感染を生じた場合、すぐの腫瘍切除は困難なことが多く、最初に切開排膿をして、感染が落ち着いて傷が一旦治ってから、後日残っている腫瘍を切除する必要があります
- 炎症が進んでしまうと、手術までにしばらく通院が必要となります
受診の目安
以下のような場合には、速やかに医療機関を受診することをお勧めします:
必ず受診すべき症状
- 大きくなってきたり、痛み・赤みを伴うようになってきたりした場合には受診してください
- 急激なサイズの増大
- 強い痛みや発熱を伴う場合
- 膿の排出がある場合
早期受診が望ましい症状
- 皮膚の小さなしこりに気づいた時点
- 中央に黒い点が見える場合
- 圧迫すると内容物が出る場合
粉瘤の長期的な問題
悪性化のリスク
粉瘤は基本的に良性腫瘍ですが、稀に悪性化の報告があります:
悪性化の特徴
- また、稀ですが化膿や炎症を繰り返すと粉瘤の袋の壁から皮膚癌が発生することもあります
- ごく稀に悪性リンパ腫だったというケースもありますので、できるだけ小さいうちに治療することをお勧めします
- まれに癌化したという報告もあり、癌化は中高年男性のおしりに生じたものに多いとの報告があります
多発性の問題
きちんと治療しても多発する場合はその人の先天的な体質によるものが大きいです。体質的に粉瘤ができやすい方は、定期的な経過観察が重要です。
手術後の経過と注意点
術後の経過
傷跡の回復
- 1か月でも傷は目立たなくなってきますが、傷は3か月から6か月の経過で更に目立たなくなります
- 形成外科での手術では、傷跡がより目立ちにくくなるよう配慮される
術後の生活制限
- 手術当日から翌日の飲酒や運動を控えるなど、医師の指示に従って生活することが望ましいです
- 手術当日は入浴を控え、翌日以降はシャワー浴などを行い、医師と相談して入浴を開始してください
術後のフォローアップ
必要な処置
- 手術後は抗生剤投薬や、袋状構造物を内部洗浄するための通院が必要になるケースもあります
- 定期的な傷跡の確認
- 病理検査結果の確認
合併症のリスク 主なリスク:麻酔薬アレルギー、傷跡、ケロイド、内出血、疼痛、再発があります。これらのリスクについては、手術前に十分な説明を受けることが大切です。
アイシークリニック上野院での粉瘤治療
当院の特徴
アイシークリニック上野院では、粉瘤の診断から治療まで、患者さまお一人お一人に最適な医療を提供しております。経験豊富な医師が、症状や部位、患者さまのご希望を総合的に判断して、最適な治療方針をご提案いたします。
診療の流れ
初診時
- 詳しい問診と視診
- 必要に応じて超音波検査などの画像診断
- 治療方針の説明と相談
手術時
- 局所麻酔による日帰り手術
- 患者さまの負担を最小限にした手術
- 術後の詳しい説明と指導
当院をお勧めする理由
専門性
- 豊富な粉瘤治療経験
- 最新の治療技術の導入
- 患者さまの美容面への配慮
利便性
- JR上野駅からのアクセスの良さ
- 平日・土曜日の診療
- 完全予約制による待ち時間の短縮
よくある質問(FAQ)
A1. 自然に放置しても消えることはほとんどありません。また、放置していると時間とともに徐々に大きくなっていきますため、早期の治療をお勧めします。
A2. 局所麻酔を使用するため、手術中の痛みはほとんどありません。局所麻酔を行う際の注射針が刺さる時の痛みを軽減するために極細針を使用しています。
A3. デスクワークなどの軽作業であれば、翌日から可能な場合が多いです。ただし、手術部位や職種によって異なりますので、医師とご相談ください。
A4. “へそ”を残すと再発する可能性があるため確実に切除することが重要です。適切な手術により、再発率は大幅に低下します。
A5. 女性でデリケートゾーンにできたしこりだと婦人科や産婦人科を受診されることもありますが、基本的には皮膚科を受診すると良いでしょう。
粉瘤治療における最新の知見
炎症のメカニズムに関する新しい理解
最近の研究により、粉瘤の炎症メカニズムについて新しい知見が得られています。これまで炎症は主に細菌感染が原因で起きているとされていましたが、そうではない理由で炎症が起こるケースがアメリカで報告されています。
そして、このタイプの炎症は細菌感染で起こるものよりも多いことがわかってきていますため、治療方法も進化してきています。
手術技術の向上
現在の粉瘤治療では、患者さまの負担を最小限にしながら、美容的な仕上がりも重視した治療が行われています:
技術的改善点
- より小さな切開による手術
- 傷跡を目立たせない縫合技術
- 局所麻酔技術の向上
セルフチェックと受診の判断
粉瘤を疑う症状
以下のような症状がある場合は、粉瘤の可能性があります:
見た目のチェックポイント
- 皮膚の盛り上がったしこり
- 中央に見える黒い点
- 触ると動くが、皮膚にくっついている感覚
- 圧迫すると臭いのある内容物が出る
症状のチェックポイント
- 数か月経っても消えない
