皮膚の下に「やわらかいしこり」を見つけて不安になった経験はありませんか。多くの場合、それは脂肪腫という良性の腫瘍です。一般的に脂肪腫は痛みを伴わないとされていますが、実は痛みを感じるケースも存在します。本記事では、脂肪腫の基礎知識から痛みを伴う脂肪腫のタイプ、悪性腫瘍との見分け方、治療法まで、アイシークリニック上野院の専門医の視点から詳しく解説いたします。上野エリアで脂肪腫にお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。

目次
- 脂肪腫とは
- 脂肪腫の種類と特徴
- 脂肪腫が痛い原因とは?痛みを伴うケース
- 脂肪腫の主な症状
- 脂肪腫ができる原因
- 脂肪腫の診断方法と検査
- 悪性腫瘍(脂肪肉腫)との見分け方
- 脂肪腫の治療法
- 手術の流れと術後の経過
- 手術費用と保険適用について
- 脂肪腫と粉瘤の違い
- よくある質問(Q&A)
- 上野で脂肪腫治療をお考えの方へ
- 参考文献
1. 脂肪腫とは
脂肪腫(リポーマ)とは、皮膚の下で脂肪細胞が増殖してできる良性の腫瘍のことです。いわゆる「脂肪のかたまり」であり、皮下に発生する軟部組織腫瘍の中では最も多くみられる良性の腫瘍です。
脂肪腫は、脂肪細胞が薄い被膜に包まれた状態で存在しており、触るとやや弾力があり柔らかく、指で押すと皮膚の下で動く感触があります。表面の皮膚には変化がなく、通常の肌の色のままであることが特徴です。
発生頻度は比較的高く、1000人に1人以上が罹患すると考えられています。男女比ではやや男性に多いとされており、特に40歳から60歳代の中年層に多くみられます。ただし、20歳代から30歳代の若い世代でも発症することは珍しくありません。
脂肪腫は幼少期に発生すると考えられていますが、成長が非常にゆっくりであるため、実際に気づくのは中年期以降であることが多いです。一度できた脂肪腫は自然に消失することはなく、放置していると徐々に大きくなっていきます。
体のどこにでも発生する可能性がありますが、特に背部、肩、頸部(首)、上腕、臀部、大腿部などに多くみられます。一方で、顔面、頭皮、膝から下、足などへの発生は比較的まれです。
大きさは数ミリ程度の小さなものから、10センチ以上の大きなものまで様々です。通常は単発で発生しますが、全身に複数の脂肪腫ができる体質の方もおり、その場合は5パーセントから10パーセント程度の割合で多発することがあります。
脂肪腫そのものは良性腫瘍であり、生命に関わることはほとんどありません。しかし、まれに悪性の脂肪肉腫である可能性もあるため、正確な診断を受けることが重要です。
2. 脂肪腫の種類と特徴
脂肪腫は、内部に含まれる細胞の成分や発生部位によって、いくつかのタイプに分類されます。それぞれの特徴を理解しておくことで、適切な治療法の選択に役立ちます。
発生部位による分類
脂肪腫は発生部位によって大きく2つに分類されます。
浅在性脂肪腫は、皮膚のすぐ下(皮下脂肪層)に発生するタイプで、脂肪腫の中で最も一般的です。触ると柔らかく、皮膚の下で動かすことができます。
深在性脂肪腫は、筋膜より深い場所、すなわち筋肉内や筋肉間に発生するタイプです。浅在性脂肪腫と比べて触診では動きにくく、摘出手術もやや難易度が高くなります。
組織学的な分類
脂肪腫は内部の組織構成によって以下のように分類されます。
通常型脂肪腫(単純脂肪腫)は、成熟した脂肪細胞のみで構成されている最も一般的なタイプです。被膜に包まれており、やわらかく弾力性があります。通常は痛みを伴いません。
線維脂肪腫は、脂肪細胞の中に膠原線維が多く含まれているタイプで、脂肪腫の中で最も多く見られます。後頸部(首の後ろ)や上背部など、刺激や圧がかかりやすい部位に好発します。やや硬めの感触があり、周囲との癒着傾向があるため、切除がやや困難になることがあります。
