おできの原因・症状と効果的な薬による治療法|上野の皮膚科が徹底解説

目次

  1. おできとは?医学的な定義と正式名称
  2. おできの症状と進行度による分類
  3. おできができる原因とメカニズム
  4. おできと間違えやすい皮膚疾患との見分け方
  5. おできに使われる薬の種類と特徴
  6. 市販薬でのセルフケア方法
  7. 皮膚科で処方される薬による治療
  8. 漢方薬によるおできの治療
  9. 薬以外の治療法(切開排膿など)
  10. おできの予防法と日常ケア
  11. 病院を受診すべき目安とタイミング
  12. まとめ
  13. 参考文献

1. おできとは?医学的な定義と正式名称

皮膚が赤く腫れ上がり、痛みや熱感を伴う「おでき」は、多くの方が一度は経験したことのある身近な皮膚トラブルです。しかし、「おでき」という呼び方は一般的な俗称であり、医学的にはより正確な名称で分類されています。

おできは医学用語では「毛嚢炎(もうのうえん)」または「毛包炎(もうほうえん)」と呼ばれる皮膚感染症の一種です。毛穴の奥にある毛根を包んでいる部分「毛包」に細菌が感染することで炎症が起こります。

この毛嚢炎がさらに深部に進行し、毛包とその周囲の皮下組織にまで炎症が広がった状態を「癤(せつ)」と呼びます。一般的に「おでき」といえば、この癤を指すことが多いです。さらに症状が進行し、複数の癤が融合してより広範囲に炎症が広がった状態は「癰(よう)」と呼ばれ、重症化しやすく全身症状を伴うこともあります。

また、顔の中心部にできた癤は「面疔(めんちょう)」と呼ばれ、昔から特に危険視されてきました。これは顔面の静脈が脳につながっているため、感染が広がると重篤な合併症を引き起こす可能性があるためです。


2. おできの症状と進行度による分類

おできの症状は、その進行度によって段階的に変化していきます。それぞれの段階における特徴を理解しておくことで、適切な対処のタイミングを判断しやすくなります。

初期症状(毛嚢炎の段階)

おできの最初期には、毛穴の部分に一致して小さな赤い丘疹(きゅうしん)が現れます。中央部に白や黄色の膿を持った膿疱がみられることもあります。この段階では痛みは軽度で、かゆみや軽い刺激感を感じる程度です。1つだけポツンとできることもあれば、複数箇所に同時に発生することもあります。

中期症状(癤の段階)

毛嚢炎が進行すると、炎症が毛包の深部にまで及び、周囲の皮膚組織にも広がっていきます。この段階になると、皮膚の腫れが顕著になり、硬いしこりのような感触が現れます。赤みが増し、熱感を伴い、触れると強い痛みを感じるようになります。

膿が溜まってくると、中心部がぶよぶよと軟化してきます。この状態が数日から数週間続いた後、やがて破裂して膿が排出されます。膿が出ると急速に痛みや腫れが引いて、治癒に向かうのが一般的な経過です。

重症化した状態(癰の段階)

複数の癤が融合して癰(よう)になると、症状はさらに深刻化します。広範囲にわたって皮膚が赤く腫れ上がり、複数箇所から膿が出ることもあります。局所の症状に加えて、発熱や倦怠感、悪寒といった全身症状が現れることも少なくありません。

癰の状態まで進行した場合は、市販薬での対処は困難であり、医療機関での専門的な治療が必要となります。

おできができやすい部位

おできは体毛が生えている部位であればどこにでも発生する可能性がありますが、特に以下の部位に好発します。

首の後ろは衣服との摩擦が多く、汗もたまりやすいため、おできができやすい部位の代表です。同様の理由から、脇の下や太もも、お尻なども発生しやすい場所として知られています。顔面、特に口周りや鼻の周囲も毛包が多く存在するため、おできが発生しやすい部位です。背中や胸も皮脂の分泌が盛んなため、おできの好発部位となっています。


3. おできができる原因とメカニズム

おできの発生には、細菌感染が直接的な引き金となりますが、その背景にはさまざまな要因が複雑に絡み合っています。

主な原因菌

おできの原因菌として最も一般的なのは「黄色ブドウ球菌」です。この菌は健康な人の皮膚や鼻腔にも常在しており、通常は問題を起こしません。しかし、何らかの要因で皮膚のバリア機能が低下すると、毛穴から侵入して感染を引き起こします。

