子供のインフルエンザと発熱|症状の特徴から適切な対処法まで徹底解説

はじめに

インフルエンザは毎年冬季を中心に流行する感染症で、特に子供は感染しやすく、急激な発熱をはじめとする症状が現れやすいという特徴があります。子供が突然高熱を出すと、保護者の方は「これはインフルエンザなのか」「どう対処すればよいのか」と不安を感じることも多いでしょう。

この記事では、子供のインフルエンザにおける発熱の特徴、症状の経過、適切な対処法、受診のタイミング、そして予防方法まで、保護者の方が知っておくべき情報を詳しく解説します。

インフルエンザとは

インフルエンザの基礎知識

インフルエンザは、インフルエンザウイルスによって引き起こされる急性の呼吸器感染症です。普通の風邪とは異なり、全身症状が強く現れるのが特徴で、特に発熱は急激で高熱となることが多いです。

インフルエンザウイルスにはA型、B型、C型の3つの型があり、季節性インフルエンザとして流行するのは主にA型とB型です。A型インフルエンザは症状が重く、世界的な大流行を引き起こすこともあります。B型インフルエンザはA型ほど症状は強くありませんが、毎年流行を繰り返します。

流行の時期と感染経路

日本におけるインフルエンザの流行は、例年12月から3月頃にピークを迎えます。厚生労働省の統計によると、全国の医療機関から報告されるインフルエンザの患者数は、この時期に大きく増加する傾向にあります。

インフルエンザの主な感染経路は、飛沫感染と接触感染です。感染者の咳やくしゃみによって飛び散ったウイルスを含む飛沫を吸い込むことで感染します。また、ウイルスが付着した物の表面を触った手で、口や鼻、目などを触ることでも感染が成立します。

インフルエンザウイルスの潜伏期間は1日から3日程度で、比較的短いのが特徴です。そのため、感染してから症状が現れるまでの期間が短く、急激に発症することが多くなります。

子供のインフルエンザの特徴

なぜ子供は感染しやすいのか

子供がインフルエンザに感染しやすい理由はいくつかあります。まず、免疫システムがまだ発達途上にあるため、ウイルスに対する抵抗力が大人と比べて弱い傾向にあります。特に乳幼児では、過去にインフルエンザに感染した経験が少ないため、ウイルスに対する免疫を持っていないことが多いのです。

また、保育園や幼稚園、学校など集団生活の場では、子供同士の接触が多く、感染が広がりやすい環境にあります。子供は手洗いやマスクの着用などの感染予防行動が十分にできないこともあり、これらの要因が重なって感染リスクが高くなります。

子供特有の症状と重症化リスク

子供のインフルエンザは、大人と比べていくつかの特徴的な点があります。発熱が40度以上の高熱となることも珍しくなく、熱性けいれんを起こしやすい年齢の子供では特に注意が必要です。

国立感染症研究所の報告によると、5歳未満の子供、特に2歳未満の乳幼児では、インフルエンザによる入院リスクが高いことが示されています。これは、小さな子供ほど免疫機能が未熟であることや、脱水症状を起こしやすいことなどが理由として挙げられます。

また、子供では気管支炎や肺炎などの呼吸器系の合併症を起こしやすく、中耳炎を併発することもあります。さらに、まれではありますが、インフルエンザ脳症という重篤な合併症を起こすリスクもあります。

年齢別にみる症状の違い

インフルエンザの症状は、子供の年齢によっても異なる特徴があります。

乳児では、発熱とともに哺乳力の低下や不機嫌、ぐったりとした様子などが見られます。言葉で症状を訴えることができないため、普段と違う様子に気づくことが重要です。呼吸が速い、顔色が悪い、水分がとれないなどの症状がある場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。

幼児期から学童期の子供では、突然の高熱、悪寒、全身倦怠感、頭痛、筋肉痛などの全身症状が主体となります。咳や鼻水などの呼吸器症状も伴いますが、風邪と比べて全身症状が強いのが特徴です。

思春期の子供では、症状は大人のインフルエンザに近くなりますが、学校での集団生活により感染リスクは依然として高い状態が続きます。

子供のインフルエンザにおける発熱の特徴

発熱のパターンと経過

インフルエンザによる発熱の最大の特徴は、その急激さと高さにあります。朝は元気だった子供が、昼過ぎには38度を超える熱を出し、夕方には39度から40度の高熱となることも珍しくありません。