- 徐々に大きくなっている
- 時々痛みを感じる
- 赤く腫れることがある
緊急受診が必要な症状
以下のような症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください:
緊急性の高い症状
- 急激な腫れと強い痛み
- 発熱を伴う場合
- 膿の大量排出
- 周囲の皮膚の広範囲な赤み
粉瘤以外の皮膚腫瘍との鑑別
良性皮膚腫瘍との違い
皮膚にできる良性腫瘍には様々な種類があります。適切な治療を受けるためにも、それぞれの特徴を理解することが重要です。
主な良性皮膚腫瘍
- 脂肪腫:脂肪組織由来で柔らかい
- 線維腫:硬い結節状
- 血管腫:赤〜青紫色の病変
- 色素性母斑:いわゆる「ほくろ」
悪性が疑われる場合
稀ではありますが、皮膚のできものが悪性である可能性もあります。以下のような変化がある場合は、特に注意が必要です:
注意すべき変化
- 急激なサイズの増大
- 色調の変化
- 潰瘍形成
- 出血しやすい
- 硬さの変化
これらの症状がある場合は、速やかに専門医による診察を受けることをお勧めします。
地域医療連携と紹介システム
専門的治療が必要な場合
局所麻酔ではなく全身麻酔による手術が必要と思われるケース、悪性の可能性の高い腫瘍が考えられるケースなどは、信頼できる提携先の総合病院や大学病院、癌センターなどを紹介させていただきます。
高度医療機関への紹介が必要な場合
- 非常に大きな粉瘤
- 悪性が疑われる場合
- 全身麻酔が必要な場合
- 特殊な部位の手術
連携医療機関
当院では、患者さまにとって最適な医療を提供するため、以下のような医療機関との連携を行っております:
- 大学病院形成外科
- 総合病院皮膚科
- がん専門病院
- 美容外科専門クリニック
粉瘤治療の将来展望
治療技術の進歩
粉瘤治療の分野では、以下のような技術的進歩が期待されています:
低侵襲治療の発展
- より小さな切開による手術
- レーザー治療の応用
- 内視鏡補助下手術
美容面への配慮
- 無縫合手術の開発
- 瘢痕を最小限にする技術
- 組織接着剤の活用
診断技術の向上
画像診断の精度向上
- 高解像度超音波診断
- MRI診断の活用
- AI診断支援システム
これらの技術により、より正確で迅速な診断が可能になると期待されています。
患者さまへのメッセージ
粉瘤は決して珍しい疾患ではありません。多くの方が一生のうちに経験する可能性がある、身近な皮膚疾患です。しかし、「恥ずかしい」「大したことない」と考えて受診を先延ばしにしてしまうと、症状が悪化して治療が複雑になってしまう可能性があります。
粉瘤のようなできものに気づいた時は、皮膚科を受診しましょう。早期の適切な診断と治療により、短期間で確実に治すことができます。
当院では、患者さまお一人お一人の症状やご希望に合わせて、最適な治療方針をご提案いたします。粉瘤に関してご心配なことがございましたら、お気軽にご相談ください。
まとめ
粉瘤について知っておくべき重要なポイント
- 診療科の選択:皮膚科・形成外科どちらでも治療可能だが、美容面を重視する場合は形成外科がお勧め
- 早期受診の重要性:自然治癒しないため、小さいうちの治療が理想的
- 治療法:手術による袋の完全摘出が基本
- 予防法:確実な方法はないが、清潔な肌の維持とターンオーバーの正常化が有効な可能性
- 保険適用:診断から治療まで保険診療で行える
最終的なアドバイス
粉瘤は適切な治療を受けることで、確実に治すことができる疾患です。粉瘤は放っておいてもさほど問題はありませんが、感染を起こしてからでは治療に時間がかかりますので、早めの対処が大切です。
皮膚にしこりを見つけられたら、自己判断で様子を見るのではなく、ぜひ専門医にご相談ください。適切な診断と治療により、安心して日常生活を送ることができるようになります。
参考文献
- 公益社団法人 日本皮膚科学会. “アテローム(粉瘤)”. 皮膚科Q&A. https://www.dermatol.or.jp/qa/qa17/q01.html
- 日本形成外科学会. 専門医一覧. https://jsprs.or.jp/
本記事の医学的監修について この記事は、皮膚科学会および形成外科学会の最新のガイドラインに基づき、専門医が監修しております。ただし、個々の症状については必ず専門医による診察を受けてください。
免責事項 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医学的アドバイスに代わるものではありません。症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。
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監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務