毎年冬になると流行するインフルエンザ。同じ環境にいても、すぐに感染してしまう人となかなかかからない人がいることに気づいた経験はありませんか。実は、インフルエンザにかかりやすい人には、いくつかの共通した特徴があります。
この記事では、インフルエンザにかかりやすいタイプの人の特徴や、その理由、そして効果的な予防対策について、医学的な根拠に基づいて詳しく解説していきます。自分や家族がどのタイプに当てはまるかを知ることで、より効果的な予防策を立てることができるでしょう。

インフルエンザの基本知識
インフルエンザは、インフルエンザウイルスによって引き起こされる急性呼吸器感染症です。A型、B型、C型の3種類があり、このうちA型とB型が毎年の季節性インフルエンザの原因となります。
一般的な風邪とは異なり、インフルエンザは38度以上の高熱、全身の倦怠感、筋肉痛、関節痛などの全身症状が急激に現れるのが特徴です。また、感染力が非常に強く、咳やくしゃみによる飛沫感染や、ウイルスが付着したものに触れることによる接触感染によって広がります。
日本では例年12月から3月頃にかけて流行し、学級閉鎖や高齢者施設での集団感染など、社会的にも大きな影響を与えています。厚生労働省の統計によると、毎年約1,000万人がインフルエンザに罹患すると推定されており、重症化による死亡例も少なくありません。
インフルエンザにかかりやすい人の特徴
1. 年齢によるリスクの違い
年齢は、インフルエンザへのかかりやすさに大きく影響する要因の一つです。特に注意が必要なのは、乳幼児と高齢者です。
乳幼児、特に生後6か月から5歳未満の子どもは、免疫システムがまだ十分に発達していないため、インフルエンザにかかりやすく、重症化しやすい傾向があります。保育園や幼稚園などの集団生活の場では、子ども同士の距離が近く、衛生管理も十分でないことが多いため、感染が広がりやすい環境にあります。
一方、65歳以上の高齢者も、加齢に伴う免疫機能の低下により、インフルエンザにかかりやすくなります。さらに、高齢者は肺炎などの合併症を起こしやすく、重症化や死亡のリスクが高くなります。国立感染症研究所のデータによると、インフルエンザによる死亡者の多くは65歳以上の高齢者が占めています。
2. 基礎疾患を持つ人
慢性的な疾患を持っている人は、健康な人に比べてインフルエンザにかかりやすく、また重症化しやすいことが知られています。
特に注意が必要な基礎疾患には以下のものがあります。
呼吸器疾患を持つ人、特に慢性閉塞性肺疾患(COPD)や気管支喘息の患者さんは、インフルエンザによって症状が悪化しやすく、肺炎などの合併症を起こすリスクが高くなります。気道の防御機能が低下しているため、ウイルスが侵入しやすい状態にあります。
心疾患を持つ人も注意が必要です。インフルエンザは心臓に負担をかけ、心不全の悪化や心筋梗塞のリスクを高めることがあります。特に高血圧や狭心症、不整脈などの循環器疾患を持つ人は、インフルエンザワクチンの接種が強く推奨されています。
糖尿病患者も、インフルエンザにかかりやすいグループに含まれます。高血糖状態が続くと免疫機能が低下し、感染症にかかりやすくなります。また、インフルエンザに感染すると血糖コントロールが乱れやすく、糖尿病性ケトアシドーシスなどの重篤な合併症を引き起こすこともあります。
腎臓病を持つ人、特に透析を受けている患者さんは、免疫力が低下しているため感染症に対する抵抗力が弱くなっています。インフルエンザに感染すると、腎機能のさらなる低下や合併症のリスクが高まります。
3. 免疫機能が低下している人
免疫機能の低下は、インフルエンザへのかかりやすさに直接影響します。
がん治療中の人、特に化学療法や放射線治療を受けている患者さんは、治療による免疫抑制のため、感染症に対する抵抗力が著しく低下しています。インフルエンザに感染すると、治療の中断を余儀なくされることもあります。
臓器移植を受けた人や自己免疫疾患の治療で免疫抑制剤を使用している人も、薬剤の作用により免疫機能が低下しているため、インフルエンザにかかりやすく、重症化しやすい傾向があります。
HIV感染者も、免疫機能の低下によりインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなります。特にCD4陽性T細胞数が低下している場合は、重症化のリスクが高まります。
4. 妊娠中の女性