黄色ブドウ球菌以外にも、表皮ブドウ球菌や溶血性連鎖球菌などが原因となることもあります。また、管理が不十分な入浴施設などでは緑膿菌による「温浴毛包炎」が発生することもあります。真菌(カビ)の一種であるマラセチアが毛包内で増殖して炎症を引き起こす「マラセチア毛包炎」もあり、これは細菌性のおできとは治療法が異なります。

おできを誘発する要因

皮膚の小さな傷は、細菌が侵入する入り口となります。髭剃りやムダ毛処理、引っ掻き傷などによって毛包周囲に微細な傷ができると、そこから細菌が侵入しやすくなります。

不十分なスキンケアも重要な要因です。皮膚に汚れや汗、過剰な皮脂が残っていると、細菌が増殖しやすい環境が作られます。特に汗をかきやすい夏場や運動後にケアを怠ると、おできのリスクが高まります。

免疫力の低下も大きく影響します。睡眠不足、過度のストレス、栄養バランスの偏り、風邪をひいたときなど、体の抵抗力が落ちている状態では、通常は問題を起こさない常在菌であっても感染を引き起こすことがあります。

糖尿病などの基礎疾患がある方は、おできができやすく、また治りにくい傾向があります。これは血糖コントロールが不良な状態では免疫機能が低下し、創傷治癒も遅延するためです。

ステロイド外用薬を長期間使用している場合も、局所の免疫が抑制されるため、毛嚢炎やおできが起こりやすくなることがあります。

衣服や下着による摩擦も誘因となります。きつい衣服やナイロン製の下着は通気性が悪く、蒸れやすいため、細菌の増殖を促進します。また、摩擦によって毛包が傷つきやすくなるという問題もあります。


4. おできと間違えやすい皮膚疾患との見分け方

おできと似た症状を呈する皮膚疾患がいくつかあります。適切な治療を行うためには、これらを正しく見分けることが重要です。

粉瘤(ふんりゅう)との違い

おできと最も間違えやすい疾患が粉瘤です。粉瘤は皮膚の下に袋状の構造物(嚢腫)ができ、その中に角質や皮脂が溜まった良性腫瘍です。

粉瘤とおできを見分けるポイントはいくつかあります。まず発症の経過が異なります。おできは比較的急速に発症し、数日で痛みや腫れが顕著になります。一方、粉瘤は通常ゆっくりと大きくなり、感染を起こすまでは痛みがないことが多いです。

粉瘤には特徴的な「開口部」があり、中央に黒い点が見られることがあります。おできにはこのような開口部はありません。

また、おできは適切な治療を行えば完治しますが、粉瘤は袋ごと摘出しない限り再発を繰り返します。粉瘤に細菌感染が起こると「炎症性粉瘤」となり、おできと非常に似た症状を呈しますが、治療法が異なるため、専門医による診断が重要です。

ニキビとの違い

ニキビ(尋常性ざ瘡)もおできと混同されやすい疾患です。両者の主な違いは原因菌と好発年齢にあります。

ニキビはアクネ菌(プロピオニバクテリウム・アクネス)が主な原因であり、思春期に好発します。毛穴の詰まりから始まり、白ニキビ、黒ニキビを経て、炎症を起こすと赤ニキビになります。

一方、おできは黄色ブドウ球菌が主な原因であり、年齢を問わず発症します。ニキビよりも深い部位で炎症が起こるため、腫れが大きく、痛みも強い傾向があります。

ニキビだと思っていたできものが急に硬くなったり、腫れ上がってきたりした場合は、おできに進行している可能性があります。

化膿性汗腺炎との違い

化膿性汗腺炎は、わきの下、鼠径部、お尻など、アポクリン汗腺が多い部位に好発する慢性の皮膚疾患です。20代から40代の方に多く見られ、再発を繰り返すのが特徴です。

単発のおできとは異なり、化膿性汗腺炎は複数の膿瘍が癒合してトンネル状につながることがあり、慢性的な経過をたどります。喫煙や肥満がリスク因子とされており、治療には生物学的製剤の注射薬が使用されることもあります。


5. おできに使われる薬の種類と特徴

おできの治療には、主に抗生物質(抗菌薬)が使用されます。炎症の程度や範囲によって、外用薬(塗り薬)と内服薬(飲み薬)を使い分けます。

外用抗生物質(塗り薬)

軽度から中等度のおできには、まず外用抗生物質が選択されることが多いです。

ゲンタマイシン軟膏(商品名:ゲンタシン軟膏など)は、アミノグリコシド系抗生物質であり、黄色ブドウ球菌に対して優れた抗菌力を持っています。皮膚科で最もよく処方される外用抗生物質の一つです。