典型的な経過としては、感染後1日から3日の潜伏期間を経て、突然の悪寒とともに急激に体温が上昇します。発熱は通常3日から5日程度続き、その後徐々に解熱していきます。ただし、個人差があり、すべての子供がこのパターンに当てはまるわけではありません。

発熱のパターンには、高熱が持続するタイプと、一度解熱した後に再び発熱する二峰性の発熱パターンがあります。二峰性の発熱は、特にB型インフルエンザで見られることがあり、一度熱が下がったからといって油断できないことを意味しています。

熱の高さと重症度の関係

保護者の方からよく「熱が高いほど重症なのでしょうか」という質問を受けますが、必ずしも熱の高さと重症度が比例するわけではありません。40度の高熱でも元気に遊んでいる子供もいれば、38度台の熱でもぐったりしている子供もいます。

重要なのは、熱の高さよりも全身状態です。熱があっても水分がとれている、多少でも食事ができる、時折笑顔を見せるなどの様子があれば、それほど心配する必要はないことが多いです。

一方で、熱の高さに関わらず、ぐったりして反応が鈍い、顔色が悪い、呼吸が苦しそう、水分がまったく取れないなどの症状がある場合は、すぐに医療機関を受診すべきサインです。

発熱に伴う随伴症状

インフルエンザによる発熱には、さまざまな随伴症状が伴います。

悪寒と震えは、体温が上昇する過程でよく見られる症状です。体が熱を産生しようとするため、寒気を感じて震えることがあります。この時期には、適度な保温が必要です。

頭痛や筋肉痛、関節痛などの痛みの症状も特徴的です。特に学童期以上の子供では、「体が痛い」「頭が痛い」と訴えることが多くなります。

発汗も重要な症状の一つです。体温が上昇しきった後、下降する過程で大量の汗をかくことがあります。この時期には、こまめな着替えと水分補給が大切になります。

消化器症状として、吐き気や嘔吐、下痢を伴うこともあります。特に幼児では、高熱とともに嘔吐することがあり、脱水症状に注意が必要です。

発熱時の適切な対処法

家庭でできる基本的なケア

子供がインフルエンザで発熱した際の家庭でのケアは、症状を和らげ、回復を促すために重要です。

まず、安静と休養を十分にとることが基本となります。発熱時は体力を消耗するため、無理に活動させず、ゆっくり休ませることが大切です。寝室は静かで適温に保ち、快適な環境を整えましょう。

室温は20度から22度程度、湿度は50%から60%程度が適切とされています。インフルエンザウイルスは乾燥した環境で活発になるため、加湿器を使用するなどして適切な湿度を保つことが推奨されます。

水分補給の重要性と方法

発熱時の水分補給は、脱水症状を防ぐために非常に重要です。高熱による発汗、呼吸数の増加、食欲不振などにより、体内の水分が失われやすくなります。

日本小児科学会の推奨では、発熱時には通常よりも多めの水分摂取が必要とされています。特に乳幼児では、体重に占める水分の割合が高く、脱水症状を起こしやすいため注意が必要です。

水分補給には、水やお茶だけでなく、経口補水液を利用するのも効果的です。経口補水液には、水分とともに電解質も含まれており、脱水の予防と改善に役立ちます。市販の経口補水液を常備しておくと安心です。

ただし、一度に大量の水分を与えると吐き気を誘発することがあるため、少量ずつこまめに飲ませることがポイントです。吐き気がある場合は、小さじ1杯程度から始めて、5分から10分おきに与えるとよいでしょう。

解熱剤の使用について

解熱剤の使用については、慎重な判断が必要です。発熱自体は、体がウイルスと戦っている証であり、免疫反応の一部でもあります。そのため、熱があるからといって必ずしも解熱剤を使用する必要はありません。

解熱剤の使用を検討する目安としては、38.5度以上の発熱があり、かつ子供が非常に辛そうにしている、眠れない、水分がとれないなどの症状がある場合です。熱があっても比較的元気で、水分がとれている場合は、無理に解熱させる必要はありません。