妊娠中は、ホルモンバランスの変化や胎児への血液供給のために、母体の免疫機能が調整され、感染症に対する抵抗力が低下します。特に妊娠中期から後期にかけては、心肺機能への負担も増加するため、インフルエンザにかかると重症化しやすくなります。
妊娠中のインフルエンザ感染は、早産や低出生体重児のリスクを高める可能性も指摘されています。そのため、妊婦さんに対するインフルエンザワクチン接種は、妊娠週数にかかわらず推奨されています。
5. 生活習慣によるリスク
日常の生活習慣も、インフルエンザへのかかりやすさに大きく影響します。
睡眠不足の人は、免疫機能が低下するため、インフルエンザにかかりやすくなります。研究によると、睡眠時間が7時間未満の人は、8時間以上寝ている人に比べて、風邪などの感染症にかかるリスクが約3倍高くなるという報告もあります。
慢性的なストレスを抱えている人も注意が必要です。ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が長期間続くと、免疫細胞の働きが抑制され、感染症への抵抗力が低下します。仕事や家庭での精神的負担が大きい人は、インフルエンザにかかりやすい傾向があります。
栄養バランスの偏った食事を続けている人も、免疫力の低下によりインフルエンザにかかりやすくなります。特にビタミンDやビタミンC、亜鉛などの栄養素が不足すると、免疫機能が適切に働かなくなります。
運動不足も免疫力の低下につながります。適度な運動は免疫細胞の活性化を促しますが、運動習慣のない人は、感染症に対する抵抗力が弱くなる傾向があります。
喫煙者は、非喫煙者に比べてインフルエンザにかかりやすく、重症化しやすいことが知られています。喫煙により気道の粘膜が傷つき、繊毛の働きが低下するため、ウイルスの侵入を防ぐ防御機能が弱まります。
6. 職業や生活環境によるリスク
医療従事者は、日常的にインフルエンザ患者と接する機会が多いため、感染リスクが高くなります。特に病院やクリニック、高齢者施設などで働く人は、十分な感染対策が必要です。
教育関係者、特に保育士や幼稚園教諭、小学校教諭なども、子どもたちと密接に接する職業のため、インフルエンザにかかりやすい環境にあります。子どもはウイルスの排出量が多く、感染力が強いため、注意が必要です。
接客業や営業職など、不特定多数の人と接する機会が多い職業の人も、感染リスクが高くなります。特に通勤時の満員電車や、換気の悪い室内での長時間の業務は、感染のリスクを高めます。
家族に小さな子どもや高齢者がいる人も、家庭内での感染リスクが高まります。子どもが学校や保育園から持ち帰ったウイルスが、家族内で広がることは珍しくありません。
なぜインフルエンザにかかりやすいのか:医学的メカニズム
インフルエンザへのかかりやすさには、免疫システムの働きが深く関わっています。私たちの体には、ウイルスや細菌などの病原体から身を守るための免疫システムが備わっていますが、さまざまな要因によってその機能が低下すると、インフルエンザにかかりやすくなります。
免疫システムの基本的な働き
免疫システムには、大きく分けて自然免疫と獲得免疫の2つがあります。
自然免疫は、生まれつき備わっている防御システムで、病原体が体内に侵入するとすぐに反応します。鼻や喉の粘膜、マクロファージや好中球などの免疫細胞が、ウイルスの侵入を最初に阻止しようとします。
獲得免疫は、過去に感染したことのある病原体を記憶し、再び侵入してきたときに素早く効率的に対応するシステムです。B細胞が作る抗体やT細胞の働きによって、特異的にウイルスを排除します。
インフルエンザウイルスに感染すると、まず自然免疫が働き、次に獲得免疫が活性化されて、ウイルスを排除しようとします。しかし、免疫機能が低下していると、この防御システムがうまく働かず、ウイルスの増殖を許してしまい、発症に至ります。
加齢による免疫機能の変化
年齢を重ねると、免疫システムの働きが徐々に低下していきます。これは「免疫老化」と呼ばれる現象で、自然免疫と獲得免疫の両方に影響を及ぼします。
高齢者では、免疫細胞の数が減少し、その機能も低下します。特にT細胞の多様性が失われ、新しい病原体に対する反応が鈍くなります。また、ワクチンを接種しても、若い人に比べて抗体の産生が少なく、免疫記憶の形成も弱くなります。
さらに、高齢者では慢性的な炎症状態が続く「炎症老化」という現象も起こります。これにより、免疫システムのバランスが崩れ、感染症への抵抗力が低下します。