筋脂肪腫は、皮膚の比較的深部に発生し、筋肉内にあることが多いタイプです。後頸部に好発し、被膜が不明瞭な場合もあります。筋肉に浸み込むように発生することがあり、完全に摘出するためには切開部が大きくなることがあります。再発のリスクがやや高いとされています。
血管脂肪腫は、成熟した脂肪細胞の間に毛細血管が多く存在するタイプです。他の脂肪腫とは異なり、痛みを伴うことが特徴的です。詳しくは次章で解説いたします。
その他にも、骨髄脂肪腫、褐色脂肪腫、紡錘細胞脂肪腫、多形性脂肪腫、軟骨脂肪腫など、さまざまな亜型が存在しますが、いずれも良性腫瘍です。
3. 脂肪腫が痛い原因とは?痛みを伴うケース
「脂肪腫は痛くない」というのが一般的な認識ですが、実際には痛みを感じるケースも存在します。痛みを伴う場合の原因と、注意すべきポイントについて解説します。
血管脂肪腫による痛み
痛みを伴う脂肪腫として最も代表的なのが、血管脂肪腫です。血管脂肪腫は、脂肪細胞の間に毛細血管が豊富に存在することが特徴で、脂肪腫全体の中でも比較的多くみられるタイプです。
血管脂肪腫の特徴として、自発痛(触れなくても痛みが現れる)や圧痛(押すときに感じる痛み)を伴うことが挙げられます。この痛みは、腫瘍内の血管が神経を刺激することによるものと考えられています。
血管脂肪腫は通常の脂肪腫と比べて小さめで、直径1センチ程度のものが多くみられます。また、単発ではなく複数同時に発生(多発)することが比較的多く、上腕、前腕、腹部、背部、下肢などに好発します。
腫瘍内の血管の影響により、しこりの表面にあたる皮膚がうっすらと赤くなる「紅斑」がみられることもあります。
発症年齢は15歳から85歳と幅広く、平均で24歳前後とされています。成人に多く発症し、2個から4個程度が同時に確認されることが一般的です。
神経を圧迫している場合
脂肪腫が大きくなって周囲の神経を圧迫している場合にも、痛みやしびれなどの症状が現れることがあります。特に筋肉内や深部に発生した脂肪腫では、成長に伴って神経圧迫による症状が出やすくなります。
この場合の痛みは、脂肪腫そのものの性質によるものではなく、腫瘍の大きさや位置によって二次的に生じるものです。
特殊な疾患との関連
痛みを伴う脂肪腫が多発する疾患として、痛性脂肪腫症(デルクール病/Dercum病)があります。これは体幹と四肢に痛みを伴う脂肪腫が複数でき、皮膚の知覚異常を伴うことがある疾患です。閉経後の女性に多くみられ、精神症状を有することもあります。
また、多発性対称性脂肪腫症(マドルング病/Madelung病)では、頸部を中心に左右対称に脂肪腫が多発します。アルコールを多飲する方に多く見られるまれな疾患です。
痛みがある場合の注意点
脂肪腫に痛みがある場合でも、多くは良性であり、人体に害を及ぼすことはありません。しかし、痛みの原因が脂肪腫ではなく悪性の脂肪肉腫である可能性も完全には否定できないため、早めに専門医の診察を受けることをお勧めいたします。
特に、以下のような症状がある場合は注意が必要です。
- しこりが急速に大きくなっている
- しこりが硬く、動きにくい
- 皮膚に変色(赤み、紫色)や潰瘍がある
- しびれや感覚異常がある
- 全身症状(発熱、体重減少など)がある
これらの症状がある場合は、脂肪腫以外の疾患の可能性も考慮し、速やかに医療機関を受診してください。
4. 脂肪腫の主な症状
脂肪腫の症状は比較的特徴的であり、多くの場合は視診と触診である程度の判断が可能です。ここでは、脂肪腫の典型的な症状について詳しく解説します。
外観と触感
脂肪腫は、皮膚がドーム状に盛り上がり、柔らかいしこりとして触れることができます。表面は滑らかで、皮膚の色に変化はありません。
触るとゴムのような弾力性があり、指で押すと皮膚の下で動く(可動性がある)のが特徴です。周囲の組織との境界は比較的はっきりしており、被膜に包まれているため、皮膚や下の組織とは連続していないことが多いです。
ただし、真皮発生型の脂肪腫では皮膚との連続性があり、筋肉内発生型の場合は下床と連続しているように感じられることもあります。
大きさ