子供に使用できる解熱剤は限られており、アセトアミノフェン製剤が第一選択となります。アセトアミノフェンは比較的安全性が高く、乳児から使用できます。

一方、アスピリンやその他の非ステロイド性抗炎症薬の一部は、インフルエンザの子供に使用すると、まれにライ症候群という重篤な合併症を引き起こす可能性があるため、使用すべきではありません。解熱剤を使用する際は、必ず医師の指示に従うか、薬剤師に相談してください。

衣服や寝具の調整

発熱時の衣服や寝具の調整も、快適性と回復に影響します。

体温が上昇している時期、悪寒がある時期には、適度な保温が必要です。薄手の服を重ね着させ、調整しやすくするとよいでしょう。ただし、過度な厚着は熱がこもる原因となるため注意が必要です。

体温が上がりきった後、下降期に入ると大量の汗をかくことがあります。この時期には、こまめな着替えが重要です。汗で濡れた衣服をそのままにしておくと、体が冷えて不快感が増すだけでなく、体力の消耗にもつながります。

布団についても同様で、暑がっている時には掛け布団を軽くし、寒がっている時には適度に保温するなど、子供の様子を見ながら調整しましょう。

食事と栄養の工夫

発熱時は食欲が低下することが多いですが、無理に食べさせる必要はありません。水分補給が最優先で、食欲がない場合は無理をせず、食べられるものを少量ずつ与えましょう。

消化に良い食べ物としては、おかゆ、うどん、バナナ、ヨーグルト、ゼリーなどが適しています。温かいスープも、水分と栄養を同時に摂取できるため推奨されます。

柑橘類などのビタミンCを含む果物は、免疫力をサポートする可能性がありますが、吐き気がある時には避けた方が無難です。

回復期に入って食欲が戻ってきたら、徐々に普通の食事に戻していきます。ただし、消化器に負担をかけないよう、脂っこいものや刺激の強いものは避けた方がよいでしょう。

医療機関を受診すべきタイミング

すぐに受診すべき症状

以下のような症状が見られた場合は、時間外であっても速やかに医療機関を受診するか、救急車を呼ぶことを検討してください。

意識レベルの低下は最も注意すべき症状です。呼びかけに反応が鈍い、うとうとして目を覚まさない、けいれんを起こしている、意味不明なことを言うなどの症状は、インフルエンザ脳症などの重篤な合併症の可能性があります。

呼吸困難も緊急性の高い症状です。呼吸が速い、胸が大きく上下する、鼻翼が広がる、陥没呼吸が見られる、唇や爪が青紫色になるなどの症状がある場合は、すぐに受診が必要です。

脱水症状も深刻な状態につながります。半日以上おしっこが出ない、涙が出ない、口の中が乾燥している、皮膚の張りがない、ぐったりしているなどの症状は、脱水が進行しているサインです。

顔色不良や皮膚の冷たさ、冷や汗なども、循環状態の悪化を示す重要なサインです。

けいれんが5分以上続く場合、けいれん後に意識が戻らない場合、短時間に何度もけいれんを繰り返す場合も、すぐに医療機関を受診してください。

診療時間内に受診を検討すべき症状

以下のような症状がある場合は、診療時間内に医療機関を受診することを検討しましょう。

生後3か月未満の乳児の発熱は、それだけで受診の対象となります。小さな赤ちゃんは重症化しやすく、また症状の判断が難しいため、早めの受診が推奨されます。

38度以上の発熱が3日以上続く場合も、受診の目安となります。インフルエンザの発熱は通常3日から5日程度で解熱に向かいますが、それ以上続く場合は合併症の可能性も考慮する必要があります。

水分がほとんど取れない、嘔吐を繰り返す、下痢が続くなどの症状も、脱水のリスクがあるため受診が必要です。

耳の痛みを訴える、耳だれが出るなどの症状は、中耳炎の併発を示唆します。中耳炎は子供のインフルエンザでよく見られる合併症の一つです。

咳がひどく夜も眠れない、黄色や緑色の痰が出る、胸の痛みを訴えるなどの症状は、気管支炎や肺炎の可能性があります。

受診のタイミングと検査

インフルエンザの診断には、迅速診断キットが使用されることが多いですが、発症から12時間以内では偽陰性となることがあります。これは、ウイルス量がまだ検出できるレベルに達していないためです。