基礎疾患が及ぼす影響
慢性疾患を持つ人では、病気そのものや治療薬の影響により、免疫機能が低下することがあります。
糖尿病では、高血糖状態が続くと、免疫細胞の機能が障害されます。白血球の遊走能や貪食能が低下し、ウイルスや細菌を排除する能力が弱まります。また、血管の障害により、免疫細胞が感染部位に到達しにくくなることもあります。
慢性腎臓病や透析患者では、尿毒症物質の蓄積や栄養状態の悪化により、免疫機能が低下します。また、透析による反復的なストレスも、免疫システムに悪影響を及ぼします。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患では、気道の粘膜バリア機能が低下し、ウイルスが侵入しやすくなります。また、慢性的な炎症により、正常な免疫反応が妨げられることもあります。
ストレスと免疫機能
心理的ストレスは、免疫システムに大きな影響を与えます。ストレスを受けると、視床下部-下垂体-副腎系(HPA軸)が活性化され、コルチゾールなどのストレスホルモンが分泌されます。
短期的なストレスは、免疫機能を一時的に高めることもありますが、慢性的なストレスが続くと、免疫細胞の機能が抑制され、感染症への抵抗力が低下します。特に、リンパ球の数が減少し、ナチュラルキラー(NK)細胞の活性が低下することが知られています。
また、ストレスにより睡眠の質が低下したり、食生活が乱れたりすることも、免疫機能の低下につながります。仕事や家庭でのストレスが多い人は、インフルエンザにかかりやすく、治りも遅い傾向があります。
栄養状態と免疫機能
栄養状態は、免疫システムの機能を維持するために非常に重要です。特定の栄養素が不足すると、免疫細胞の働きが低下し、感染症にかかりやすくなります。
ビタミンDは、免疫細胞の分化や機能に重要な役割を果たしており、不足すると感染症のリスクが高まります。日照時間が短い冬季には、ビタミンD不足になりやすく、これがインフルエンザの流行と関連している可能性も指摘されています。
ビタミンCは、白血球の機能を高め、抗酸化作用により免疫システムをサポートします。また、亜鉛は免疫細胞の発育と機能に必須のミネラルで、不足すると免疫力が低下します。
タンパク質の不足も、免疫機能に悪影響を及ぼします。抗体や免疫細胞の材料となるタンパク質が不足すると、適切な免疫反応が起こりにくくなります。
インフルエンザにかかりやすい人の予防対策
自分がインフルエンザにかかりやすいタイプに該当する場合、より積極的な予防対策が必要です。ここでは、効果的な予防方法について詳しく解説します。
ワクチン接種の重要性
インフルエンザワクチンの接種は、最も効果的な予防法の一つです。ワクチンを接種することで、インフルエンザに対する免疫を事前に獲得し、感染のリスクを減らすことができます。また、万が一感染しても、重症化を防ぐ効果が期待できます。
日本では、毎年10月から12月にかけてインフルエンザワクチンの接種が推奨されています。ワクチン接種後、効果が現れるまでに約2週間かかるため、流行期に入る前の早めの接種が望ましいとされています。
特に以下の人は、積極的にワクチン接種を受けることが推奨されています。
65歳以上の高齢者は、定期接種の対象となっており、自治体から接種費用の助成が受けられます。高齢者はインフルエンザによる重症化や死亡のリスクが高いため、毎年の接種が重要です。
60歳から64歳で、心臓、腎臓、呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限される人や、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な人も、定期接種の対象となります。
妊婦さんは、妊娠週数にかかわらず、インフルエンザワクチンの接種が推奨されています。妊娠中のワクチン接種は、母体だけでなく、胎児や生後間もない赤ちゃんを守る効果もあります。
生後6か月から小学校入学前の乳幼児も、重症化のリスクが高いため、ワクチン接種が推奨されています。13歳未満の子どもは、2回接種が基本となります。
慢性疾患を持つ人、特に喘息、糖尿病、慢性心疾患、慢性肺疾患、腎機能障害などがある人は、年齢にかかわらずワクチン接種が強く推奨されています。
医療従事者や高齢者施設の職員など、ハイリスクの人と接する機会が多い人も、自分自身の感染予防だけでなく、患者や利用者への感染を防ぐために、ワクチン接種が推奨されています。