フシジン酸ナトリウム(商品名:フシジンレオ軟膏)も黄色ブドウ球菌に対する抗菌作用が強く、おできの治療に広く使用されています。

ナジフロキサシン(商品名:アクアチム軟膏、クリーム)やオゼノキサシン(商品名:ゼビアックスローション)などのニューキノロン系外用剤も、化膿性皮膚疾患に対して効果があります。

クリンダマイシン(商品名:ダラシンTゲル)はリンコマイシン系の抗生物質で、グラム陽性菌に対する抗菌活性を持っています。

内服抗生物質(飲み薬)

おできが大きい場合、複数箇所に発生している場合、顔面にできた場合、全身症状を伴う場合などには、内服抗生物質が処方されます。

セフェム系抗生物質(商品名:メイアクト錠、フロモックス錠など)は、皮膚軟部組織感染症に対して広く使用されています。副作用が比較的少なく、安全性が高いことが特徴です。

ペニシリン系抗生物質も黄色ブドウ球菌感染症に対して有効です。ただし、ペニシリンアレルギーのある方には使用できません。

マクロライド系抗生物質(商品名:クラリス錠、ルリッド錠など)は、抗菌作用に加えて抗炎症作用も持っており、おできやニキビの治療によく使用されます。副作用が出にくいため、比較的長期間の服用にも適しています。

テトラサイクリン系抗生物質(商品名:ミノマイシンなど)も抗炎症作用を併せ持ち、化膿性皮膚疾患の治療に用いられます。

ニューキノロン系抗生物質(商品名:クラビット錠など)は、広域スペクトラムの抗菌薬であり、他の抗生物質が効きにくい場合に選択されることがあります。

ステロイド配合剤

急性期の強い炎症を抑える目的で、抗生物質とステロイドを配合した外用剤が処方されることがあります。代表的なものとしてリンデロンVG軟膏(ベタメタゾン+ゲンタマイシン)やデルモゾールG軟膏などがあります。

ただし、ステロイドには免疫抑制作用があるため、感染症に対して長期間使用すると逆効果となる可能性があります。使用は短期間(1週間以内程度)に限定し、炎症が落ち着いたら抗生物質単剤に切り替えるのが理想的です。


6. 市販薬でのセルフケア方法

軽度のおでき(毛嚢炎程度)であれば、市販薬を使用したセルフケアで改善することも可能です。ただし、5〜6日使用しても改善が見られない場合は、使用を中止して皮膚科を受診することをお勧めします。

抗生物質を配合した市販薬

ドルマイシン軟膏は、コリスチンとバシトラシンの2種類の抗生物質を配合した市販薬です。グラム陽性菌・陰性菌の両方に効果があり、ステロイドを含んでいないため副作用の心配が少なく、長期間使用しやすい利点があります。効能効果に「せつ」「よう」と記載されており、おできの治療に適しています。

テラマイシン軟膏は、オキシテトラサイクリンとポリミキシンBの2種類の抗生物質を配合しています。化膿してしまったおできに対して効果を発揮します。ノンステロイドであるため、デリケートゾーンにも使用可能です。

クロマイN軟膏は、クロラムフェニコールとフラジオマイシンの2種類の抗生物質に加え、抗真菌薬のナイスタチンも配合されています。細菌だけでなく真菌による感染にも対応できるため、原因がはっきりしない場合にも使いやすい薬です。油性軟膏で患部を保護する効果もあり、じゅくじゅくした患部にも使用できます。

抗生物質+ステロイド配合の市販薬

テラコートリル軟膏は、抗生物質オキシテトラサイクリンと弱めのステロイド(ヒドロコルチゾン)を配合しています。化膿を伴う湿疹や皮膚炎に効果があり、炎症とかゆみを同時に抑えることができます。

ベトネベートN軟膏は、ベタメタゾン(ステロイド)とフラジオマイシン(抗生物質)を配合しています。ステロイドの強さは市販薬の中では比較的強いストロングに分類されるため、炎症が強いときに適していますが、顔への使用は避けた方がよいでしょう。

おでき専用の市販薬

オデキュアEXは、おでき治療に特化した市販薬です。化膿を抑えるスルファジアジンと、腫れを鎮めるジフェンヒドラミンサリチル酸塩を配合しています。膿を排出しやすくし、腫れを引かせることで痛みを軽減する効果が期待できます。