そのため、発熱してすぐに受診しても陰性となり、翌日再検査で陽性となるケースもあります。ただし、症状が強い場合や、集団発生がある場合には、検査結果を待たずに臨床診断でインフルエンザと診断し、治療を開始することもあります。

抗インフルエンザ薬の効果が最も期待できるのは、発症から48時間以内です。そのため、インフルエンザが疑われる症状がある場合は、早めの受診が推奨されます。

インフルエンザの治療

抗インフルエンザ薬について

抗インフルエンザ薬は、ウイルスの増殖を抑える薬で、発症後48時間以内に使用することで、症状の軽減と期間の短縮が期待できます。

現在使用されている主な抗インフルエンザ薬には、ノイラミニダーゼ阻害薬であるオセルタミビル(商品名:タミフル)、ザナミビル(商品名:リレンザ)、ラニナミビル(商品名:イナビル)、ペラミビル(商品名:ラピアクタ)があります。また、キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬であるバロキサビルマルボキシル(商品名:ゾフルーザ)も使用されています。

これらの薬剤にはそれぞれ特徴があり、年齢や症状、患者の状態に応じて使い分けられます。

オセルタミビルは内服薬で、1日2回、5日間服用します。生後2週間以上の乳児から使用可能で、幅広い年齢層に使用されています。

ザナミビルとラニナミビルは吸入薬で、呼吸器に直接作用します。ザナミビルは1日2回、5日間の吸入が必要ですが、ラニナミビルは1回の吸入で治療が完了するため、服薬コンプライアンスの向上が期待できます。ただし、吸入がうまくできない年齢の子供には使用が難しい場合があります。

ペラミビルは点滴静注薬で、1回の投与で効果が期待できます。内服や吸入が困難な場合に選択されます。

バロキサビルマルボキシルは、1回の内服で治療が完了する新しいタイプの薬です。作用機序が他の薬剤と異なるため、薬剤耐性ウイルスが発生しにくい可能性があります。

薬剤の選択と注意点

抗インフルエンザ薬の使用にあたっては、いくつかの注意点があります。

まず、これらの薬剤は症状を完全に消失させるわけではなく、症状の期間を1日から2日程度短縮する効果があるとされています。また、発症後48時間を過ぎてから使用した場合、効果が限定的となります。

副作用については、一般的に軽微なものが多いですが、吐き気、嘔吐、下痢などの消化器症状が見られることがあります。また、まれに異常行動が報告されており、特に10代の子供では注意が必要です。薬剤を使用した後は、少なくとも2日間は子供を一人にしないよう、保護者による監視が推奨されています。

薬剤耐性の問題も指摘されており、特に一部の抗インフルエンザ薬では耐性ウイルスの出現が報告されています。そのため、必要な場合にのみ使用するという適正使用が重要です。

対症療法の重要性

抗インフルエンザ薬の使用に加えて、または薬剤を使用しない場合でも、対症療法は非常に重要です。

解熱剤による熱のコントロール、十分な水分補給、安静と休養が基本となります。咳症状が強い場合は鎮咳薬、痰が多い場合は去痰薬など、症状に応じた薬剤が処方されることもあります。

多くの場合、適切な対症療法を行うことで、1週間程度で症状は改善に向かいます。

インフルエンザの予防

ワクチン接種の重要性

インフルエンザワクチンは、インフルエンザの予防において最も重要な対策の一つです。厚生労働省では、特に高齢者や小児、基礎疾患のある方へのワクチン接種を推奨しています。

インフルエンザワクチンの効果は、感染を完全に防ぐものではありませんが、発症のリスクを減少させ、重症化を予防する効果が期待できます。特に子供では、重症化や入院のリスクを大きく減少させることが示されています。

ワクチンの接種時期は、流行が始まる前の10月から12月頃が推奨されます。ワクチンの効果が現れるまでに約2週間かかるため、流行期に入る前に接種を完了することが望ましいです。

子供の場合、生後6か月から13歳未満では2回接種が推奨されています。1回目と2回目の接種は、2週間から4週間の間隔をあけて行います。13歳以上では1回接種となります。