インフルエンザワクチンの効果は、年齢や健康状態、その年の流行株とワクチン株の一致度などによって変わりますが、一般的に発病を約50から60パーセント減少させる効果があるとされています。また、高齢者の場合、発病を約34から55パーセント、死亡を約82パーセント減少させる効果があると報告されています。
日常生活での基本的な予防対策
ワクチン接種に加えて、日常生活での基本的な感染予防対策も重要です。
手洗いとうがいは、最も基本的で効果的な予防法です。外出から帰ったとき、食事の前、トイレの後などには、必ず石けんを使って丁寧に手を洗いましょう。手洗いは、指先、指の間、手首まで含めて、少なくとも20秒以上かけて行うことが推奨されています。うがいも、喉についたウイルスを洗い流す効果があります。
マスクの着用も、インフルエンザの予防に有効です。特に人混みや公共交通機関を利用する際には、マスクを着用することで、飛沫感染のリスクを減らすことができます。また、自分が咳やくしゃみをするときにも、マスクを着用するか、ティッシュやハンカチで口と鼻を覆うことで、他人への感染を防ぐことができます。
室内の湿度管理も重要です。インフルエンザウイルスは、乾燥した環境で活発になり、湿度が高いと活動が弱まります。室内の湿度を50から60パーセント程度に保つことで、ウイルスの活動を抑え、また喉や鼻の粘膜を保護することができます。加湿器を使用したり、濡れタオルを室内に干したりするなどの工夫が有効です。
十分な換気も大切です。密閉された空間では、ウイルスの濃度が高まり、感染リスクが増加します。定期的に窓を開けて空気を入れ替えることで、室内のウイルス濃度を下げることができます。
人混みをできるだけ避けることも、感染リスクを減らす効果的な方法です。特にインフルエンザの流行期には、不要不急の外出を控え、やむを得ず人混みに行く場合は、マスクを着用し、帰宅後は手洗いとうがいを徹底しましょう。
免疫力を高める生活習慣
免疫力を高めることは、インフルエンザの予防において非常に重要です。日常生活の中で、以下のような点に気をつけましょう。
十分な睡眠を確保することは、免疫機能を維持するために不可欠です。成人では1日7から8時間の睡眠が推奨されています。睡眠中には、免疫細胞が活発に働き、体の修復が行われます。睡眠不足が続くと、免疫機能が低下し、感染症にかかりやすくなります。規則正しい生活リズムを保ち、質の良い睡眠を心がけましょう。
バランスの取れた食事も、免疫力を維持するために重要です。タンパク質、ビタミン、ミネラルなど、必要な栄養素をバランスよく摂取しましょう。特に、ビタミンA、C、D、E、亜鉛、セレンなどは、免疫機能のサポートに重要な栄養素です。
ビタミンDは、魚類、卵、きのこ類などに含まれています。また、日光を浴びることで、体内でも合成されます。ビタミンCは、果物や野菜に豊富に含まれており、免疫細胞の機能を高める効果があります。
発酵食品も、免疫力を高めるのに役立ちます。納豆、味噌、ヨーグルトなどの発酵食品には、腸内環境を整える善玉菌が含まれており、免疫システムの約70パーセントが集中している腸の健康を保つことで、全身の免疫力向上につながります。
適度な運動も、免疫力を高める効果があります。ウォーキング、ジョギング、水泳などの有酸素運動は、血液循環を促進し、免疫細胞の働きを活性化させます。ただし、過度な運動は逆に免疫力を低下させることがあるため、自分の体力に合わせた適度な運動を心がけることが大切です。
ストレスの管理も、免疫力を維持するために重要です。慢性的なストレスは免疫機能を低下させるため、リラックスする時間を持つことが大切です。趣味を楽しむ、瞑想やヨガを行う、家族や友人と過ごすなど、自分に合ったストレス解消法を見つけましょう。
喫煙は免疫力を低下させるため、禁煙することが推奨されます。また、過度の飲酒も免疫機能に悪影響を及ぼすため、適量を守ることが大切です。
基礎疾患がある人の特別な注意点
慢性疾患を持つ人は、通常の予防対策に加えて、以下のような点に特に注意が必要です。
まず、基礎疾患の治療をしっかりと継続し、病状を安定させることが重要です。血糖値や血圧のコントロールが不良な状態では、免疫力が低下し、インフルエンザにかかりやすくなります。定期的に医療機関を受診し、医師の指示に従って治療を続けましょう。