市販薬を選ぶ際のポイント

おできができた部位によって、適切な薬を選ぶことが重要です。

顔にできた場合は、皮膚が薄くデリケートなため、強いステロイドを含む薬は避けましょう。抗生物質のみ、または弱いステロイドを含む薬を選ぶのが安全です。

背中にできやすい場合は、黄色ブドウ球菌だけでなくマラセチア菌(真菌)が原因のこともあるため、抗真菌成分も含む薬を選ぶと効果的な場合があります。

デリケートゾーンにできた場合は、皮膚が薄く薬の吸収率が高いため、ステロイドの強さに注意が必要です。また、おできではなく尖圭コンジローマなど別の疾患の可能性もあるため、改善しない場合は早めに医療機関を受診しましょう。


7. 皮膚科で処方される薬による治療

市販薬で改善しない場合や、症状が重い場合には、皮膚科を受診して適切な治療を受けることが重要です。皮膚科では、症状や原因菌に応じてより効果の高い処方薬を選択することができます。

外用薬による治療

皮膚科で処方される外用抗生物質は、市販薬よりも高濃度かつ効果の高いものが選択できます。ゲンタシン軟膏、フシジンレオ軟膏、アクアチム軟膏、ダラシンTゲルなどが代表的です。

症状に応じて、抗生物質とステロイドの配合剤であるリンデロンVG軟膏やデルモゾールG軟膏が処方されることもあります。これらは短期間の使用で炎症を素早く鎮めたい場合に有効ですが、長期使用は避けるべきです。

内服薬による治療

おできが大きい場合、複数箇所に発生している場合、糖尿病などで治りにくい場合には、内服抗生物質が処方されます。

一般的にはセフェム系抗生物質(メイアクト、フロモックスなど)が第一選択となることが多いです。マクロライド系抗生物質(クラリス、ルリッドなど)は抗炎症作用も持っているため、おできやニキビの治療に好んで使用されます。

テトラサイクリン系(ミノマイシンなど)も抗菌作用と抗炎症作用を併せ持ち、化膿性皮膚疾患に効果的です。ただし、妊婦や小児には使用できないなどの制限があります。

内服抗生物質の服用期間は通常4〜7日程度ですが、症状によっては2週間程度続けることもあります。処方された薬は、症状が改善しても自己判断で中止せず、指示された期間飲み切ることが重要です。中途半端に服用を中止すると、耐性菌が発生するリスクがあります。

消炎鎮痛剤の併用

おできによる痛みが強い場合には、ロキソニン(ロキソプロフェン)やカロナール(アセトアミノフェン)などの消炎鎮痛剤が処方されることがあります。これらは直接おできを治す薬ではありませんが、痛みを軽減して日常生活の質を維持するのに役立ちます。


8. 漢方薬によるおできの治療

おできの治療には、西洋医学の抗生物質だけでなく、漢方薬も有効な選択肢となります。特に、おできを繰り返しやすい体質の改善や、抗生物質にアレルギーがある場合などに漢方薬が活用されています。

排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう)

排膿散及湯は、その名の通り膿を排出(排膿)する効果を持つ漢方薬です。患部が赤く腫れ、痛みを伴う化膿性の皮膚疾患に広く使用されています。

この漢方薬は「漢方の抗生物質」とも呼ばれ、体の中から化膿を鎮める効能があります。飲んで2〜3日すると、おできが自然に破れて膿が出てくることがあります。おできが小さく化膿が軽度な場合には、破れずに治癒することもあります。

排膿散及湯は体質(証)をあまり選ばず使用できる漢方薬であり、化膿や腫れといった症状に合わせて幅広く使いやすいのが特徴です。皮膚科で処方してもらえるほか、市販品としても購入可能です。

また、抗生物質と異なり、排膿散及湯は悪い菌だけを追い出し、良い菌には影響を与えにくいとされています。抗生物質の乱用による耐性菌の問題が注目される中、漢方薬の役割は再評価されつつあります。

十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)

十味敗毒湯は、おでき治療の代表的な漢方薬として古くから使用されてきました。「毒」は昔の言葉で膿を意味しており、初期の化膿を消散させる目的で作られた処方です。

化膿が不十分でおできがまだ広がっている段階、あるいは化膿しやすい体質の改善に適しています。単独で使用するよりも、黄連解毒湯などの清熱解毒剤と併用すると効果が高まることがあります。

荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)