ワクチンには副反応として、接種部位の痛みや腫れ、発熱などが見られることがありますが、多くは軽度で一時的なものです。重篤な副反応は非常にまれです。

日常生活での感染予防対策

ワクチン接種に加えて、日常生活での感染予防対策も重要です。

手洗いは最も基本的で効果的な予防法です。帰宅時、食事の前、トイレの後などには、石けんを使って丁寧に手を洗いましょう。手洗いの際は、手のひらだけでなく、手の甲、指の間、爪の周り、手首なども忘れずに洗うことが大切です。15秒から30秒程度かけて、しっかりと洗いましょう。

咳エチケットの実践も重要です。咳やくしゃみをする際は、ティッシュや腕の内側で口と鼻を覆い、使用したティッシュはすぐに捨てましょう。マスクの着用も、飛沫の拡散を防ぐ効果があります。

適度な湿度の維持も予防に役立ちます。室内の湿度を50%から60%程度に保つことで、ウイルスの活動を抑制し、のどや鼻の粘膜の乾燥を防ぐことができます。

十分な睡眠とバランスの取れた食事により、免疫力を維持することも大切です。特に流行期には、規則正しい生活習慣を心がけましょう。

人混みを避けることも感染リスクの低減につながります。特に流行期には、不要不急の外出を控え、やむを得ず人混みに出かける場合はマスクを着用するなどの対策を取りましょう。

家庭内感染の予防

家族の中に感染者が出た場合、家庭内での感染拡大を防ぐことも重要です。

可能であれば、感染者を別室に隔離し、看病する人を限定することが推奨されます。看病する人はマスクを着用し、こまめに手洗いをしましょう。

感染者が使用したティッシュなどは、ビニール袋に入れて密閉してから捨てることで、ウイルスの拡散を防ぐことができます。

タオルや食器などは、感染者専用のものを用意し、共用を避けましょう。洗濯物は通常通り洗濯して問題ありませんが、感染者のものは別に洗うとより安心です。

ドアノブやスイッチなど、よく触れる場所は、アルコールや次亜塩素酸ナトリウムを含む消毒液で定期的に拭き取ることが効果的です。

室内の換気も重要です。定期的に窓を開けて空気の入れ替えを行いましょう。

学校や保育園への登園・登校基準

出席停止期間について

インフルエンザは学校保健安全法で第二種感染症に指定されており、出席停止期間が定められています。

発症した後5日を経過し、かつ解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまでは、出席停止となります。ここでいう「発症した後5日」とは、発症日(症状が現れた日)を0日として数えます。同様に「解熱した後2日」とは、解熱した日を0日として数えます。

例えば、月曜日に発症し、水曜日に解熱した場合、発症後5日の条件を満たすのは土曜日、解熱後2日の条件を満たすのは金曜日となるため、土曜日以降であれば登校可能となります。

この基準は、感染力がある期間を考慮して設定されており、周囲への感染拡大を防ぐために重要です。

治癒証明書と登校許可証

多くの学校や保育園では、インフルエンザ罹患後の登校・登園に際して、医療機関が発行する治癒証明書や登校許可証の提出を求めることがあります。

ただし、日本小児科学会では、必ずしもすべての感染症について治癒証明書を要求する必要はないとしており、保護者の判断で登校・登園を決定できる場合もあります。

施設によって方針が異なるため、事前に確認しておくことをお勧めします。アイシークリニック上野院では、必要に応じて治癒証明書の発行も行っておりますので、ご相談ください。

兄弟姉妹の登校・登園について

家族内で感染者が出た場合、症状のない兄弟姉妹の登校・登園については、施設によって対応が異なります。

一般的には、本人に症状がなければ登校・登園可能とする施設が多いですが、流行状況や施設の方針により、一定期間の自宅待機を求められることもあります。

予防的にワクチン接種を受けている、家庭内で隔離対策を取っているなどの状況を伝えることで、判断の参考になることもあります。

インフルエンザ脳症について

インフルエンザ脳症とは

インフルエンザ脳症は、インフルエンザに伴って発症する重篤な合併症で、主に小児に見られます。発症頻度は比較的まれですが、後遺症を残したり、死亡に至ることもある深刻な病態です。