脂肪腫の大きさは、数ミリ程度の小さなものから、直径10センチ以上の大きなものまで様々です。通常は1センチから10センチ程度のものが多く見られますが、放置していると15センチ程度やそれ以上に成長することもあります。
脂肪腫はゆっくりと成長するため、数年から数十年かけて徐々に大きくなります。急激に大きくなることは通常ありません。
自覚症状
通常の脂肪腫では、しこり以外に痛みやかゆみなどの自覚症状はほとんどありません。そのため、ある程度の大きさになってから気づいたり、他人に指摘されて初めて受診される方も多くいらっしゃいます。
ただし、前述の血管脂肪腫の場合は痛みを伴うことがあり、また大きく成長した脂肪腫が神経を圧迫してしびれや痛みを生じることもあります。
発生部位
脂肪腫は体のどこにでも発生する可能性がありますが、特に多いのは以下の部位です。
- 背部(背中)
- 肩部
- 頸部(首、特に後頸部)
- 上腕
- 臀部(お尻)
- 大腿部(太もも)
一方で、手部、足部、顔面、頭皮、下腿(膝から下)などへの発生は比較的まれです。
経過
一度発生した脂肪腫は自然に消失することはありません。治療しない限り、ゆっくりと増大していきます。まれに悪性の脂肪肉腫があるため、数か月単位で急激に増大する場合には早めの受診をお勧めします。
また、脂肪腫は粉瘤(アテローム)と混同されることがありますが、粉瘤のように皮膚に小さな孔が開いていたり、感染や炎症を起こして痛みや臭いを放つことは通常ありません。
5. 脂肪腫ができる原因
脂肪腫の発生原因は、現在の医学では完全には解明されていません。しかし、いくつかの要因が関与している可能性が指摘されています。
遺伝的要因
家族に脂肪腫を持つ人がいる場合、発生しやすい可能性が高いと考えられています。多発性脂肪腫(複数の脂肪腫ができる状態)は同じ家族内でよくみられ、遺伝性疾患(家族性多発性脂肪腫症)の一部である場合があります。
研究によると、80パーセント近くの脂肪腫に染色体異常が認められることから、成人後も残っている未分化細胞が遺伝子異常によって脂肪細胞に分化・増殖すると考えられています。
外傷との関連
脂肪腫は、刺激を受けやすい場所にできやすい傾向があるとされています。額や肩などぶつけやすい場所にできることが多く、外傷をきっかけに発症する可能性が指摘されています。
特に「神輿だこ」と呼ばれる肩の膨らみには、関節液が溜まるタイプに加え、脂肪腫が増大したタイプもあり、強い衝撃が脂肪腫の要因となっている可能性があります。
生活習慣・体質との関連
一般的な単発の脂肪腫は、肥満、高脂血症、糖尿病をお持ちの方にできやすい傾向があるとされています。ただし、これらが直接的な原因であるかどうかは明確ではありません。
なお、ストレスなどの心理的要因の関与は特に認められていません。
脂肪腫の発生メカニズム
脂肪腫の発生には、以下のようなプロセスが関わっていると考えられています。
成熟した脂肪細胞は通常は増殖しませんが、毛細血管の周囲に残る未分化の細胞が何らかのきっかけで脂肪細胞に分化して増殖し、脂肪腫となります。通常の脂肪組織とは異なり、細胞分裂が抑制されず、緩やかに増え続けます。
また、まれに線維成分や血管成分が混じることで、線維脂肪腫や血管脂肪腫などのバリエーションが発生します。
多発性脂肪腫と遺伝性疾患
複数の脂肪腫が存在する場合、以下のような遺伝性疾患に関連する可能性があります。
- 家族性脂肪腫症
- 多発性対称性脂肪腫症(マドルング病)
- 痛性脂肪腫症(デルクール病)
- ガードナー症候群
- 多発性内分泌腺腫瘍症1型(MEN1)
- カウデン症候群
これらの疾患が疑われる場合は、専門的な検査と診断が必要となります。
6. 脂肪腫の診断方法と検査
脂肪腫の診断は、まず問診と視診・触診から始まり、必要に応じて画像検査を行います。悪性腫瘍との鑑別が必要な場合は、病理検査(組織検査)を実施することもあります。
問診
医師による問診では、以下のような情報を確認します。
- しこりの出現時期
- しこりの成長速度