荊芥連翹湯は、余分な熱を追い出し、首から上の炎症を改善するとされる漢方薬です。慢性的に化膿を繰り返すニキビや、蓄膿症、慢性鼻炎などにも使用されます。

化膿しやすい体質の方の体質改善に適しており、長期間継続して服用することで効果が期待できます。

黄連解毒湯(おうれんげどくとう)

黄連解毒湯は、強力な清熱解毒作用を持つ漢方薬です。炎症が強く、患部が赤く熱を持っている状態のおできに適しています。排膿散及湯と併用されることも多いです。

漢方薬使用上の注意点

漢方薬は西洋薬に比べて作用が穏やかですが、副作用が全くないわけではありません。多くの漢方薬に含まれる甘草という生薬は、過剰摂取すると「偽アルドステロン症」と呼ばれる副作用を起こす可能性があります。症状としては、むくみや血圧上昇、低カリウム血症などがあります。

複数の漢方薬を併用する場合や、長期間服用する場合には、医師や薬剤師に相談することをお勧めします。


9. 薬以外の治療法(切開排膿など)

おできの病巣部に膿が大量に溜まって自然に排膿されにくい場合や、薬物療法だけでは改善が見られない場合には、外科的な処置が必要となることがあります。

切開排膿

おできが成熟して膿がたまり、中心部がぶよぶよと軟化してきた段階で行われることが多い処置です。局所麻酔を行った後、メスで皮膚を小さく切開して膿を排出します。

排膿後は、空洞になった部分を滅菌済みの生理食塩水で洗浄し、膿が残らないようにします。その後は清潔なガーゼで覆い、適宜交換しながら傷口が塞がるのを待ちます。

切開排膿を行うと、薬物療法のみの場合よりも早く症状が改善することが多いです。ただし、小さな傷跡が残る可能性があります。顔面のおできの場合は、傷跡が目立たないよう特に慎重な処置が求められます。

穿刺排膿

切開ではなく、注射針を用いて膿を穿刺・吸引する方法もあります。切開に比べて傷が小さくて済みますが、膿を完全に排出できないことがあります。

ステロイド局所注射

まれなケースですが、おできの治りを良くするために、直接皮膚にステロイドを注射することがあります。トリアムシノロン(ケナコルト)やベタメタゾンなどが使用されます。これは炎症を強力に抑える目的で行われますが、副作用の可能性もあるため、適応は限られます。


10. おできの予防法と日常ケア

おできは一度できると不快な症状を伴いますが、日頃からの予防と適切なケアによって発生リスクを大幅に減らすことができます。特に再発を繰り返す方は、生活習慣の見直しが重要です。

皮膚を清潔に保つ

皮膚を清潔に保つことは、おでき予防の基本中の基本です。ただし、ただ洗えば良いというわけではありません。

毎日の入浴やシャワーで、皮膚の汚れ、汗、皮脂を洗い流しましょう。特に汗をかきやすい夏場や運動後は、こまめにシャワーを浴びるか、清潔なタオルで汗を拭き取ることが大切です。

洗浄の際は、石鹸やボディソープをよく泡立て、泡で皮膚を包み込むように優しく洗いましょう。ゴシゴシと力を入れて洗うと、皮膚のバリア機能が傷つき、かえって細菌が侵入しやすくなる可能性があります。洗浄後は、石鹸成分が残らないようにしっかりと洗い流してください。

適切な保湿ケア

入浴後には化粧水やクリームを使用して、肌状態を整えましょう。過度に乾燥した皮膚はバリア機能が低下し、細菌感染を起こしやすくなります。

ただし、油分の多すぎるクリームを大量に塗ると、毛穴を塞いでしまう可能性があります。さらっとしたタイプの保湿剤を適量使用するのがよいでしょう。

皮膚を傷つけない

髭剃りやムダ毛処理の際には、皮膚を傷つけないよう注意しましょう。切れ味の悪いカミソリは皮膚へのダメージが大きくなるため、定期的に交換することをお勧めします。

カミソリ負け(尋常性毛瘡)を繰り返す場合は、電気シェーバーに切り替えるか、シェービングジェルを十分に使用して肌への負担を軽減しましょう。

免疫力を高める生活習慣

睡眠や食生活を整え、体の免疫力を高めることも重要な予防策です。

十分な睡眠をとりましょう。睡眠不足は免疫機能を低下させ、おできができやすい状態を作ります。

バランスの良い食事を心がけましょう。特にビタミンA、C、E、亜鉛などは皮膚の健康維持に重要な栄養素です。野菜、果物、タンパク質をバランスよく摂取しましょう。

適度な運動も免疫力向上に効果的です。ただし、運動後は汗をそのままにせず、早めにシャワーを浴びて清潔を保ちましょう。

ストレスの蓄積も免疫力低下の原因となります。ヨガや瞑想、ウォーキングなど、自分に合ったストレス解消法を見つけましょう。

衣服・下着の選び方

通気性の良い素材の衣服や下着を選びましょう。ナイロンやポリエステルなどの化学繊維は蒸れやすく、細菌が繁殖しやすい環境を作ります。綿100%など天然素材のものがお勧めです。