国立感染症研究所の調査によると、日本では年間100人から300人程度の報告があり、そのうち約10%から30%が死亡、約30%に後遺症が残るとされています。

インフルエンザ脳症の発症機序は完全には解明されていませんが、ウイルス感染に対する過剰な免疫反応(サイトカインストーム)が関与していると考えられています。

症状と早期発見のポイント

インフルエンザ脳症は、発熱から1日から2日以内の急性期に発症することが多いです。

特徴的な症状としては、以下のようなものがあります。

意識障害が最も重要な症状で、呼びかけに反応しない、ぼんやりしている、眠り続けるなどの状態が見られます。

けいれんも高頻度に見られる症状です。通常の熱性けいれんと異なり、15分以上続く、繰り返し起こる、けいれん後に意識が戻らないなどの特徴があります。

異常言動や異常行動も見られることがあります。意味不明なことを言う、幻覚を見る、急に怒り出す、人を認識できないなどの症状です。

これらの症状が見られた場合は、直ちに医療機関を受診するか、救急車を呼ぶことが必要です。

予防と注意点

インフルエンザ脳症の確実な予防法は確立されていませんが、インフルエンザワクチンの接種により、インフルエンザそのものの発症や重症化を予防することが、結果的に脳症のリスクを減少させると考えられています。

また、前述の通り、解熱剤の選択も重要です。アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬の一部は、ライ症候群という脳症に類似した病態を引き起こす可能性があるため、子供には使用すべきではありません。

異常行動については、抗インフルエンザ薬の使用との関連が指摘されていますが、薬剤を使用していない場合でも異常行動が見られることがあります。そのため、インフルエンザと診断された後は、少なくとも2日間は子供を一人にせず、異常がないか注意深く観察することが推奨されます。

よくある質問

Q1: 熱が下がったらすぐに登校・登園してもよいですか?

いいえ、熱が下がってもすぐに登校・登園することはできません。学校保健安全法により、「発症した後5日を経過し、かつ解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで」は出席停止期間となります。この基準を満たすまで自宅で療養してください。

Q2: インフルエンザと風邪の違いはどう見分けますか?

インフルエンザは、突然の高熱(38度以上)、強い全身症状(倦怠感、筋肉痛、関節痛、頭痛など)が特徴です。一方、風邪は比較的緩やかな発症で、鼻水、鼻詰まり、のどの痛みなどの局所症状が主体となります。ただし、症状だけでは判断が難しい場合もあるため、疑わしい場合は医療機関を受診し、検査を受けることをお勧めします。

Q3: 家族がインフルエンザにかかった場合、予防的に薬を飲むことはできますか?

はい、予防投薬という選択肢があります。家族内にインフルエンザ患者が発生した場合、感染リスクの高い家族(高齢者、乳幼児、基礎疾患のある方など)に対して、予防的に抗インフルエンザ薬を投与することがあります。ただし、これは保険適用外となることが多く、自費診療となります。また、薬剤の予防効果は100%ではありません。医師と相談して決定してください。

Q4: 授乳中ですが、母乳を通じて赤ちゃんにインフルエンザがうつりますか?

インフルエンザウイルスが母乳を通じて赤ちゃんに感染することはほとんどありません。むしろ、母乳には抗体が含まれており、赤ちゃんを感染から守る働きがあります。ただし、授乳中の密接な接触により、飛沫感染のリスクはあります。授乳の際はマスクを着用し、授乳前に手洗いをするなどの対策を取ることが推奨されます。

Q5: インフルエンザワクチンを接種してもインフルエンザにかかることがありますか?

はい、ワクチンを接種してもインフルエンザにかかることはあります。インフルエンザワクチンの有効率は、年齢や流行しているウイルス株との一致度により異なりますが、一般的に50%から60%程度とされています。ただし、ワクチンを接種することで、発症のリスクを減少させるだけでなく、万が一感染しても重症化を予防する効果が期待できます。特に子供では、入院や合併症のリスクを大きく減少させることが示されています。

Q6: 熱性けいれんを起こしたことがある子供の場合、特に注意すべきことはありますか?