- 痛みの有無
- 全身症状(体重減少・発熱など)の有無
- 家族歴
これらの情報は、脂肪腫の診断だけでなく、悪性腫瘍との鑑別にも重要な手がかりとなります。
視診・触診
専門医による詳細な身体診察では、約60パーセントの脂肪腫を触診だけで診断することが可能とされています。
脂肪腫の典型的な所見として、柔らかい、可動性がある、成長が遅いなどが挙げられます。一方、悪性腫瘍(脂肪肉腫)の場合は、硬い、固定され動きにくい、急速に大きくなるなどの特徴がみられることがあります。
ただし、視診・触診だけで確定診断はできないため、画像検査を併用することが一般的です。
超音波検査(エコー検査)
超音波検査は、簡易的かつ痛みがないため、最初の画像検査として選ばれることが多いです。
脂肪腫の場合は、均一な内部構造で、境界がはっきりしている所見がみられます。脂肪肉腫の場合は、内部に不均一なエコー像(固い部分と柔らかい部分の混在)がみられたり、境界が不明瞭なことがあります。
超音波検査により、脂肪腫の大きさや深さ(筋肉との位置関係)を確認することができます。
CT検査
CT検査は、骨への浸潤の有無を確認したり、腫瘍周辺の血管の位置や状態を確認するのに有効です。造影剤を用いたCT検査では、より詳細な情報を得ることができます。
MRI検査
MRI検査は、脂肪腫の画像診断において最も信頼性の高い検査方法です。特に悪性腫瘍との鑑別において非常に重要な役割を果たします。
脂肪腫の場合、MRI画像では以下のような特徴がみられます。
- 周囲の組織との境目がくっきりしている
- T1強調画像で高信号(白く見える)
- 脂肪抑制画像で真っ黒になる(脂肪腫が純粋な脂肪でできている証拠)
一方、脂肪肉腫の場合は、脂肪以外の成分(線維、軟部組織)が混じり、信号が不均一になります。また、内部に隔壁構造や血流増加像がみられたり、脂肪抑制画像でも完全に黒くならない(白い部分が残る)などの所見がみられます。
軟部腫瘍学会では、長径5センチ以上の脂肪腫についてはMRI検査を推奨しています。
病理検査(組織検査)
画像検査で悪性腫瘍との区別がつかない場合や、悪性が疑われる場合には、実際に病変から組織を採取して顕微鏡で調べる病理検査(生検)を行うことがあります。
摘出した脂肪腫は必ず病理検査に提出され、最終的な確定診断が行われます。病理検査の結果は通常、10日から2週間程度で判明します。
7. 悪性腫瘍(脂肪肉腫)との見分け方
脂肪腫と脂肪肉腫の鑑別は非常に重要です。見た目だけでは判断が難しいため、正しい知識を持ち、適切な検査を受けることが大切です。
脂肪肉腫とは
脂肪肉腫は、脂肪細胞に由来する悪性腫瘍で、軟部肉腫の約10パーセントを占めています。肉腫は発症率が非常に低く、10万人に3人程度の稀な悪性腫瘍です。
脂肪肉腫には5種類の組織型分類があり、型によって悪性度や予後が大きく異なります。
分化型脂肪肉腫(異型脂肪腫様腫瘍)は全脂肪肉腫の40から50パーセントを占め、悪性度が低くゆっくり増殖するため、良性の脂肪腫との見分けが難しいことがあります。40から50歳代に多く、四肢(特に大腿深部)や後腹膜に発生しやすいです。
粘液型脂肪肉腫は全脂肪肉腫の約30パーセントを占め、30から40歳代に多くみられます。四肢(特に太もも)の深い位置に好発します。
多形型脂肪肉腫は全脂肪肉腫の約5パーセントを占め、悪性度が高いことで知られています。3から6か月という短期間で腫瘍が大きくなることや、他の部位への転移の可能性が高いことが特徴です。
脂肪腫と脂肪肉腫の違い
見た目では判別が難しいものの、以下のような違いがあります。
成長スピードについて、脂肪腫は数年から数十年かけてゆっくり大きくなりますが、脂肪肉腫は数週間から数か月で急に大きくなることがあります。
硬さについて、脂肪腫はやわらかく動かせることが多いですが、脂肪肉腫は硬く、皮膚や筋肉と癒着していることがあります。
痛みについて、脂肪腫は基本的に無痛(血管脂肪腫を除く)ですが、脂肪肉腫はまれに痛みや炎症を伴うことがあります。