きつすぎる衣服は摩擦を増やし、毛包を傷つけやすくなります。適度なゆとりのあるサイズを選びましょう。

タオルや寝具の管理

使用したタオルは他の人と共有しないようにしましょう。おできの原因菌がタオルを介して感染が広がる可能性があります。

タオルや寝具は定期的に洗濯し、清潔な状態を保ちましょう。湿ったタオルを放置すると細菌が繁殖するため、使用後は乾燥させることも大切です。


11. 病院を受診すべき目安とタイミング

おできの多くは適切なセルフケアで改善しますが、以下のような場合には速やかに医療機関(皮膚科)を受診することをお勧めします。

早めに受診すべき症状

痛みが強く日常生活に支障がある場合は、医療機関での治療が必要です。市販薬だけでは痛みのコントロールが難しいことが多く、また症状が重い可能性があります。

おできが大きく腫れている場合、直径が2〜3cmを超えるような大きなおできは、薬物療法だけでは改善しにくく、切開排膿が必要になることがあります。

発熱や全身倦怠感などの全身症状がある場合は、感染が広がっている可能性があります。この場合は緊急性が高いため、できるだけ早く受診しましょう。

顔面、特に鼻や口の周囲にできた場合は注意が必要です。この部位の静脈は脳につながっているため、感染が広がると重篤な合併症を引き起こす可能性があります。

おできを繰り返しできる場合は、単なるおできではなく化膿性汗腺炎など別の疾患の可能性があります。また、糖尿病などの基礎疾患が隠れていることもあるため、一度詳しい検査を受けることをお勧めします。

市販薬を5〜6日使用しても改善が見られない場合は、薬が合っていないか、おでき以外の疾患である可能性があります。

できものがおできなのか粉瘤なのか判断がつかない場合も、専門医の診察を受けましょう。両者は治療法が異なるため、正確な診断が重要です。

糖尿病などの基礎疾患がある場合は、感染が重症化しやすく治りにくい傾向があるため、早めの受診をお勧めします。

受診時に伝えるべき情報

医療機関を受診する際には、以下の情報を伝えると診察がスムーズに進みます。

いつからおできができたか、症状の経過はどうかを伝えましょう。また、痛みの程度や、発熱などの全身症状があるかも重要な情報です。

過去にも同じような症状があったか、それはいつ頃でどのように治ったかも参考になります。

これまでに使用した市販薬があれば、その名前と効果があったかどうかを伝えましょう。

糖尿病などの持病がある場合や、普段飲んでいる薬がある場合も必ず伝えてください。

薬のアレルギーがある場合は、事前に申告することが重要です。


12. まとめ

おできは、黄色ブドウ球菌などの細菌が毛包に感染することで起こる皮膚感染症です。軽度のものは市販薬でのセルフケアで改善することもありますが、症状が重い場合や繰り返す場合には、皮膚科での適切な治療が必要です。

薬物療法としては、外用・内服の抗生物質が主に使用されます。ステロイド配合剤は短期間の使用で炎症を抑えるのに有効ですが、長期使用は避けるべきです。漢方薬も有効な選択肢であり、特に排膿散及湯は「漢方の抗生物質」として化膿性皮膚疾患に広く使用されています。

おできと間違えやすい疾患として粉瘤があります。粉瘤は袋ごと摘出しない限り完治しないため、正確な診断が重要です。

予防のためには、皮膚を清潔に保つこと、免疫力を高める生活習慣を心がけること、皮膚を傷つけないことが大切です。

痛みが強い場合、大きく腫れている場合、発熱がある場合、顔面にできた場合などは、早めに医療機関を受診しましょう。早期の治療により、痛みや炎症を最小限に抑え、傷跡も残りにくくなります。

上野エリアでおできにお悩みの方は、専門医による適切な診断と治療を受けることをお勧めします。自己判断での放置や不適切な処置は、症状の悪化や傷跡の原因となることがあります。気になる症状がある場合は、お気軽にご相談ください。


13. 参考文献

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

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佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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