インフルエンザワクチンの接種は、基礎疾患がある人にとって特に重要です。かかりつけ医に相談し、適切な時期に接種を受けましょう。免疫抑制剤を使用している人や、化学療法を受けている人も、医師と相談の上、可能な限りワクチン接種を受けることが推奨されています。
体調の変化に敏感になり、発熱や咳などの症状が現れたら、早めに医療機関を受診することが大切です。基礎疾患がある人は、インフルエンザが重症化しやすいため、早期診断・早期治療が特に重要です。
家族や同居者にも、手洗いやマスク着用などの感染予防対策を徹底してもらいましょう。また、家族がインフルエンザにかかった場合は、できるだけ接触を避け、別の部屋で過ごすなどの対策が必要です。
妊娠中の女性の予防対策
妊娠中の女性は、前述のとおり免疫機能が調整されるため、インフルエンザにかかりやすく、重症化しやすい状態にあります。そのため、以下のような予防対策が重要です。
インフルエンザワクチンの接種は、妊娠週数にかかわらず推奨されています。ワクチンによる胎児への悪影響は報告されておらず、むしろ母体と胎児の両方を守る効果があります。不活化ワクチンは妊娠中でも安全に接種できますので、産科医に相談の上、接種を受けましょう。
手洗いとうがいを徹底し、人混みをできるだけ避けることも大切です。特に妊娠中期から後期にかけては、重症化のリスクが高まるため、より慎重な予防対策が必要です。
十分な休息と栄養バランスの取れた食事を心がけ、体調管理に努めましょう。妊娠中は疲れやすいため、無理をせず、こまめに休息を取ることが大切です。
発熱や咳などの症状が現れたら、すぐに産科医または内科医に相談しましょう。妊娠中でも使用できる抗インフルエンザ薬があるため、早期に治療を開始することで、重症化を防ぐことができます。
高齢者の予防対策
高齢者は、加齢による免疫機能の低下により、インフルエンザにかかりやすく、重症化しやすいため、特に注意が必要です。
インフルエンザワクチンの接種は、高齢者にとって最も重要な予防法です。65歳以上の高齢者は定期接種の対象となっており、自治体から接種費用の助成を受けることができます。毎年忘れずに接種を受けましょう。
基本的な感染予防対策に加えて、以下のような点にも注意が必要です。
栄養状態を良好に保つことが重要です。高齢者は食欲が低下しやすく、栄養不足になりがちです。タンパク質やビタミン、ミネラルを含むバランスの取れた食事を心がけ、必要に応じて栄養補助食品を利用することも検討しましょう。
適度な運動を続けることで、免疫力を維持することができます。散歩や体操など、自分の体力に合わせた無理のない運動を日常的に行いましょう。
社会的な交流を保つことも、心身の健康維持に役立ちます。ただし、インフルエンザの流行期には、人混みを避け、体調不良の人との接触を控えるなどの注意が必要です。
口腔ケアも、感染予防に重要です。口の中を清潔に保つことで、呼吸器感染症のリスクを減らすことができます。毎日の歯磨きに加えて、定期的に歯科検診を受けましょう。
小児の予防対策
乳幼児や学童は、免疫システムが発達段階にあり、また集団生活の場での感染機会が多いため、特別な注意が必要です。
生後6か月以上の子どもには、インフルエンザワクチンの接種が推奨されています。13歳未満の子どもは、2回接種が基本となります。1回目の接種から2から4週間後に2回目を接種することで、より高い効果が期待できます。
手洗いの習慣を身につけさせることが大切です。子どもにとって正しい手洗いの方法を覚えるのは簡単ではないため、保護者が一緒に手洗いをして、楽しみながら習慣づけることが効果的です。
幼稚園や保育園、学校で感染症が流行している場合は、可能であれば休ませることも検討しましょう。無理して登園・登校させることで、感染のリスクが高まるだけでなく、他の子どもへの感染源となる可能性もあります。
子どもの体調の変化に注意を払い、発熱や咳などの症状が現れたら、早めに小児科を受診しましょう。子どもは症状が急激に悪化することがあるため、注意深い観察が必要です。
家庭内での感染予防も重要です。家族がインフルエンザにかかった場合は、できるだけ子どもとの接触を避け、同じ食器を使わない、タオルを共用しないなどの対策が必要です。
インフルエンザにかかってしまったら
どんなに予防対策を講じても、インフルエンザにかかってしまうことはあります。その場合は、以下のような対処が重要です。
早期受診の重要性