発生部位について、脂肪腫は背中、首、腕、太ももなどに多いですが、脂肪肉腫は太ももなどの四肢や後腹膜など深部にできやすい傾向があります。
悪性を疑うべき所見
以下のような所見がある場合は、悪性腫瘍の可能性を考慮して精密検査を受ける必要があります。
- 5センチ以上の大きなしこり
- 数か月単位で急速に大きくなる
- 硬く、周囲組織に固定されている
- 深部(筋肉内など)にある
- 大腿にできている
- 痛みや炎症がある
特に5センチを超える場合は、良性であっても悪性との鑑別のために詳しい検査(MRIなど)が必要となります。
脂肪腫は悪性化するのか
脂肪腫自体が悪性化することは極めてまれです。MSDマニュアルによると、脂肪腫はがんではなく、がん化することもほとんどないとされています。
しかし、最初から悪性の脂肪肉腫である可能性もあるため、専門医による正確な診断が重要です。「自己判断せず専門医に相談する」ことが最も大切です。
8. 脂肪腫の治療法
脂肪腫は良性腫瘍であるため、必ずしも緊急的な治療を必要としません。しかし、いくつかの状況では治療が推奨されます。
経過観察(無治療)
以下の場合は、経過観察でよいことが多いです。
- 小さく、痛みや不快感がない
- 成長が遅く、生活に支障がない
- 悪性が疑われない明確な脂肪腫
経過観察のメリットは、身体への負担が少なく、不必要な手術を避けられることです。
手術による摘出
脂肪腫の根治には、手術による摘出が唯一の方法です。内服薬や外用薬では治療することができず、脂肪吸引法でも完全に摘出することは困難です。
以下の場合には手術が推奨されます。
- 見た目(整容面)が気になる場合
- 徐々に大きくなっている場合
- 痛みや違和感がある場合
- 日常生活に支障がある場合
- 悪性の可能性を完全に否定できない場合
手術は、腫瘍の大きさや深さによって局所麻酔または全身麻酔で行われます。皮下の浅い場所にある小さな脂肪腫であれば、局所麻酔による日帰り手術が可能です。
5センチ以上の大きな脂肪腫や、筋肉内脂肪腫など深部にある場合は、入院して全身麻酔下での手術が推奨されることがあります。
手術の方法
一般的な手術方法は、腫瘍の直上の皮膚を切開し、脂肪腫を包んでいる被膜ごと周囲組織から剥離して摘出します。
切開の長さは、摘出する腫瘍の3分の2程度、または腫瘍径の30パーセント以下を目標とすることが多いです。脂肪腫は柔らかい組織であるため、腫瘍より小さい切開でも摘出が可能な場合があります(スクィージングテクニック)。
摘出後は、必要に応じてドレーン(血液や浸出液を排出する管)を挿入し、縫合します。
治療を早めに受けるメリット
脂肪腫は放置していると徐々に大きくなるため、早めに治療を受けることにはいくつかのメリットがあります。
- 手術の傷が小さくて済む
- 手術時間が短くなる
- 術後の回復が早い
- 費用負担が抑えられる
特に大きくなってからの手術では、切開範囲が広がり、傷跡が目立ちやすくなるリスクがあります。
9. 手術の流れと術後の経過
脂肪腫の手術について、実際の流れと術後の経過を詳しく解説します。
手術前の診察
まず、視診・触診で腫瘍の状態を確認し、必要に応じて超音波(エコー)検査などの画像診断を行います。脂肪腫と診断された場合は、手術内容や術後の注意点などについて説明があります。
悪性が疑われる場合や、大きな脂肪腫の場合は、術前にMRIやCTなどの精密検査を行うこともあります。
手術当日の流れ
- 脂肪腫のマーキングを行う
- 局所麻酔を実施(極細針を使用することで痛みを軽減)
- 脂肪腫の中央または上部に切開を入れる
- 脂肪腫を周囲の組織から剥離して摘出
- 必要に応じてドレーンを挿入
- 真皮縫合・表皮縫合を行い閉創
- 弾性包帯などで圧迫固定
脂肪腫は血腫(血液のたまり)のリスクが比較的高いため、手術当日は強めに圧迫固定します。
術後の経過と通院
術後の通院スケジュールは一般的に以下のようになります。