熱性けいれんの既往がある子供は、インフルエンザによる高熱でけいれんを起こすリスクが高くなります。けいれんを起こした場合は、慌てずに以下の対応を取ってください。安全な場所に寝かせる、衣服をゆるめる、けいれんの時間を測る、嘔吐に備えて顔を横に向けるなどです。けいれんが5分以上続く場合や、けいれん後に意識が戻らない場合は、すぐに救急車を呼んでください。また、解熱剤の使用については、主治医と相談しておくとよいでしょう。

Q7: インフルエンザの検査は発熱後すぐに受けた方がよいですか?

インフルエンザの迅速診断キットは、発症後12時間から24時間程度経過してからの方が、検出感度が高くなります。発熱直後では、ウイルス量が少なく陰性となることがあります。ただし、症状が強い場合や、基礎疾患があり重症化のリスクが高い場合、集団発生がある場合などは、検査結果を待たずに治療を開始することもあります。受診のタイミングについては、お子様の状態に応じて判断してください。

Q8: 解熱後も咳が続いていますが、これは正常ですか?

インフルエンザの後、咳が1週間から2週間程度残ることは珍しくありません。これは、ウイルスにより傷ついた気道の粘膜が回復するまでに時間がかかるためです。ただし、咳が悪化する、黄色や緑色の痰が出る、再び発熱するなどの症状がある場合は、二次性の細菌感染(肺炎など)の可能性があるため、再度医療機関を受診してください。

Q9: インフルエンザにかかった後、どのくらいで保育園や学校に復帰できますか?

前述の通り、「発症した後5日を経過し、かつ解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで」が出席停止期間となります。最短でも発症から5日後、多くの場合は6日から7日後となります。ただし、咳などの症状が残っている場合は、マスクの着用など、周囲への配慮も必要です。

Q10: 家族で同時にインフルエンザにかかった場合、どう対応すればよいですか?

家族で同時に発症した場合は、重症度の高い方を優先してケアしてください。乳幼児や高齢者、基礎疾患のある方は重症化のリスクが高いため、特に注意が必要です。可能であれば、健康な家族や親戚、友人などに協力を依頼することも検討してください。食料や飲料、必要な医薬品などは、事前に備蓄しておくか、配達サービスを利用することも一つの方法です。家族全員が動けない状態になった場合は、医療機関や保健所に相談してください。

まとめ

子供のインフルエンザによる発熱は、保護者にとって大きな心配の種となります。しかし、正しい知識と適切な対処法を知っておくことで、落ち着いて対応することができます。

インフルエンザの特徴は、突然の高熱と強い全身症状です。発熱時には、水分補給と安静を基本とし、子供の全身状態を注意深く観察することが重要です。熱の高さだけでなく、意識レベル、呼吸状態、水分摂取量などを総合的に判断してください。

すぐに受診すべき症状としては、意識レベルの低下、呼吸困難、脱水症状、持続するけいれんなどがあります。これらの症状が見られた場合は、時間を問わず医療機関を受診してください。

治療については、抗インフルエンザ薬の使用と対症療法があります。薬剤の使用は発症後48時間以内が効果的ですが、必ずしもすべての症例で必要というわけではありません。医師の判断に従って適切な治療を受けてください。

予防においては、ワクチン接種が最も重要です。加えて、手洗い、咳エチケット、適度な湿度の維持などの日常的な感染対策も効果的です。

学校や保育園への復帰については、学校保健安全法で定められた基準を守ることが、周囲への感染拡大を防ぐために重要です。

子供の健康を守るためには、日頃からの予防対策と、症状が出た際の適切な対応が大切です。この記事が、保護者の皆様のお役に立てれば幸いです。

参考文献

  1. 厚生労働省「インフルエンザ(季節性)対策」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/index.html
  2. 厚生労働省「インフルエンザQ&A」https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html
  3. 国立感染症研究所「インフルエンザとは」https://www.niid.go.jp/niid/ja/flu-m/flu-iasrtpc/11044-502t.html
  4. 国立感染症研究所「インフルエンザ脳症について」https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/a/flu.html
  5. 日本小児科学会「インフルエンザの予防接種について」https://www.jpeds.or.jp/modules/general/index.php?content_id=13
  6. 日本小児科学会「学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説」https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20230907_schooldoc.pdf
  7. 厚生労働省「インフルエンザワクチンについて」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/infulenza_vaccine.html

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

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佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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