インフルエンザが疑われる症状(38度以上の発熱、全身倦怠感、筋肉痛、関節痛など)が現れたら、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。インフルエンザは、発症後48時間以内に抗インフルエンザ薬を使用することで、症状の軽減や回復の早期化が期待できます。
特に、高齢者、乳幼児、妊婦、基礎疾患を持つ人などのハイリスク群に該当する場合は、重症化を防ぐために、より早い段階での受診が重要です。
受診する際は、事前に医療機関に電話で連絡し、インフルエンザの可能性があることを伝えましょう。多くの医療機関では、感染拡大を防ぐために、別室での待機や時間を分けての診療などの対応を取っています。
自宅での療養と注意点
医師の診断を受け、必要な治療を受けたら、自宅で十分に休養することが大切です。
水分補給を十分に行いましょう。発熱により体内の水分が失われやすいため、こまめに水分を取ることが重要です。スポーツドリンクや経口補水液など、電解質を含む飲み物が効果的です。
栄養バランスの取れた消化の良い食事を心がけましょう。食欲がない場合は、無理に食べる必要はありませんが、おかゆやうどん、スープなど、食べやすいものを少量ずつ摂取するようにしましょう。
十分な睡眠と休息を取り、体力の回復に努めましょう。無理をして活動すると、回復が遅れるだけでなく、合併症のリスクも高まります。
他の人への感染を防ぐため、可能な限り別の部屋で過ごし、家族との接触を最小限にしましょう。やむを得ず同じ部屋で過ごす場合は、マスクを着用し、こまめに換気を行いましょう。
発症後5日間、かつ解熱後2日間(幼児の場合は3日間)は、他人への感染力が強いとされています。この期間は外出を控え、自宅で療養しましょう。学校や職場への復帰については、医師の指示に従ってください。
合併症の兆候に注意
インフルエンザの合併症として、肺炎、気管支炎、中耳炎、脳炎・脳症などがあります。以下のような症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診してください。
呼吸が苦しい、呼吸が速い、息切れがするなどの呼吸器症状が悪化した場合。胸の痛みがある、痰に血が混じるなどの症状も要注意です。
意識がもうろうとする、けいれんが起こる、異常な言動が見られるなど、神経系の症状が現れた場合。特に子どもの場合は、急性脳症の可能性があるため、緊急の対応が必要です。
水分が取れない、尿が出ない、ぐったりしているなど、脱水症状がひどい場合。
一度解熱した後、再び高熱が出た場合。二次感染の可能性があります。

まとめ:自分のタイプを知って適切な予防を
インフルエンザにかかりやすいタイプの人には、いくつかの共通した特徴があります。年齢(特に乳幼児と高齢者)、基礎疾患の有無、免疫機能の状態、妊娠の有無、生活習慣、職業や生活環境など、さまざまな要因が関わっています。
自分や家族がどのタイプに当てはまるかを知ることで、より効果的な予防対策を立てることができます。特にハイリスク群に該当する人は、インフルエンザワクチンの接種を積極的に受け、日常生活での感染予防対策を徹底することが重要です。
インフルエンザワクチンの接種、手洗いとうがいの徹底、適切なマスクの着用、室内の湿度管理、十分な睡眠と栄養バランスの取れた食事、適度な運動、ストレスの管理など、できることから始めていきましょう。
また、万が一インフルエンザにかかってしまった場合は、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けることで、重症化を防ぐことができます。他の人への感染を防ぐため、発症後は自宅で十分に休養し、回復に努めましょう。
インフルエンザは、適切な予防と早期対応により、そのリスクを大きく減らすことができる感染症です。毎年流行する季節を迎える前に、自分と家族の健康を守るための準備を整えておきましょう。
参考文献
本記事の作成にあたり、以下の信頼できる情報源を参考にいたしました。
- 厚生労働省:インフルエンザ(季節性インフルエンザ)
- 国立感染症研究所:インフルエンザとは
- 日本感染症学会:インフルエンザ診療ガイド
- 日本呼吸器学会:インフルエンザの診断と治療
- 日本小児科学会:インフルエンザの予防接種について
- 日本老年医学会:高齢者のインフルエンザ予防と対策
- 日本産科婦人科学会:妊婦のインフルエンザ予防接種
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務