手術翌日に来院し、傷のチェックを行います(状況により自宅での処置指導に替える場合もあります)。ドレーンを挿入している場合は、経過を見て翌日以降に抜去します。
術後7日から14日後に来院し、抜糸を行います。
摘出した脂肪腫は病理検査(顕微鏡検査)に提出し、確定診断を行います。結果は10日から2週間程度で判明します。
術後の注意点
入浴について、縫合部位や傷の状態によりますが、一般的に翌日からシャワーが可能になることがあります。入浴については医師の指示に従ってください。
飲酒について、アルコールを摂取すると血行が良くなり、血腫のリスクが上がります。手術当日と翌日は飲酒を控えることが推奨されます。理想的には1週間、少なくとも3日程度は禁酒が望ましいです。
運動について、出血の可能性があるため、手術当日・翌日の運動は控えてください。それ以降は通常通りで構いませんが、運動の内容や傷の場所によって制限が変わることがあります。
痛みについて、当日から翌日くらいまで痛みがあることがありますが、痛み止めの内服薬が処方されますので安心です。1センチ以下の小さい傷の場合は、ほとんど痛みがないことを目指せます。
術後合併症
起こりうる合併症として以下のものがあります。
血腫は、傷を縫った場所に血液がしみ出して血のたまりを作ることです。血腫を起こしやすいと判断した場合は、縫合の工夫やドレーンの挿入で予防します。
感染は、ごくまれに化膿を起こすことがあるため、抗生剤の予防投与を行うことがあります。
再発について
脂肪腫は被膜を含めてきれいに摘出できれば、同じ部位での再発はほとんどありません。ただし、筋肉内脂肪腫は周囲との境界が不明瞭なこともあり、再発することがあります。
また、体質的に脂肪腫ができやすい方は、別の部位に新たな脂肪腫が発生することがあります。
10. 手術費用と保険適用について
脂肪腫の治療は健康保険が適用されるため、経済的な負担を抑えて治療を受けることができます。
保険適用について
脂肪腫の治療では、診察、検査、手術、病理検査など、すべての医療行為が健康保険の適用対象となります。美容目的ではなく「医療的に必要」と判断される場合は、保険診療として対応されます。
手術費用の目安
手術費用は、脂肪腫の大きさや発生部位によって異なります。また、手術部位が「露出部」か「非露出部」かによっても費用に差が生じます。
露出部とは、頭、顔、首、肘から先(前腕・手)、膝から下(下腿・足)など、衣服を着ていても見える部位を指します。
3割負担の場合の費用目安として、一般的に10,000円から20,000円程度となることが多いです。筋肉内部に入り込んでいる場合は軟部腫瘍扱いとなり、25,000円程度になることがあります。
なお、上記は手術費用のみの目安であり、実際にかかる医療費は、診察料、処方料、検査費用、病理検査費用などが別途発生します。
医療保険の手術給付金
民間の医療保険に加入されている方は、手術給付金の対象となる場合があります。ご加入の保険内容をご確認ください。
11. 脂肪腫と粉瘤の違い
脂肪腫と粉瘤(ふんりゅう、アテローム)は、どちらも皮膚の下にできるしこりですが、まったく異なる疾患です。両者の違いを理解しておくことは、適切な治療を受けるために重要です。
成り立ちの違い
脂肪腫は、皮下で脂肪細胞が増殖してできた「脂肪のかたまり」です。成熟した脂肪細胞が薄い被膜に包まれています。
粉瘤は、皮膚の下にできた袋状の構造物の中に、垢(角質)や皮脂などの老廃物がたまったものです。「脂肪のかたまり」と表現されることがありますが、脂肪腫とは異なる疾患です。
外観と触感の違い
脂肪腫は、皮膚の色に変化がなく、触るとゴムのようにやわらかく弾力性があります。皮膚の比較的深い層にできるため、単に皮膚が盛り上がっているように見えます。
粉瘤は、皮膚表面の浅い層にできやすく、中央に黒い点(開口部、ヘソ)が見えることがあります。触ると脂肪腫より硬く、弾力性があるしこりとして感じられます。全体的に青黒く見えることもあります。
症状の違い
脂肪腫は、通常は痛みやかゆみを伴いません。炎症を起こすことはほとんどなく、臭いを放つこともありません。
粉瘤は、炎症を起こすと赤く腫れて痛みを伴います。また、袋が破れたり圧迫したりすると、内容物が出て独特の強い臭気を発することがあります。
治療の違い
どちらも手術による摘出が根本治療となりますが、手術の方法は異なります。
脂肪腫は、切開して被膜ごと摘出します。粉瘤は、袋(嚢腫壁)を完全に取り除く必要があり、くり抜き法(へそ抜き法)という方法が用いられることもあります。
また、粉瘤は「以前脂肪のかたまりと言われたものが消えた」とおっしゃる方がいますが、脂肪腫は基本的に消えてなくならないため、消えたものはおそらく脂肪腫ではなかったと考えられます。

12. よくある質問(Q&A)
脂肪腫についてよくいただくご質問にお答えします。
脂肪腫は良性腫瘍であるため、必ずしも緊急に治療する必要はありません。ただし、自然に消えることはなく、放置していると徐々に大きくなります。大きくなるほど手術の傷も大きくなるため、気になる場合は早めの相談をお勧めします。また、まれに悪性腫瘍(脂肪肉腫)である可能性もあるため、一度は専門医の診断を受けることが重要です。
脂肪腫自体が悪性化(がん化)することは極めてまれです。ただし、最初から悪性の脂肪肉腫である可能性もあるため、正確な診断を受けることが大切です。
Q3. 脂肪腫は自分で潰せますか?
脂肪腫を自分で潰すことはできません。脂肪腫の内容物は液状ではなく、注射器による吸引も不可能です。完治には手術による摘出が必要です。自己処理を試みると感染や炎症のリスクがありますので、絶対にお控えください。
Q4. 脂肪腫の手術は痛いですか?
手術は局所麻酔で行うため、手術中の痛みはほとんどありません。麻酔の注射時には若干の痛みがありますが、極細針の使用や麻酔薬の工夫により、痛みを最小限に抑える配慮がなされています。術後は当日から翌日にかけて痛みを感じることがありますが、痛み止めの処方があるため心配いりません。
Q5. 脂肪腫は再発しますか?
脂肪腫を被膜を含めて完全に切除すれば、同じ部位での再発はほとんどありません。ただし、筋肉内脂肪腫の場合は再発することがあります。また、体質的に脂肪腫ができやすい方は、別の部位に新たな脂肪腫ができることがあります。
Q6. 脂肪腫の手術後、仕事はいつから復帰できますか?
デスクワークなど体への負担が少ない仕事であれば、翌日から復帰可能な場合が多いです。重労働や激しい運動を伴う仕事は、傷の状態を見ながら1週間程度は控えることをお勧めします。詳しくは担当医にご相談ください。
Q7. どのような場合にMRI検査が必要ですか?
5センチ以上の大きなしこり、急速に大きくなっているもの、深部(筋肉内など)にあるもの、硬いもの、痛みがあるものなどの場合は、MRI検査が推奨されます。悪性腫瘍との鑑別のために重要な検査です。
Q8. 脂肪腫ができたら何科を受診すればいいですか?
脂肪腫の診断・治療は、形成外科、皮膚科、外科などで対応可能です。確実な治療(きれいな傷跡を目指した手術)を希望される場合は、形成外科の受診をお勧めします。
13. 上野で脂肪腫治療をお考えの方へ
上野エリアで脂肪腫にお悩みの方は、アイシークリニック上野院にご相談ください。
当院では、専門医が脂肪腫の診断から治療まで一貫して対応いたします。日帰り手術にも対応しており、お忙しい方でも治療を受けていただきやすい環境を整えております。
脂肪腫は良性腫瘍ではありますが、「悪性ではないか」「大きくなってきた」など、ご不安をお持ちの方も多いことと思います。まずは正確な診断を受け、適切な治療方針を一緒に考えていきましょう。
小さなしこりでも、気になる症状がある場合は、お気軽にご相談ください。早期に適切な対応を行うことで、より良い結果につながります。
参考文献
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務